国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

日朝拉致協議 北朝鮮の巧妙戦術を見抜け

思想新聞2004年3月1日号【ニューススコープ】

圧力回避と六カ国協議が狙い

日本は「制裁カード」示せ

 北朝鮮による日本人拉致事件をめぐる日朝交渉が2月中旬、平壌で開かれたが、北朝鮮は拉致被害者家族の日本帰国を認めず、交渉は結局、物別れに終わった。このことによって拉致被害者家族を「交渉カード」に使って六カ国協議を有利に展開しようとする北朝鮮の思惑が露わになった。拉致は国家テロであるという認識が北朝鮮にはまったくないのだ。それどころか日本と国際社会を手玉に取る道具に使おうとすらしている。これに対して日本政府はどう臨むべきか。「テロに妥協せず」が対テロの基本姿勢であることを想起し、「制裁カード」をしっかりと持つ「圧力」と、拉致被害者家族の「無条件完全帰国」および安否未確認の拉致被害者の真相究明を要求する「対話」を進めて行くべきで、妥協的態度は決してとってはならない。

 日朝拉致協議は2月11日から3日間にわたって平壌で開かれた。日本側からは外務省の藪中三十二アジア太平洋局長と田中均外務審議官ら、北朝鮮側からは姜錫柱第一外務次官と金永日外務次官が出席。拉致被害者家族の帰国問題について日本側は無条件帰国などを主張したが、北朝鮮はこれを受け入れず、結局、拉致問題解決に向け日朝政府間協議を継続することで合意した。
 まさに「大山鳴動して」の図である。この交渉の“ネズミ一匹”とは「協議の継続約束」であり、これこそが北朝鮮の狙いであったことは明らかだろう。

「協議継続中」の状況証拠作り

 昨年12月以来、拉致問題をめぐる北朝鮮の対日工作が激化していた。12月20日に北京で鄭泰和日朝交渉担当大使が平沢勝栄衆院議員(拉致議連事務局長)らと会談、北朝鮮側は被害者の訪朝を条件とする「出迎え方式」による被害者家族の帰国を打診した。しかし、これは家族が帰国できる保証が何らなく揺さぶり工作であることが明白で、拉致被害者家族会は1月9日、「評価に値しない」との認識で一致し、一蹴した。
 すると次に北朝鮮は1月13日、麻薬密輸容疑で拘束している日本人男性の身元確認のため外務省職員の訪朝を受け入れた。ここで日本側が従来の主張である政府間協議の開催を提案した。それに応える形で今回の日朝協議が実現した。
 こうした流れから当初、北朝鮮は「出迎え方式」を正式に提案するのではないかと見られ、「北朝鮮側にも何らかの合意をめざそうという用意があると思われる」(朝日新聞2月13日付)といった観測も流された。だが、それらはすべて甘い見通しだった。
 協議で北朝鮮は「まず約束どおり五人を北朝鮮に戻せ。その上で家族八人と話し合い、八人が希望すれば日本に行けばよい。無理やり日本に行かせることはできない。(安否未確認の)拉致被害者10人の問題は解決済みだ」と従来の主張を繰り返すだけで、協議は何ら進展しなかった。
 北朝鮮は家族八人が「希望」すれば日本に行けばよいと言うが、北朝鮮の中で「希望」を表明できる環境などまったく存在しない。この提案に乗れば、結局、「本人たちは希望していない」ということになり、帰国させられずに拉致交渉に幕が引かれる「最悪の事態」を迎える。逆に言えば、それが北朝鮮の狙いなのだ。だから、こういう状況下では「無条件完全帰国」以外に選択の余地はないと言ってよい。
 むろん、北朝鮮も日本が「出迎え方式」に乗る可能性は低いと踏んでいたはずだ。にもかかわらず、“妥協案”を示さず、
従来の主張を繰り広げたのは、もう一つ別の意図があったからだ。それは今回の協議で合意したこと、すなわち「協議継続中」という状況証拠をつくっておくことである。

改正外為法と入港禁止法が威力

 この思惑は二つある。一つは、日本の「圧力」を避けるため。もう一つは、2月25日から北京で開催される六カ国協議で拉致問題を分離しておくというものだ。
 日本の「圧力」とは、北朝鮮に対する経済制裁のことである。国会では2月9日、日本独自の判断で北朝鮮などへの経済制裁を発動できる改正外国為替・貿易法(外為法)が成立した。これで閣議で「わが国の平和と安全維持に必要」と判断し制裁を決定すれば、財務相は金融機関を通じた送金を停止、産業経済相は貿易停止を命ずることが可能となる。これまでは複数国の合意がなければ制裁が発動できなかったが、これで日本単独で制裁ができる。北朝鮮に対する「制裁カード」を一つ持ったことになる。
 だが、改正外為法だけでは不十分である。送金の報告義務が3千万円と高額なのと、第三国を経由する「抜け穴」が開いたままだからだ。また、個人が現金を持ち出す「携帯輸出」は02年度は約36億円と見られているが、100万円以下は届け出が不要(だから実際はもっと巨額)で、これも改正外為法では阻止できない。
 そこで改正外為法と車の両輪になるのが、北朝鮮船舶の入港を禁止する「特定船舶入港禁止法案」である。これは①閣議決定で定める特定の外国の船籍を有する船舶 ②閣議決定で定める日以後に特定の外国の港に寄港した船舶を入港禁止にするもので、北朝鮮船舶だけでなく日本船舶で貿易する行為も封じ込める強力な「制裁法案」である。これなら万景峰号などで日本に寄港した際に資金を「携帯輸出」しようとしても不可能となる。
 同法案は政府・与党のみならず民主党も賛成する意向で、国会に上程されれば、共産・社民を除く圧倒的多数で可決される見通しだ。六カ国協議の北朝鮮の出方を見たうえで、上程の時期が決まることになるだろう。
 これらが日本の「制裁カード」だ。むろん、法整備が即制裁というわけではない。両法とも「わが国の平和及び安全の維持」が前提であり、発動するか否かはあくまでも外国(北朝鮮)の出方次第である。これに対して北朝鮮は「制裁」を発動させないために「拉致協議継続中」という状況証拠をつくっておきたいのだ。

妥協なき交渉が重要になる

 もう一つの北朝鮮の思惑は、六カ国協議で日本に拉致問題を持ち出させず、有利に「核カード」を切って米国から「安全の保証」を取り付けようというところにある。日本が六カ国協議で拉致問題を遡上に乗せようとすると、「それは日朝二国間で交渉中」と封じ込めようというわけだ。そのために六カ国協議直前の2月中旬に日朝協議を開いたと見て間違いない。これこそが“ネズミ一匹”の意味である。
 このように日朝交渉には常に北朝鮮の工作戦術が秘められている。これに乗せられずに対応するには、「妥協なき交渉」を貫くことが肝心となる。拉致問題の完全解決がない限り、日朝交渉は一切進展しない。そう北朝鮮に理解させることが重要である。

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