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次は「日本有事」の法整備を

思想新聞 1999年5月5日号

船舶臨検、スパイ防止、自治体協力…周辺事態法案が衆院を通過 だが課題は山積

  周辺事態法案など新しい「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)関連法案が衆院を通過し、ようやく今国会での成立のメドが立った。日米安保条約をわが国および周辺有事から国民の平和を守る柱に据えて30年余。法案が成立すれば、これまで放置されてきた日米協力の具体化が進展、安全保障はより確固たるものとなる。だが、これでも不十分。課題は山積している。

評価・5つのポイント

 衆院を通過したガイドライン関連3法案は次の点で評価されよう。
 第一は、初めて周辺有事での米軍との協力の仕方や範囲を法的に明らかにしたこと。これで周辺有事でうろたえる事態が避けられる。
 第二は、これも初めて自衛隊の領域領海外での活動の指針を明示したこと。自衛隊の活動を違憲だとか法的根拠がないとの批判を封じ込める。
 第三は、周辺有事の定義について「放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」を加え、「準有事」と位置付けたこと。このことによって集団的自衛権の行使に一歩前進した。
 第四は、周辺有事に際して国民の協力の在り方を明らかにしたこと。国の防衛は自衛官のみならず、全ての国民の義務であることを再認識させることにつながる。
 第五は、国連決議による船舶臨検を別法案にすることによって周辺有事から分離したこと。中国やロシアが拒否権をもつ国連決議は、日米安保条約による活動と必ずしも整合性が一致しない。日米安保条約に基づく「準有事」への対応と国連決議による活動は分離するのが筋である。
 以上のことから関連法案は評価できる。

 課題・5つのポイント

 だが、今後に次のような課題を残している。
 その第一は、肝心の日本有事の法整備がなんら成されていないこと。
 本来ならば、日本有事の法整備や態勢があり、その延長線で周辺有事があるはず。「放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至る」おそれと言いながら、直接の武力攻撃に対する法整備がまったくないのは、明らかに主客転倒だ。
 第二は、周辺事態における自衛隊の協力活動を「交戦区域と一線を画する地域」と限定していることである。
 空軍力やミサイル射程能力が格段に進歩した現代の戦争は、交戦区域は限定されず、つねに流動的。それを「一線を画する」などとすれば自衛隊の活動に足枷をはめることになりかねない。
 第三は、自治体協力を「協力を求める」として義務化していないこと。これでは非協力の共産党系首長が登場しても法的規制ができず、混乱を招きかねない。罰則規定を設けて協力を義務化すべきだろう。
 第四は、関連法案から削除された「船舶検査」の立法が残されていること。これは、国連安保理決議による経済制裁の実効性を高めるために問題国に向かう船舶を検査するものだが、これも早急に法整備しておかねば、国際信義を損なうことになりかねない。
 第五は、スパイ防止法など平時からの安全保障態勢づくりが抜け落ちていることだ。先の不審船は工作船とされているが、「スパイ天国」を温存したままの有事法制はザル法になりかねない。

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