思想新聞2004年2月15日号【主張】
北朝鮮の核開発問題等を協議する六カ国協議が2月25日から北京で再開されることが決まった。昨年8月に開かれて以来、実に半年ぶりの開催である。北朝鮮が協議再開に応じたのは本気で事態打開に動くためか、それとも取りあえず孤立化を避ける時間稼ぎか、その真意は定かでない。
しかし、はっきりしていることは、この半年間に北朝鮮を取り巻く国際環境が大きく変化し、国際社会の対北圧力が一層強まったことである。
国際社会は北に核完全廃棄要求
第一には、昨年12月にイラクでフセイン元大統領が拘束され、イラク人による暫定政権樹立のめどが立ったことだ。これによって米国はイラク情勢にさほど拘束されることなく北朝鮮問題に臨めることになった。
第二には、ブッシュ米政権から「ならず者国家」と名指しされていたイランが昨年11月、ウラン濃縮の一時停止を表明、核施設への抜き打ち査察をも可能にする追加議定書の調印にも同意したことだ。この結果、核放棄をためらう「ならず者国家」は北朝鮮一国を残すのみとなった。
第三には、「テロ支援国」であったリビアが昨年12月、米英両国と大量破壊兵器計画の全面放棄と国連査察団の無条件、即時受け入れで合意。昨年暮れから国際原子力機関(IAEA)の査察が始まったことだ。
こうした大量破壊兵器を廃棄していこうとする国際環境の大きな変化が北朝鮮に対して強力な核放棄圧力となって作用していることは言うまでもない。
昨年8月の六カ国協議では 米国をはじめ周辺五カ国はそろって北朝鮮に核放棄を求めた。これに対して北朝鮮は「核保有」を最大の武器に使って米国に「不可侵条約」を結ばせて「安全の保証」を取り付けようと試みた。北朝鮮の主張は、米国が重油提供と食糧支援を拡大すれば核計画放棄を宣布する、米国が不可侵条約を締結し電力損出を補償すれば、核施設の査察を許容する、というものである。北朝鮮にとっては核放棄の口約束だけで米国から重油提供と食糧支援の実が受け取れるという虫のいい要求であった。当然、米国はこれを拒否した。
六カ国協議再開に当たって北朝鮮が自覚しておくべきは、核拡散防止条約(NPT)を一方的に脱退し核開発を行ってきたのは北朝鮮自身だったことだ。だから国際社会は「核カード」によるいかなる取り引きも許容していない。このことを北朝鮮ははっきりと知るべきだ。
北朝鮮は1月に米国のプリチャード前朝鮮半島和平担当大使ら訪朝団を招き、寧辺の核施設などを見学させて「プルトニウム」を見せる一方、「高濃縮ウラン計画は存在しない」と否定した。しかし、これは国際社会に対する錯乱工作としか言いようがない。北朝鮮は核開発のうち「プルトニウム」だけを協議に乗せて「廃棄」して見せ、「高濃縮ウラン」は巧妙に温存しようとしているのではないかと疑われるからだ。
言うまでもなく核にはプルトニウム型とウラン型があり、北朝鮮が八五年に加盟したNPTではいずれも禁止。91年12月の北朝鮮が韓国と合意した「朝鮮半島非核化共同宣言」はいかなる核も容認していない。
しかし93年春に北朝鮮はNPT(核拡散防止条約脱退)を表明して核危機を招来せしめ、これを収拾するために94年秋、米朝枠組み合意が成立した。同合意は南北非核宣言の履行を約束し、北朝鮮はプルトニウムを抽出できる寧辺の黒煙減速型原子炉を凍結、米日韓欧はKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)を設立し、軽水炉建設とその完成まで米国が重油を提供することになった。
ところが北朝鮮は02年10月にケリー米国務次官補が訪朝した際、「高濃縮ウラン計画」が進行していることを“告白”し同十二月にIAEAの査察員を追放、03年4月にNPTを脱退し再び核危機を作り出した。
こうした経緯を見れば、北朝鮮は「高濃縮ウラン計画」「プロトニウム計画」ともに廃棄すべきことは明白なことである。最近、パキスタンのカーン博士が北朝鮮にウラン濃縮技術を供与したことを明らかにしており、六カ国協議では北朝鮮はこの疑惑にも答えなくてはならない。国際社会は北朝鮮のいかなる核開発も許さないのだ。
検証が可能かつ不可逆性廃棄を
米国は北朝鮮に「検証可能かつ逆行不可能な完全な核放棄」を迫っている。日本もそれに歩調を合わせるべきだ。同時に、国会で成立した北朝鮮に対する経済制裁を可能にする外為法改正などを背景に、対北圧力を強化する必要がある。拉致家族の帰国問題でも真っ正面から要求し、断じて妥協してはなるまい。
そうした固い決意で六カ国協議再開に臨むべきである。


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