思想新聞 1999年6月15日号 主張
通信傍受法案を柱とする組織犯罪対策3法案が衆院を通過し現在、参院で審議されている。犯罪の国際化・組織化が進む中で、日本だけが「漁網の目が大きく抜け穴」になり、麻薬や集団密航の集中的な標的とされている現状を考慮すれば、組織犯罪対策法を今国会で早急に成立させねばならないだろう。
国際組織犯罪の対処が冷戦後の課題
東西冷戦が終焉して以来、平和を脅かす存在としてクローズアップされてきたのが、国家ではない国際的な組織グループによる凶悪犯罪である。
90年代に入って以来、サミット(主要国首脳会議)の中心議題の一つになってきたのが、組織犯罪対策である。過激グループによる国際テロやマフィア・暴力団による麻薬密売・経済犯罪、さらにインターネットをはじめとするハイテク犯罪などが急増し、国家を超えて組織犯罪にどう対処するかが大きな課題となったからである。
この対策は先進国だけのものではない。世界各国共通の課題であり、そこでオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こる前年の94年、国連総会は組織犯罪に対処する世界行動計画を採択。それに基づいて今年から「国際組織犯罪条約」の審議に入る。
また、サミット宣言に基づいて今月23日から東京で20八カ国が参加して金融活動作業部会(FATF)が開催されるが、その中心議題として国際組織犯罪の一つである不法な資金洗浄(マネーロンダリング)の規制策が話し合われる。
このようななかで、日本の組織犯罪対策はきわめてお粗末であるとして、国際会議で常に批判にさらされてきた。無差別テロを引き起こしたオウム真理教に対して破壊活動防止法すら適用せず、しかも国際的常識となっている通信傍受による犯罪捜査にも当たってこなかったからである。
こうした結果、「日本の組織犯罪対策の漁網の目が大きく、抜け穴になる。犯罪のボーダレス化が進む中で、サミット参加各国のうち日本だけが組織犯罪の温床になりかねない」(堀内文隆・警察庁刑事企画課長)との危惧は現実味を帯びているといえる。
麻薬犯罪では80年代に米国がコロンビアなど中南米諸国とタイアップして「生産地」の壊滅をはかる「麻薬戦争」を仕掛け掃討作戦を実施したが、功を奏さず、「消費地」対策が最も重要との認識が世界に広がっている。その最大の「消費地」として国際マフィアや暴力団から狙われているのが日本である。
事実、今年3月現在で押収された覚醒剤は688キロで、昨年1年間の549キロをすでに凌駕しており、日本が麻薬犯罪グループのターゲットになっていることを裏付けている。
犯罪捜査の通信傍受は世界的な常識
今回、参院で審議されている組織犯罪対策3法案は 3.通信傍受法案(組織的殺人、薬物、銃器、集団密航の4つに限って捜査の通信傍受を認める) 2.組織的犯罪処罰・犯罪収益規制法案(マネーロンダリングなどの処罰) 3.刑事訴訟法一部改正案(証人保護のため住所などの尋問制限)の3つである。
このうち論議を呼んでいるのは通信傍受法案であるが、いずれの主要国とも犯罪捜査に通信傍受を行うことを法制化しており、国民全般の「公共の福祉」を考えれば「憲法が保障する通信の秘密を侵害する」(民主・共産・社民3党の主張)との批判は当たらない。むろん、捜査当局の暴走は許されず、厳格な運用は当然のことである。とまれ早期制定が望まれる。


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