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金正日に次の一手はあるか

思想新聞2001年7月15日号 視点・論点

宮塚利雄・山梨学院大教授

  浮上する後継者問題 5月1日、金正日総書記の長男、金正男が偽造パスポートで日本入国を図り、国外退去されたことで、にわかに北朝鮮の後継問題がクローズアップしてきた。金正男は海外各地を見ており、閉鎖国家の指導者としては国際的視野が広い。IT(情報技術)に明るいのも、指導者の条件となる。
 今回、旅券偽造が発覚したのは、何度か入国が成功して油断したからではないか。英国の情報機関からの連絡で、入国管理事務所で警戒していたようだ。
 金正男を拘束し、拉致疑惑家族との交換条件に使うべきだったという強硬論もあるが、それはやりすぎだろう。しかし、国外追放したことで、日本が日朝交渉で北朝鮮に貸しを作ったと思うのは大間違い。北朝鮮は依然としてウリ(我々)式の路線なので、国際社会に配慮して自らの路線変更するとは考えられない。最近、金正日はかなりの軍幹部を昇進させており、軍の掌握に腐心しているようだ。外国では中国が認めるか否かが重要だが、中国としては北が崩壊しないことが最優先なので、結局は認めるだろう。金正日が還暦を迎える来年2月頃、後継者として発表するのではないか。 米国の出方次第 金正日はEU代表団に、2003年まで長距離ミサイルの発射実験は凍結すると明言したが、これには米国も納得したのではないか。しかし2003年までの条件を付けたのと、ミサイル技術の輸出はやめないと言ったのは金正日のしたたかさだ。実際、北にとってミサイルほど儲かる貿易はない。
 金正日はKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)で米国が約束を履行しないのに非常に苛立っている。しかも、米国は北朝鮮をテロ国家リストから外しておらず、ブッシュ政権は対北朝鮮政策をジュネーブ合意から見直す方針を発表した。そういう中でのEU代表団の来訪なので、交渉を通して米国へのメッセージを発した。また、EUとしては15カ国中13カ国は既に北と国交を結んでいるので、市場開発という経済的要因が大きい。
 金正日は訪韓の時期については明言しなかった。当初今春の予定だったが、年内は難しいのでは。米国の対応がはっきりしない段階で、訪韓するわけにはいかない。その間、ロシアや中国との関係改善を図りたいという考えだろう。米国との正常な外交関係あっての南北関係ということは分かっている。ブッシュ政権がどういう政策を打ち出してくるのか待っているはずだ。当然、日本との交渉も後回しになる。 冷める韓国の統一熱  昨年六月の劇的な南北首脳会談、8月の南北離散家族の再会、9月のシドニー五輪開会式の合同行進、鉄道京義線の南北再連結と世界の注目を集めた。ところがその後、北の態度が変化、南北交流は行き詰まっている。
 韓国の金大中大統領はかつての支持率が急落、太陽政策も陰りを見せている。離散家族再会は二回で止まり、面会場所を定める南北赤十字会談もその後、開かれていない。国防相会議も閣僚級会議もストップし、北の京義線再連結工事の作業員も引き揚げた。こうなると、1年前の合意は何だったのかということになる。北は電力支援を要請したが、それに対し韓国がいい返事をしないことに対する報復もあるだろう。
 だが私は京義線の再連結に期待する。鉄のシルクロードでシベリア鉄道とつながると欧州と結ばれる。日韓トンネルができれば日本とも結ばれることになる。輸送力が向上し観光開発も進み、経済の波及効果も大きい。
 そこで最近、南浦と新義州を経済特区にする方針を示し、南浦は韓国の土地公社と現代で開発する計画が作られた。また丸紅の仲介で北の代表団が来日し、関西の電力施設を視察した。北も手をこまねいているわけではなく、経済開放に向けて準備をしている。
 日本では北への失望感が広がっているが、北なりの選択がある。金正日は国内体制をまとめつつ、対外関係を広める考えだ。
 韓国と北朝鮮は、まず互いの体制の共存があり、共栄・統一となるが、かなり先のことだろう。日朝国交回復を急ぐ必要はないが、人・物の流れが確実に増えているのも事実。北の亡命者は、韓国の流行歌など知っており、情報が入っている。北朝鮮も、いつまでも閉鎖社会を続けることはできない。

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