国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

21世紀の国際情勢を読む ロシアで共産主義台頭を危惧

思想新聞1999年5月25日号 視点論点

北東アジアの平和に日米共同で対処を

元米国国務長官
 アレクサンダー・ヘイグ

 ――現在のロシアの状況を、ヒットラー登場直前のワイマール共和国にたとえて、国家社会主義的勢力の台頭について警鐘を発せられたが、その点についてもう少し説明を。
 (ヘイグ) 私は、歴史上の出来事の理解に際して紋切り型のとらえ方はしたくない。ただ、旧ソ連においてマルクス・レーニン主義に基づく政策が失敗し、その崩壊後成立したロシアにおいて、今みられるようなルーブル紙幣の無定見な増刷によって問題解決を図ろうとするような金融政策が今後もつづけば、ハイパー・インフレーションがさらに進行することになる。旧ソ連崩壊後、新ロシア発足以来、毎月10%の割合でインフレが進行しつつあるからだ。
1991年にゴルバチョフ政権が崩壊したのも、当時急速に進行したハイパー・インフレーションの結果だが、これと同様のことがまた起きている。
 そして、今やマルクス主義指導者たちによる支配の第2期が始まったといえる状況だ。
 共産主義者らの連合によって占められた「ドゥーマ」(ロシア議会)とプリマコフ首相(当時)を中心とした政府もまた、旧ソ連崩壊直後に比べれば、共産主義的色彩を帯るようになっているし、全体的にみて国家社会主義的性格を強めている。
 そのような政権は、国民を痛めつけ、何かを攻撃することに飢え、犯罪的な集団と化す可能性がある。そして、それは結果的にいわゆる「タフ・ガイ」(強面〔こわもて〕の性格をもっており、何か不満をもったロシア国民の溜飲をさげることをやってくれそうな人物)、例えば、ルシコフ・モスクワ市長や元将軍のレベジ知事のような存在が表舞台に登場してくることになるかも知れない。
 またロシア社会の混乱は、中央統制的な政治・経済体制復活につながるかもしれず、このような点から、私はロシアの現状と未来に極めて深い関心をもつ。
 ――冷戦の間は、ソ連の影響を排除することが米国の外交政策の目的だが、冷戦終結後、敵を失った後の新たな米国の外交政策推進の原動力は何になるのか。『文明の衝突』を著したハンチントン教授の主張するように、イスラム圏に「敵」を見出し、リビアのカダフィやイラクのフセインのような存在を描き出してゆくことになるのか。
 (ヘイグ) 米国民は、このことに神経を払わなければならない。冷戦の経験からいえば、「敵」を創造することによって、本来「敵」でない者まで「敵」にしてしまいかねないからだ。
 その格好な例が、私の属する共和党の一部にみられるような、中華人民共和国を、旧ソ連にとってかわった「敵」として規定しようとする動きである。しかし、客観的事実や歴史的経験は、そのような見方とは全く正反対のものであろう。
 共和党の為し遂げた、第二次世界大戦後最大の外交上の成果といえば、ニクソン大統領による中国の門戸開放にほかならない。
 ところが、最近、この最大の成果を損ないかねない兆候がみられる。そのようなことは歴史的現実によっても、これまでの対中国政策からみても正当化されるものではないだろう。太平洋湾岸の利益を考えてみても、中国を受け入れるかたちでの外交を押し進め、中国をして建設的で責任ある国際社会の一員にすることで、その平和的変化を促すことになるのであり、その逆ではない。
 このような考えは、私が確信を持つものであるとともに、北京の指導者たちによっても共有されている。しかし、それはアメリカの一部の政治家によって嘲られている。
 ――テポドン・ミサイルの発射実験によって日本政府及び日本国民も、北東アジアの平和と安全について極めて高い関心をもつようになったが、長官はこの時期、北東アジアの一員として日本政府と日本国民はどのような役割を果たすべきだとお考えか。
 (ヘイグ) 日本の国土を超えた突然のミサイル発射実験をきっかけに、日本国民が北東アジアの平和と安全に注意を払うことになったことを評価したい。
 すでに専門家のなかには、北朝鮮はアラスカにも到達可能なミサイルを開発しているとの見解を表す者もおり、この出来事によって、日本国民にとって、全く新たな、今まで考えることのできなかった脅威への認識が生まれている。
 しかし、そのような脅威への認識を高めると同時に、日米安全保障条約が結ばれており、極東の安全のために米軍が継続的に日本に駐留していることは理解される必要がある。さらには、戦域ミサイル防衛(TMD)網の構築にむけて、日米間で作業が始まっていることもつけ加えたい。
 中国に対する政策においても日米両国政府の協力が必要だし、対中外交と交流を深めるためには不断の努力が必要だと考える。
(99年春、韓国ソウルにおける共同インタビューより、文責=編集部)

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