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ミサイル防衛システム導入を急げ・2

思想新聞2003年12月15日号【視点論点】

拓殖大学教授
茅原郁生氏

米国も警戒する北ミサイル

 米国は世界一の経済大国として大西洋と太平洋に囲まれ豊かな資源を持ち、海空軍力を主体に前方展開し世界秩序をコントロールしてきた。その前提が9・11テロによって破られた。米国では三度目の本土攻撃とされている。最初は独立戦争で英国軍が上陸したこと、二番目は日本の真珠湾攻撃だ。
独立戦争では宗主国が独立させまいと軍隊を送ったので当然。真珠湾攻撃も、当時は州にさえなっていないハワイが攻撃を受けただけ。しかし9・11で米国が最も誇る二つの場所が攻撃された。米国資本主義の象徴といえる世界貿易センタービルと世界に冠たる軍事力の総司令部であるペンタゴンだ。それだけに米国が受けたショックは大きい。
 以後、米国は二つの脅威があると見る。一つは、大量破壊兵器が拡散することで、米国及びその同盟国が脅かされる。しかも、核を持てば北朝鮮のような貧しい国も大きな政治パワーを持つ。もう一つは、直接飛んでくるミサイル、あるいは人間が運びこんでくる危険物の脅威だ。
 そこでテロ的行為を平然と行う国、イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」とした。米国はテロについては本土安全保障省を作り、膨大な組織で本土防衛に取り組んでいる。米国をミサイル攻撃できる国は従来、ロシアと中国だったが、それらは国家的交渉ができ、核抑止が利く。だが抑止が利かないミサイル保有国が北朝鮮。その国がテポドンなど多段エンジンのミサイル開発や船で米国近海に来てミサイル発射の恐れもあり、米本土の安全保障を明確にする必要が出てきた。
 1998年に発射されたテポドン1号は約1500キロの射程距離で、ハワイにも届かない水準の低いもの。それが6000キロを超えるとハワイやアラスカ、西海岸に届くので、米国は非常に危険視する。
 北朝鮮は80年代初めにソ連からスカッドBミサイルを導入した。これを改良しスカッドCを開発し、射程距離を300キロから1000キロに延ばした。それをイランやイラク、パキスタンに輸出し次にノドンを開発。ノドンは一段式ミサイルで、射程距離が1000~1300キロあり、日本の能登沖に着弾し大騒ぎになった。既に200基が実戦配備され、沖縄も含め日本全土をほぼ射程に収めるとも言われる。これが日本にとって「今そこにある脅威」だ。当然、日本国内の米軍基地にも照準を合わせていよう。在韓、在日米軍基地を人質とすることで、北朝鮮は貴重な対米交渉カードを手にしたことになる。
 テポドンはノドンの上にスカッドを付け二段式。98年のテポドンは下段のノドンが日本海に落ち、二段目のスカッドが本州を越えて三陸沖に落ち、さらに先端にある弾頭が太平洋に落下。一説に4000キロ飛んだと言われ、そこに米国が注目した。
 テポドンは一段目切り離しと二段目点火という技術的突破をし、理論的には三段も可能になり射程はさらに延びる可能性がある。やがて北朝鮮は米本土に到達するミサイルを開発する恐れがあると米国は見た。米国のMD政策を推進するには、やがて北朝鮮側が本土を脅かすミサイルを持つ、飛来するミサイルを本土に到達する前に落とさないといけない、という話は非常に分かりやすい。
 今、注目されているのはテポドン2号。これはもっと強力なブースターを一段に付け、二段目にノドンを据え、射程距離は3500キロ~6000キロという。それが8000キロになると西海岸が射程に入る。これにより、米国は北朝鮮に対してミサイル防衛を必要とするという重要な根拠にしている。米国は2004年までに最初のMDをアラスカに実験的な実戦配備をする計画だ。
 一方、韓国はテポドンに対しクールな反応だった。韓国は既に北朝鮮のスカッドミサイルの射程圏内にすっぽり入り、いまさらの感がある。軍事境界線からソウルまでは40~50キロ。ソウルと非武装地帯の間に米軍の第二師団が配備されるが、長射程砲でも届く距離だ。ソウルには韓国人口の約四割が集中する。ソウルの安全なくして韓国の安全はない。そのため韓国の脅威はテポドン以前の問題だ。韓国にとり北朝鮮を暴発させないことが一番で、北を刺激しないでほしいと考えるのだ。
 米国は戦争誘発を避けるとし、これまで射程150キロ以上のミサイルを韓国がもつことを規制。朝鮮戦争勃発前まで、韓国が勝手に北進しては困ると、米国は韓国軍に戦車の保有を認めなかった。だが戦車で攻めてきたのは北だった。米国は去年、韓国のミサイル規制を解除し、現在、韓国軍は北のミサイルに対抗できるミサイルの開発・導入を始めた。(取材・協力=世界思想、文責・編集部)

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