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始まりはヘーゲル批判 「プロレタリアート」に至る

思想新聞2004年3月15日号【勝共理論】マルクス人間疎外論5

 ヘーゲル哲学の無力を痛感したマルクスは現実問題の解決をヘーゲル批判から始めます。最初にフォイエルバッハの人間主義に影響を受けます。
 フォイエルバッハは『キリスト教の本質』を著し「神は人間である」と述べて世を驚かせました。彼によれば、神とは人間の精神、神の愛とは人間の愛、神の本質とは人間の本質です。
 人間の愛や理想といった意識を「神」として人間の外に置くことによって人は神の奴隷になったと言うのです。ヘーゲルが神を主語、存在を述語としたのに対して、彼は存在が主語、神が述語とします。これが人間主義です。
 これを継承してマルクスはヘーゲル批判を試み、『ヘーゲル国法論批判』を書き、国家によっては市民社会の混乱から人間解放はないと、ヘーゲルの官僚主義、国家主義を批判します。
 ついでバウアー(ヘーゲル左派)がユダヤ人差別は全ての人が宗教を棄てればなくなると主張したのを批判し、『ユダヤ人問題によせて』を書きます。そこでは差別は市民社会の欲望から生じているとし現実の個体的な人間が「類的存在」を取り戻すことによって差別がなくなるとしました。これも人間主義の立場からの思想展開です。
 ところが、パリに移るとマルクスの思想に変化が生まれます。それはまず「第二の心理的衝撃」によってです。すなわちプロシアの弾圧、そして結婚に反対する家族がマルクスへの遺産相続を拒否したことで、国家への敵愾心と私有財産への憎悪心をつのらせます。
 そんな時にパリではシュタインは『現代のフランスの社会主義と共産主義』でプロレタリアートは「私有財産の否定という目的の下に自覚した統一体」と描き、プルードンは『財産とは何か?』で私有財産の否定を主張していました。
 これらの思想的影響を受けマルクスは『ヘーゲル法哲学批判序説』を著します。そこでは人間主義が姿を消し「宗教は民衆の阿片」と規定、現実問題の解決は市民社会の外にいて苦悩を背負い人間性を喪失させられた階級、すなわちプロレタリアートによる人間解放、私有財産否定によって実現するとしたのです。
 マルクスはここで初めて「プロレタリアートによる解放」という概念を自らの思想に取り込んだのです。

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