国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

米大統領選「ブッシュvsケリー」の展開に「家族・結婚観」が争点

思想新聞2004年2月15日号【ニューススコープ】

同性愛結婚の是非を問う

 米大統領選の予備選がスタートした。共和党はブッシュ現大統領の事実上の信認投票となっているが、本命不在と言われる民主党は激戦を繰り広げている。当初、有利に戦いを進めていたディーン前バーモンド州知事が失速し、代わってケリー上院議員が浮上、このまま勢いを維持すれば「ブッシュに勝てる候補」としてケリー氏が民主党大統領候補になる見通しが強まっている。むろん、予備選はまだ序盤で情勢がどう展開するか、予断を許さない。争点のひとつに「家族・結婚観」が上がっており、これも大統領選の行方を左右しそうだ。大統領予備選の序盤情勢を探ってみる。

 11月の米大統領選の焦点は、ブッシュ大統領に挑戦する民主党候補に誰がなるかということだ。民主党では当初、クラーク元NATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高司令官が高支持率を得ていたものの、昨年12月にはイラク戦争に真っ向うから反対するディーン前バーモンド州知事が優位に立った。しかし、フセイン拘束とディーン氏の「過度なリベラル色」が嫌われ、一月に入ると「ブッシュに勝てる候補」としてケリー上院議員が急速に台頭、2月3日の予備選・党員集会では7州のうち5州を制して本命に躍り出た。
 次の焦点は大票田のカリフォルニア州など十州で予備選・党員集会が行われる3月2日の「スーパーチューズデー」。ここでケリー氏が勝利すれば民主党候補に王手をかけることができる。

ケリー浮上は安保で安定感
 なぜケリー氏が民主党員の支持を集めているのか。それは「安保・外交政策に強い」と見られているからだ。ベトナム戦争の従軍経験(海軍)があり、メコン川で負傷兵を救出した英雄、そして約20年の上院議員歴もある。イラク戦争での武力行使容認決議も支持に回った現実思考が「ブッシュに勝てる候補」と目される理由だ。
 イラク政策でケリー氏は「国際社会の関与を拡大する」と穏健な主張を行っており、ディーン氏が「イラク再建は国連管轄下、駐留軍はNATO指揮下」と急激な政策転換を主張したのとは対称的である。少なくともケリー氏にはディーン氏のような過激リベラル色がなく、それが安定感につながっている。
 それだけにイラク戦争は争点になりにくいともいえる。ブッシュ大統領はイラクで大量破壊兵器が発見されず、独立調査委の設置を余儀なくされたが、ケリー氏はイラク戦争自体ではなく「不透明さ」を争点にしようとしている。だが、ブッシュ戦略に代わる対テロ戦略を打ち出しているわけではない。「戦争の透明さ」をめぐって調査委の結果次第では波乱もあるが、イラク戦争で民主党がブッシュ陣営を追いつめるとの見方は少ない。

マサチューセッツ判決が波紋広げる
 ここにきて争点に急浮上しそうなのが、家族・結婚観である。
 マサチューセッツ州の最高裁が昨年11月、「同性結を禁じるのは州憲法違反」との判決を下し、同性愛結婚をめぐって全米で論争が巻き起こっているからだ。同最高裁は2月に入って違憲判決の付帯意見を公表し、判決は同性愛結婚を男女間の結婚とまったく同様に「結婚」として認めているとした。このような“過激判決”は米国では初めてのことだ。
 これまで全米37州で同性愛結婚を法律で禁止している。唯一、バーモンド州だけは2000年に同性愛結婚を男女間結婚と同じ権限を保障する「シビル・ユニオン(市民契約)」法を制定して容認している。同制度は99年にフランスが採用したもので、同性のカップルに対して「正式な結婚」ではないが、税制や年金、遺産の相続などで男女間結婚と同じ措置をとるというもので、北欧諸国の一部も採用している。
 今回のマサチューセッツ州の判決はこれよりもさらに過激で同性愛結婚を男女間結婚とまったく同じ扱いにせよとしているのだ。同判決は180日以内に「適切な解決策」を取るように求めており、5月半ばまでに同性愛結婚が認められることになるという(朝日新聞2月5日付)。
 これには州議会が反発し、州憲法に「結婚は異性間に限る」と盛り込む改正案を成立しようと動いている。しかし、州憲法改正は連邦議会選挙と同時に住民投票にかけることになっているので11月まで結論は出ない。だから五月以降、同性愛結婚は「正式な結婚」として認められてしまうわけだ。
 同性愛結婚を認めさせようという動きはウーマンリブ、ジェンダーフリーなどを仕掛けてきた米国の文化共産主義者らが10年以上に渡って裁判闘争を通じて全米で展開してきたものだ。それだけに根が深い。
 これに対して保守層は危機感を強めている。ブッシュ大統領は伝統的な結婚観を否定し「家族破壊」を企む動きを制するために、連邦憲法の改正も視野に入れている。
 1月20日の一般教書演説でブッシュ大統領は、同性愛結婚を合法化しようという動きに対して「活動家判事らが、裁判所の命令によって結婚の再定義を始めた」と非難し、「強い米国は男女間の結婚という伝統的な価値を大切にすべきだ」と強調し、司法の独断が進むならば「結婚の神聖性を守る」ため、憲法修正によって同性愛者の結婚を禁じることも辞さない考えを表明した。
 米国では結婚を男女間に限るとする法律がすでに制定されている。結婚保護法(96年)がそれで、クリントン前大統領が署名し施行されている。同法は伝統的な男女間の結婚に対して連邦政府が与える権利を同性愛カップルには与えないように定め、さらにある州で合法的に同性愛結婚を認めても別の州で違法ならその別の州は同性愛結婚を認める義務はないとしている。これに加えて連邦憲法で同性愛結婚を禁止しようというのが憲法修正の狙いだ。
 結婚観が大統領選の争点に浮上するのは、結婚保護法が上院で通過した際、共和党だけでなく多くの民主党議員も賛成に回った中でケリー上院議員が反対し、ゲイやレスビアン団体から英雄視された経緯があるからだ。つまり、ケリー氏は安保・外交政策でリベラルでなくても、家族・結婚観では過激リベラル思想の持ち主とされている。
 同性愛結婚が大統領選がなくても全米で論争の的になっていただけに、ケリー氏の民主党候補浮上は火に油を注ぐ格好となった。とりわけケリー氏が弱いとされる南部は宗教右派が強く、ケリー氏が同性愛結婚を公然と認めれば反発が高まるのは必至。大統領選の行方を左右することになるだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました