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韓国大統領選の行方 W杯成功で混戦レースに拍車

思想新聞2002年7月1日号【ニューススコープ】

「第三の候補」が浮上、与党は分裂の危機

 ワールドカップ(W杯)でアジア初の四強になり「アジアの虎」旋風を巻き起こした韓国。4千万国民がこれほど一体化したこともなかったといわれるほどフィーバーし、韓国民の意識革命をもたらした。この自信と一体感が年末に行われる大統領選挙にどのような影響を与えるのか、注目されよう。W杯開催中の最中に大統領選の前哨戦とされた統一地方選挙が行われたが、結果は与党・新千年民主党(民主党)が惨敗し、野党ハンナラ党が圧勝した。ハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)候補が頭をひとつ抜け出した形となったが、ここにW杯成功で男をあげた韓国サッカー協会会長の鄭夢準(チョン・モンジュン)議員が割り込んでくるのは必至。先行きの見えない混戦レースが続きそうだ。

 昨年から今年初めまで圧倒的優位に立っていたのは、野党ハンナラ党の李会昌候補だった。ところが四月になると、民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補が一挙に巻き返した。

あっけなく終息した盧武鉉旋風

 これは全国16市・道で行われた民主党の大統領候補選出選挙で、党内にほとんど基盤を持たない盧氏が庶民的なキャラクターで“旋風”を巻き起こし、与党候補に上りつめる“異変”が起こしたからだ。盧氏の支持率は急速に高まり、4月15日の中央日報の調査では60.5%に達し、李氏の32.6%を圧倒した。
 ところが“旋風”はすぐに終わってしまった。盧氏の支持率は5月6日の韓国日報の調査では44.7%となり、36.7%に回復した李氏との差が8%にまで狭まってしまったのだ。これは金大中大統領の子息汚職が拡大して与党の支持率が低下したことに加え、民主化勢力を結集しようとする盧氏の左翼的とも見られる政界再編構想に国民が懐疑的となってきたからだ。
 そうした中で「歴史的大事件」となったW杯が開催され、その最中の6月13日に大統領選の前哨戦と位置づけられていた統一地方選挙が行われたのである。
 選挙戦では李会昌氏は「腐敗、無能政権に審判を下して、政権交代のスタートを切ろう」と訴え、5月に逮捕された金大中大統領の三男の口利き事件を徹底的に追及した。これに対し与党は現政権の実績を訴えたものの、選挙結果は野党ハンナラ党の圧勝に終わった。
 ハンナラ党は7大市長選ではソウル市、釜山市など6市で当選。与党民主党が獲得したのは金大中大統領のお膝元の光州市だけにとどまった。大統領選の天王山とされるソウル市では経済界出身の李明博氏が52.28%を獲得し、民主党の若手候補の43.02%を9%以上も上回り圧勝した。
 また9道知事選でもハンナラ党は首都圏の京畿道や慶尚南・北道など5道で当選を果たし、大都市と道の議会選で導入された比例区でもハンナラ党が圧勝し、民主党は大敗をきした。
 統一地方選の投票日のSBSテレビの世論調査では李氏が37.6%で、盧氏の35.6%を上回ってついに逆転、6月17日付の東亜日報の世論調査では李氏が41.4%だったのに対して盧氏は26.8%、中央日報は李氏の48.9%に対して盧氏は36.3%に低迷。“盧武鉉旋風”に完全に終止符を打った。
 この勢いをかってハンナラ党は8月8日の国会議員補欠選挙でも圧勝を目指している。同補選は全国の13選挙区で行われる「ミニ総選挙」で、これに勝って李氏の支持率を40%の大台に定着させる作戦をとっている。前回の大統領選では李氏は39%で惜敗しているだけに、補選で40%以上を獲得すれば年末の大統領選を決定的優位に展開できると読んでいるのだ。
 ハンナラ党にとって有利なのは、6月21日に金大中大統領の二男が三男に続いてあっせん収賄容疑で逮捕され、与党の汚職が一段と深まったことだ。清廉な政治家のイメージが強い李氏にとっては、現政権の腐敗は大統領周辺の汚職が任期末期に起こる“常套の事件”とはいえ、きわめて有利なのは間違いない。
 このように劣勢を余儀なくされた盧氏は補選の結果次第では大統領候補を選び直すことも受け入れると表明。民主党は6月18日に最高委員・常任顧問会議を開き、盧氏の「8・8再、補欠選後に候補選」案を受け入れたが、改めて盧武鉉候補の再信任を議決した。

W杯を追い風に鄭夢準氏が台頭

 しかし、反主流派は盧氏の候補即刻辞退を主張しており、今春の候補戦のしこりが一挙に噴出、親盧・反盧勢力間の衝突が再燃してきた。すでに一部議員らは第三の候補を中心とした新党の創設案を練っており、党分裂の危機に直面している。
 こうした与党混迷を受けて有力政治家の動きがにわかに忙しくなってきた。反盧武鉉・非李会昌を旗印に勢力拡大を狙う自由民主連合(自民連)の金鍾泌総裁、民主党の候補選で敗北し今後の活路を模索している李仁済議員、さらにハンナラ党を離党して新党「韓国未来連合」を創設した朴正煕元大統領の長女・朴槿恵(パク・クネ)議員らが活発に動き始めた。  
 今のところ李氏有利とはいっても韓国の世論は“盧旋風”が1カ月で消え去ったようにいつも浮気である。とりわけW杯フィーバーで国民意識が一変し、この影響が大統領選に反映するのは避けられそうにない。
 ここで台風の目となって浮上してきたのが、W杯成功の立役者である韓国サッカー協会会長の鄭夢準議員の去就である。鄭氏は現在50歳。「現代グループ」の総師で昨年3月に死去した鄭周永(チョン・ジュヨン)元名誉会長の六男で、現代グループのお膝元である蔚山市選挙区から国会議員(無所属)になっており、かねてからW杯に成功すれば大統領選に出馬するといわれてきた。
 そのW杯で韓国はアジア初のベスト4に輝く韓国旋風を巻き起こした。その結果、鄭氏の出馬は決定的となってきた。すでに政策補佐官を公募するなど、大統領選への動きを始めており、7月から本格的に参戦、「第三の候補」になるのは確実な情勢である。
 となると、ハンナラ党は李会昌氏で固まっているが、民主党の盧武鉉氏の立場は微妙になってくる。「第三の候補」論を掲げる金鍾泌氏とともに、李仁済議員と朴槿恵議員が反盧包囲網を築くために、さまざまな動きが予想されるからだ。
 いずれにしても今回の大統領選は、過去30年以上にわたって韓国政治を主導してきた金大中、金泳三、金鍾泌の三氏に代わる世代交代選挙になることは間違いない。金泳三、金鍾泌両氏は老練な動きを見せようとしているが、W杯旋風で見せた韓国の新しい波は確実に世代交代に動くだろう。これから半年、混戦レースの行方は予断を許さない。

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