この記事は2015年11月20日に投稿されました。
米国で中国の脅威を指摘する報告が相次いでいる。まずは米議会の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会(USCC)」による報告だ。
USCCは米議会の中で、中国について最も広範かつ綿密な報告を行う超党派の機関だ。そのUSCCが、11月17日に公表した年次報告書で次のように指摘した。
「中国は尖閣諸島の周辺海域で、軍事、民間の両面でプレゼンスを静かに増強し続けている」
具体的には、尖閣諸島周辺での公船による巡視活動や、空軍の航空機による偵察活動、日中中間線付近のガス田掘削施設などを紹介している。
他にもUSCCは、米政府が人工島の軍事拠点化を中止するよう圧力をかけていることに対しては「効果をもたらしていない」と断じ、中国のサイバー攻撃は「今後も激化する見込みだ」と述べている。
さらに警戒すべき点として、中国が開発を進める衛星攻撃兵器(ASAT)を挙げている。米国のあらゆる設備はハイテク化されており、その情報はほぼ人工衛星を経由して伝えられる。その最たる分野が軍隊だ。戦車や戦闘機、戦艦など、あらゆる米軍機には、情報が軍事衛星を介して伝わり、高速コンピューターで戦術や役割分担などが自動的に計算されて配信されていく。最近では戦車の操縦は主にタッチパネルで行われ、若い兵士のほうが熟練者よりも機能を使いこなせることが多いという。
もし中国が米国の軍事衛星を破壊すれば、ハイテク機器で固められた米軍だからこそ一気に無力化される。USCCの報告によれば、中国が開発する衛星破壊ミサイルは2種類あり、その一つは2007年に中国の老朽化した気象衛星を破壊する実験に成功した。中国はその後、衛星破壊計画の情報をすべて非公開にしている。中国は秘密にしているが、今や中国のASATは米国の人工衛星に近づき、レーザー兵器で麻痺させ、さらにロボットで回収する能力をもつという。
政治戦争は始まっている
もう一つは、ワシントンの研究機関である「ヘリテージ財団」と「プロジェクト2049研究所」が10月6日に共催したシンポジウム、「影響作戦=中国の東アジアや同盟諸国への政治戦争」における報告である。主な内容は、中国が米国や日本、台湾で展開する世論工作の脅威についてである。
ブッシュ政権で副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めたアーロン・フリードバーグ氏(プリンストン大学教授)は、中国の秘密工作の全体像について説明し、中国の工作ターゲットは3つのレベルに分けられると指摘した。
第1のターゲットは「中国が『古い友人』と呼ぶ、昔から対中交流に関与してきた著名な元政府高官や財界人」であり、第2のターゲットは「現役に近い前外交官や前軍人、学者など政策形成に近いエリート層」だ。彼らに対しての工作は、「中国を米国と対等な大国として受け入れ、東アジアでの中国の支配的な拡大を黙認させ、あるいは抵抗を弱めさせるための説得」であるという。
第3のターゲットは「中国や外交の研究者を含めた民間の一般層で、ここにはメディアも含まれる」。彼らには逆に、「中国は国内問題に追われているため対外的にはそれほど強大にはなれない」というメッセージを送る。
これらの工作は中国の人民解放軍総政治部と共産党中央宣伝部により行われ、その手法は、「中国共産党がソ連共産党や中国国民党の謀略工作の伝統を引き継いだやり方に加え、自分たちで独自に構築した闘争方式」を用いる。ヘリテージ財団のディーン・チェン氏は、「中国はこの工作を対外的な政治戦争と位置づけている」と強調した。
中国の対外工作を警戒せよ
これらの報告書に共通するのは、「戦争」とは具体的な軍事衝突だけを指すのではなく、相手を弱体化させる段階からすでに始まっているという認識だ。特に「孫子の兵法」を本格的に取り入れる中国は、負ける戦争には決して挑まない。武力行使に出るのは「必ず勝つ」という状態になってからである。その状態に至るまでは、敵を弱体化させることに全力を注ぐ。敵の内部に離反者を作り、世論をミスリードし、対外関係を悪化させて孤立させる。武力行使に出るのは最後の一瞬だ。
米研究機関はこれを「戦時戦争」といい、武力は用いていないがすでに戦争状態にあると指摘した。この警告は日本にこそ必要である。特に日本にはスパイ防止法がなく、他国以上に警戒が必要だ。武力行使が起きてからでは遅い。武力行使に至ることのないよう、十分な備えが必要である。
2015年11月20日


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