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生きがいある共同体づくりの方策・下

思想新聞2003年9月1日号【視点論点】

郷土の偉人掘り起こせ

上武大学教授 菅野 英機氏

エコマネーで地域を活性化

 小泉政権が構造改革の目玉の一つとして進めている構造特区では、エコマネー(地域通貨)の発行が提案されている。エコマネーはカナダで始まり、韓国ではかなり発行されている。日本ではまだ商品券レベルに過ぎないので、自治体が発行元になり信頼性を高める必要がある。江戸時代の藩札もエコマネーで、明治維新の時、政府は円で清算した。外国では革命で倒した政府の債務を引き継ぐことはないので、その意味でも明治維新は革命ではない。
 エコマネーでは、ボランティア活動など商品にならないようなものも商品化できる。草刈りをして得たエコマネーで朝市の野菜を買うなど、市場経済のすき間を埋める形で使われる。使い先のメニューや価格の設定によって、地域の環境保全や人的サービスへの参加を促し、一定の収入が得られるので、地域の活性化につながる。また、通貨が地域内で使われるので、地域の循環性を高め、消費を活性化させる。
 そうしたサブマーケットが機能することで、市場経済から落ちこぼれてしまうような人たちをサポートすることができ、共同体のセーフティーネットとも言える。かつての共同体の助け合いを、今の社会の中で復活させる仕組みだ。
 現代は商品経済が発展したことで豊かになった半面、現金収入に乏しい過疎地では暮らせなくなった。そのため、地方の自然が荒廃すると、全体として損失になる。そこで、別の論理で環境の維持を図る必要がでてきた。それがボランティアやエコマネーだ。

 郷土愛を高めた先に愛国心あり

 最近の学生たちも、地元で働きたいという人が八割はいるが、仕事がないので仕方なく大都会に出る。また、一流企業志向は弱まり、収入より生きがいや快適な暮らしを優先する人が増えた。豊かさの中身が問い直されている。
 地方の時代と言われて久しいのに、一向にそうならない理由の一つは優秀な人材がいないことだが、ある程度の働き口さえ用意すれば、学生は定着する。農家では兼業が大半だが、むしろ兼業を積極的に認めると、収入を確保しながら、地域の環境を守れる。大企業でもワークシェアリングが普通になるので、兼業もその一種と考えればいい。
 むしろ、それによって個人の主体性を高め、若い内から地域で一定の役割を果たせば、共同体の絆を強めることにもなる。祭りを盛んにし、地域の文化力を高めれば、犯罪や引きこもりなどの社会的損失を減らすことになる。その方向にリードすることが、地方の政治指導者には求められよう。郷土愛が高まれば、その先に愛国心も高まる。これらは、先に成熟したヨーロッパでは既に実現されている働き方、暮らし方だ。それによって会社人間からも脱却できる。
 人生八十年時代を考えると、幼少期と老年期を幸せに暮らせるのが、本当の意味で豊かな社会だ。実年期に家族を顧みず必死に働いても、子どもが引きこもり、老親が寝たきりになれば、一生のコストパフォーマンスは極めて悪いことになる。もちろん、それ以上に幸福を失いかねない。

 地方版「プロジェクトX」起爆剤に

 そこで、郷土にゆかりの深い人物を掘り起こすことを提案したい。大河ドラマの主人公になった宮本武蔵のような剣豪もいれば、文化人、科学者、技術者、実業家、篤農家など、郷土の発展に貢献した人はどこにもいる。例えば、そういう人たちの本を作るのだ。
 それは地域を見直すことになり、誇りを高め、子供たちの教育効果も期待できる。子供たちが目標にする人物も、全国規模の人ではなく、郷土の偉人であれば、生まれ育つ環境が同じなので身近で親しみが湧こう。
 地場産業を起こした人、発展させた人など、埋もれている偉人も多い。それを現代の視点で掘り起こし、読みやすいように書く。例えば、「郷土をつくった人びと」のシリーズとして企画し、学校や図書館に備え、子供たちが読めるようにする。
 それをもとにテレビ番組を作り、地方局やCATVで放送すれば、もっと大きな影響を与える。いわば『プロジェクトX』の地方版である。
 例えば本の製作などは、私が理事長を務めるNPO法人日本民俗経済学会でも引き受けられる。生きがいのある郷土づくりの支援も進めている。
(協力=世界思想、文責・編集部) 

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