この記事は2011年3月4日に投稿されました。

中国海軍のY8情報収集機とY8哨戒機が3月2日、東シナ海上空を南下し日中中間線を越え、尖閣諸島の北50~60キロまで接近したため、領空侵犯の恐れがあるとして航空自衛隊南西航空混成団が那覇基地からF15戦闘機をスクランブル(緊急接近)させた。中国軍機が尖閣諸島にここまで近づくのは初めてのことである。中国は尖閣諸島のみならず沖縄までも手中に入れ、さらには西太平洋の覇権を握る野心を燃やせ、これまで「第1列島線」を越えて中国艦船をしばしば西進させてきた。昨年9月の中国漁船による尖閣侵犯以降は、艦船に加えて航空機による接近を繰り返し、空自のスクランブルが頻発していた。そして徐々に間合いを図り、今回は尖閣諸島の50キロ地点まで最接近し、日本側の対応を試した。放置しておけば、尖閣諸島への領海・領空侵犯のみならず、偽装漁船(海軍)による尖閣上陸もあり得ると見ておかねばならない。こうした中国の蛮行を事前に防ぐために陸上自衛隊の尖閣諸島駐留を実施すべきである。灯台の設置や漁港整備など領土保全に向けた取り組みも欠かせない。
西太平洋の覇権を狙って着々と軍拡と体制整備
中国周辺の海域(黄海、東シナ海、南シナ海)の総面積は約300万平方キロメートルで、中国の陸地面積(約960万平方キロメートル)の3分の1に該当する膨大な領域である。これを中国は自国の「領土」にしてしまおうという魂胆なのだ。それでかつては「沿岸防衛」だけを中国海軍の主任務にしていたが、1970年代には「近海防御」へと転換させ、対馬海峡から東シナ海、台湾海峡、南シナ海に至る「第1列島線」を守備範囲として拡大した。さらに80年代になると、鄧小平は海軍力増強を改革・開放路線と表裏一体と捉え、「近海積極防衛戦略」を掲げ、85年には「海洋権益の擁護」を主張、80年代後半には南シナ海・南沙諸島のベトナム南部の近辺海域に進出し、6カ所の岩礁を軍事占領した。さらに90年代に入ると南沙諸島のフィリピン・パラワン島海域に進出し、ミスチーフ礁(中国は美済礁と呼称)を占領、92年2月には中国の権益に必要な地域を戦略領海と規定する「領海法」を制定し、フィリピン領の西沙諸島の一部を米軍がフィリピンから撤退した直後の95年に軍事占領した。「領海法」は尖閣諸島を中国の領土と明記しており、これに刺激を受けた台湾は99年に尖閣諸島を領土とする領海の基準線を定めて対抗している。
さらに中国は2010年1月には「離島」の管理方法などを定めた「島嶼保護法」を施行し、東シナ海(すなわち尖閣諸島も)や南シナ海の南沙・西沙諸島を軍事的支配する“法的根拠”を作りあげたのである。その上で南シナ海をチベットや新疆ウイグル、台湾と同様に「核心的利益」と称するようになった。遠からず東シナ海も「核心的利益」と唱えるのは目に見えている。これに伴って海軍を外洋海軍へと急速に改編し、台湾とフィリピンを結ぶバシー海峡、南シナ海を内海化し、さらに「第1列島線」を西進し伊豆からサイパン、グアムを含む東太平洋地域、パプアニューギニアに至る「第2列島線」と位置付け、最終的には沖縄本島を含めた西太平洋を手に入れようと目論んでいるのである。
米軍に対する接近阻止戦略で日本も威嚇
中国の狙いは①2010年代前半までに「第1列島線」内で米軍の影響力を排除し(接近阻止戦略)②40年までに「第2列島線」を越え、インド洋や西太平洋から米軍の影響力を減らすというもので、そのために空母建造計画まで進めているのである。こうした流れの中で中国海軍は2004年11月には漢級原潜が沖縄の先島諸島で領海侵犯。同様の領海侵犯事件は08年9月、高知県沖でも発生した(国籍不明潜水艦とされている)。また06年10月には太平洋で軍事演習中の米空母に潜水艦が魚雷射程の至近距離にまで接近、08年11月には米空母「キティホーク」が台湾海峡で潜水艦に28時間追尾され、空母から戦闘機が発進する事態を招いた。さらに08年10月、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦と最新鋭の江凱級ミサイル・フリゲート艦2隻、洋上補給艦1隻の計4隻からなる中国艦隊が初めて対馬沖から日本海に入り、津軽海峡を通過した。国際海峡とは言え、日本領海にまで進出するようになったのは初めてのことだった。
そして2010年4月には海軍艦船10隻が沖縄本島と宮古島を間の公海を南下し、その後、西太平洋に進出、沖ノ鳥島を1周する日本への示威行動を繰り広げたのである。この艦船は東海艦隊(司令部・浙江省寧波)のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦2隻、フリゲート艦3隻、キロ級潜水艦2隻、補給艦1隻など計10隻で、人民解放軍機関紙「解放軍報」は同年4月8日、東海艦隊が東シナ海で外洋展開共同訓練を実施すると予告。明らかに日米の出方を見極めようとする示威行動だった。同艦隊は7日から9日にかけて予告どおりに東シナ海の中部海域で大規模な訓練を実施し、8日には中国艦艇の搭載ヘリが監視活動中の海上自衛隊護衛艦「すずなみ」の高度30メートルにまで接近し、危険の伴う至近距離から示威行動を繰り広げた。10日には沖縄本島の西南西約140キロの南西諸島を太平洋に向けて進み、キロ級潜水艦2隻は浮上航行した。浮上航行は初めてのことで、「今までになかった事態」(北沢防衛相)だった。こうして中国艦隊は「第1列島線」を突破したのである。11日には沖縄南方海域で洋上補給を行い、13日頃に日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)近海に入り、同島を基点とする日本の排他的経済水域(EEZ)内で島を1周するように航行、その後も太平洋上で演習を続けた。
東シナ海での海軍力増強で支配拡大を狙う
同演習について米国のシンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主任研究員は、 HYPERLINK “javascript:void(0);” 沿岸から最も遠い距離に出ての最大規模の演習行動だと特徴づけ、「中国海軍の新戦略の始まりであり、米軍への挑戦と日本の反応の探察を目的としている」と分析している(産経新聞・古森義久ワシントン特派員=2010年3月21日付)。それによると、今回の中国艦隊の保有兵器は①キロ級潜水艦が搭載する超音速のSS-N22サンバーン艦対艦ミサイルが有事の際、日本の自衛隊艦艇への大きな脅威となる②ソブレメンヌイ級駆逐艦が搭載する超音速SS-N27シズラー艦対艦ミサイルも自衛隊への脅威となるほか米軍艦艇への接近拒否の威力を発揮できるという。同研究員は、中国海軍は①遠洋活動能力を高め、多元的な艦隊、機能の確立を目指す新戦略のスタートとしている②訓練は東アジア、西太平洋での米海軍の覇権への挑戦を目指している③今回の艦隊の動きに日本がどう反応するかを考察することを意図していると指摘。さらに「今回の訓練航行が象徴する拡大活動を今後定着させ、日本との領有権紛争を抱える東シナ海での海軍力の増強によって、主権の主張に、より強い実効を発揮させることを意図している」と述べている。同研究員は中国が沖縄諸島に関しても日本の領有権を明確に認めていない点も指摘している。
2010年に44回も空自がスクランブルかける
こうした一連の流れの中で昨年9月の尖閣諸島における中国漁船の領海侵犯および海保巡視船への体当たり事件があったと見ておかねばならない。同事件以降、海軍艦船だけでなく航空機による「第1列島線」突破を試し始めたである。朝日新聞によると(2010年12月27日付)、尖閣事件以降、東シナ海上空で自衛隊機に対して中国軍機がこれまでにないような接近をする例が頻発している。自衛隊の中国軍機に対するスクランブルは2010年度すでに44回に達し(12月下旬時点)、過去5年で最多となった。海上自衛隊はP3C哨戒機に加え、EP3電子戦データ収集機やOP3C画像情報収集機などの「偵察機」を南西諸島の北西空域の日本の防空識別圏(ADIZ)の内側、日中中間線付近へほぼ連立飛ばし、航空自衛隊もYS11EB電子測定機で電波を傍受、中国軍の動きを監視している。こうした「偵察活動」に対して中国側は戦闘機や攻撃機を発進させ、接近はADIZの外までにとどめていたが、尖閣事件の翌月の10月からは海軍のJH7攻撃機がADIZ内に入るだけでなく日中中間線も越えて、自衛隊機を視認できる距離まで接近。空自がスクランブルをかけると引き揚げていたという。
今回、中国側はさらにエスカレートさせ、尖閣諸島に最接近したわけである。
領土問題で中国に妥協すれば一層、付け込んでくるのは明白なことである。わが国は抑止力(軍事的)をしっかりと固め、防衛していかねばならない。
2011年3月4日


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