思想新聞2002年1月1日
国際勝共連合中央本部
21世紀は世界の人々に大変動を予感させる激動の年月を刻んでいる。米国で起こった大量殺戮テロは「文明の衝突」とは何ら関わりのない許されざるテロ行為であるが、世界の人々に改めて「文明の対話」の必要性を感じさせたことは疑いない。ポスト冷戦時代の混迷期を脱して、人種や宗教、文化、さらには経済の壁を超えて世界平和の新秩序を形成できるか、人類は大きな試練に立たされている。日本もまた例外ではない。世界の為に生き、かつ自ら生き残るには「聖域なき構造改革」をあらゆる面で押し進め、大変革を成し遂げていかねばならない。
宗教と国家を超え試練に立つ世界
テロ克服の後、韓半島情勢が焦点に
▼国際情勢
世界でグローバル・イシュー(地球的問題群)が一層深刻化していることを我々はまず第一に認識しておかねばならない。
21世紀の幕開きの年、2001年に世界人口は60億人を超え、国家数は180を上回った。20世紀を担ってきた東西陣営の一方の雄、ソ連が崩壊して丸10年、連邦から脱した諸民族が国家を樹立した結果、国家数は史上最大となったのである。だが、連邦崩壊後の民族の独立をめぐってユーゴスラビアで顕著なように紛争・戦争が絶えない。
その一方で、グローバル化した世界経済の中で米国の一人勝ち状況が続き、南北格差は一層進み、飢餓人口は拡大した。また世界保健機関(WHO)によると、世界でエイズウイルス(HIV)に感染している人は01年末に4千万人を超えた。昨年1年間でのエイズによる死者は3百万人、新たな感染者は5百万人と推計される。このようなエイズの猛威に象徴されるように感染症をはじめとする病魔が地球を覆っている。そして環境破壊も相変わらず続いているのである。グローバル・イシュー(地球的問題群)は一段と深刻の度を深めているのだ。
●同時多発テロの衝撃波が走る
そうした中で9月11日、昨2001年の最大の出来事となった米国同時多発テロ事件が発生した。かつてセルビアの青年が発した一発の銃弾が第一次大戦を勃発せしめたように、一つの事件が世界に惨禍や大変革をもたらすきっかけになる。まさに米国同時多発テロもそうした歴史的事件として長く人類の記憶にとどまることになるだろう。
世界情勢で第二に認識しておかねばならないことは、安全保障面においても「超国家」という概念がもたらされたことである。
すなわちテロ事件は戦争の形態が必ずしも「国家間」のものではないことを示した。国家は19世紀に近代国家という新たな概念で人類の前に登場し、20世紀はその国家間の衝突によって二度の世界大戦を招いた。したがって安全保障は対国家で取り組まれてきたのである。ポスト冷戦後も基本的には対国家が安全保障の要諦となってきた。
昨年一月に登場したジョージ・ブッシュ米大統領は、米ソ二大超大国が世界の覇権を二分してきた冷戦時代からの完全脱皮を目指し、地域野望を持つ中小国家を問題視した。これら諸国を「無法国家」と位置づけ、その台頭を封じ込めることを第一の戦略目標に据え、米国および同盟国を「無法国家」から守るミサイル防衛網構想の推進に主眼を置いた。
そうした中で、国際テロ組織アルカイダによる大量殺戮テロが仕掛けられたのである。ビンラディンを指導者とするアルカイダはアフガニスタンのタリバン政権というテロ支援国家に助けられていても、彼ら自身は国家組織ではない。ブッシュ政権は国際対テロ戦線の結成を呼びかけ、国連はこれに応じ、世界の大半の国も支持した。国家を超えた安全保障の在り方が問われているのだ。
米国は12月に弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの一方的脱退をロシアに通告した。冷戦期の72年に旧ソ連と締結した同条約は「相互確証破壊」という核報復を前提として平和システムで、明らかに時代遅れのものであった。米国の脱退表明によって、世界は新たな平和システムづくりを余儀なくされる。ここでも「超国家」の安全保障政策が問われることになるだろう。
●迫られる文明の対話と宗教の和解
第三に認識しておくべきは「文明の対話」「宗教間の和解」の重要性がクローズアップされ、「超宗教」が問われるようになったことである。
むろん、ビンラディンがいくらイスラムの言葉を語りジハード(聖戦)を主張しようとも、テロ行為はイスラムとは何ら関係のない許されざる大量殺戮行為である。そしてアフガニスタンにおける対テロ軍事行動は「宗教の衝突」でも「文明の衝突」でもない。ビンラディンこそテロを「文明の衝突」へと持ち込もうとしており、我々は決してそうさせてはならない。
だが、現在の世界には国際テロ組織が「文明の衝突」を企てるように、突き入られる隙がある。イスラム圏をはじめとする途上国には、米国と欧州を中心とするグローバル化に対して根強い反発が存在するし、世界的な貧富の格差は一層広がっていることも事実だ。
パレスチナではイスラエルのシャロン政権の強硬姿勢とアラファト・自治政府議長の優柔不断な姿勢によって、和平プログラムは事実上、崩壊している。テロと軍事弾圧の連鎖から脱することができず、事態はイスラエル(ユダヤ教)対アラブ(イスラム)の対決へとエスカレートしつつある。
その意味で宗教対立を超えた「超宗教」が世界平和のカギを握っている。文鮮明・世界平和連合総裁は世界平和実現の根本的実現策として、【1】為に生きる 【2】家庭の再建 【3】宗教の和解 【4】国連に宗教議会を設置する――との4点を提示しているが、宗教の和解と、それを世界平和に反映させるべき宗教議会の設置は焦眉の急になっているといえよう。
●韓国大統領選、そして日韓W杯
今年、2002年の世界は「超国家」が一段と進むであろう。欧州連合(EU)は1月1日から統一通貨ユーロの使用を始め、さらに25カ国体制に向けEUの枠組みを見直す。国家の枠組みを超えた共同体は欧州の安全保障・経済発展に大きく寄与し、ヨーロッパの大潮流を形成している。一方、世界貿易機関(WTO)に昨年、正式加盟した中国にはグローバル化の波が押し寄せることになる。もはや中国は一国繁栄主義では許されなくなる。政治的には共産党の一党独裁を堅持しているものの、経済面では市場経済が国境を越えて中国全土を覆うことになり、中国の変革が予想される。
ブッシュ米政権は中国政策をこれまでのクリントン政権のものから一変させ、日米同盟を主軸に置き、中国に対しては覇権主義を最も警戒している。中国の出方いかんでは北東アジアの緊張は避けられない。
このような中で一昨年、劇的な進展をみた韓半島の南北対話は、昨年に大きな壁にぶち当たった。ブッシュ政権は北朝鮮政策も一変させ、北朝鮮に対して厳しい姿勢を見せている。そんな時にテロ事件が勃発、アフガンへの軍事行動を通じて、米国はテロ支援国家への強硬姿勢を強めている。北朝鮮は南北対話に消極的になり、日本に対しても、日本人調査中止や不審船事件で明らかなように、強硬姿勢に転じた。明らかに金正日国防委員長は、日韓米分断工作を仕掛けようとしている。
しかも韓国は今年12月の大統領選挙に向けて政界が一挙に動き始め、金大中大統領のレームダック化が進んでいる。北朝鮮の対韓国姿勢も様子見になっており、韓半島情勢は緊張感を含みつつ停滞することは必至である。したがって北東アジア情勢を注視していかねばならない。国際テロ組織アルカイダを壊滅させた後の今年の焦点は、韓半島となるであろう。
今年は日韓共催によるFIFA(サッカー)ワールドカップが開催され、日韓関係はより親密に展開することが求められる。これを日韓一体化の絶好の機会と捉え、国民レベルの友好関係を一層強化し、アジア共同体実現の一里塚としなければならない。


コメント