思想新聞 2000年 11月1日TOP
一層の日韓米協力体制の強化を
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)における序列三位の趙明禄国防委員会第一副委員長(次帥)が10月9日、特使として米国を訪問し、クリントン大統領をはじめ関係閣僚と会談した。さらに同23日には米国務長官(オルブライト氏)が、米朝関係の歴史始まって以来の訪朝を果たし、金正日総書記と会談。メールアドレスの交換も行われたという。一挙に進む関係改善への動きにおいて、北朝鮮と米国の真意はどこにあるのか、急展開する米朝関係にたいしてどのように対処すべきかを考えてみたい。
訪米した趙明禄という人物
趙明禄国防委員会第一副委員長は、名実ともに軍の最高幹部であり、ゆえに北朝鮮における実質ナンバー2である。オルブライト米国務長官は今夏、北朝鮮の白南淳外相と会っており、この度の相互訪問のステップとなっていることは間違いないが、白南淳外相の権限に対しては疑念を持っていた。しかし、趙氏の権限に対しては、米国政府内で誰一人疑うものはなかったという。
趙明禄次帥は、98年9月の最高人民会議において推挙されて、現在の位置に就任している。金正日国防委員長(総書記)は、推挙の際において「私がいうことと彼がいうことは同じである」と述べ、まさに異例の紹介を行ったという。北朝鮮における政治的決定は全て金正日総書記に「お伺い」を立てて行われる。しかし、唯一、一定の権限を持っている人物が趙明禄氏であるといわれているのである。この度の訪米への思い入れがいかに大きいかを窺い知ることができよう。
米朝の国交正常化も視野に
クリントン・趙会談は10日に行われ、趙次帥は軍服姿で現れた。朝鮮動乱の勃発が1950年、多くの犠牲者を出して53年に休戦協定が締結されている。「停戦」ではなくあくまで「休戦」であり、実質的には今なお戦争状態にあるということを意味している。趙次帥の「軍服」はその意味において理にかなっていたといえよう。
さらに休戦協定は、米国と北朝鮮との間で締結されており、韓国は加わらなかった。現在でも韓国軍は、在韓米軍の指揮の下にある。去る9月25、26日に南北国防相会談(韓国の趙成台国防相と北朝鮮の金鎰○人民武力相)が済州島で開催されたが、そこで話し合われたのは、南北を結ぶ鉄道や道路の回復にともなう軍隊の動き等に関することであり、平和体制に関することではなかった。権限がないのである。米軍の指揮下にある韓国軍なのである。
韓国内では金大中大統領の太陽政策について「急ぎすぎ、北朝鮮からの見返りは全くない」との声が高まっている。共同宣言の中に盛られるべき文言は何よりも「平和の定着」でなければならないはず、との声が強い。この度の北朝鮮の外交攻勢に対して、頭越しとの声も韓国内であるようだ。しかし、既に述べたように、米国の関わりなくして平和体制への移行はできないのも事実なのである。
10月12日、米朝共同コミュニケが発表された。その内容は、【1】平和保障体系への移行は四者(南北米中)会談などの方途もある 【2】米朝間に「敵対的意図」は存在しない 【3】長距離ミサイル発射実験凍結の継続 【4】テロに反対する国際的努力を支持、などである。さらにオルブライト国務長官訪朝の合意もしるされた。
この度の、米国務長官訪朝は、クリントン大統領の露払いといわれている。国交正常化も視野に入ってきており、米朝高官の相互訪問によって正常化のための条件もより明確になりつつある。その第一は、北朝鮮を「テロ支援国家」の指定リストからはずすことであり、そのために、【1】「よど号」事件の犯人(日本赤軍=テルアビブ事件などのテロ行為を世界で行った)の国外追放【2】シリアやイランなどへのミサイル売却の停止などがその前提であるという。この度の米国務長官の訪朝では「指定解除」までは至らなかった。大統領の訪朝までお預けというところだろうか。第二に、長距離ミサイル開発と輸出の規制である。
10月23日夜のマスゲームで人工衛星打ち上げ風景が上演された際に、金正日総書記が「これが最初で最後の衛星打ち上げになるかも知れない」とミサイル発射の恒久的な停止とも受けとれる発言をしたことが話題を呼んでいる。
時宜に適った日韓米外相会談
米大統領の功績狙い、金正日総書記の韓国攪乱戦術、日朝交渉への無言の圧力などなど、米朝関係の急速な展開に対する様々な視点が論じられている。しかし、既述の如く韓半島に平和体制が定着するためには、米朝の動向が決定的要因を作り出すことも事実である。
「湖の氷は溶け出すときが一番危険」であるという。情緒的判断や一方的情報に偏ることなく、総合的な情報に基づく冷静な判断と実行が必要であろう。そのためにも第一に、日韓米の連携強化を旨とすべきであろう。
その意味において、訪朝直後の日韓米外相会談開催を高く評価したい。オルブライト長官が、日本人の拉致問題解決を金総書記に進言したごとく、関係各国が抱える課題解決に相互協力しあう努力が要請されている。


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