国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

間違いだらけの「イラク戦争」報道 亡国の「イラク善玉・米国悪玉」論

思想新聞2003年4月15日号【視点論点】

 評論家 井上茂信氏

 イラク戦争の特色の一つは、一部マスコミの歪曲報道によって、かつてなく反戦平和運動が高まったことだ。マスコミの一部は、戦争で傷ついた女性や子供、逃げまどう一般市民の姿を大々的に報じるとともに、「米帝国主義の侵略は許せない」といった一部文化人の声を伝えている。かつての「共産主義善玉、米国悪玉論」が「イラク善玉、米国悪玉論」へと受け継がれた恰好だ。
 米英のイラク作戦が「侵略戦争」とされている根拠の一つは、国連安保理の新しい決議なしに米英が開戦に踏み切ったことだ。新決議に反対したのは、仏独で、国連の査察継続で、平和的なイラクの武装解除が可能だと主張した。だが、この主張には説得力はなかった。イラクは湾岸戦争後、今日まで12年間も国連決議を無視し続けて、大量破壊兵器の廃棄を拒否してきた。問題の核心は、フセイン大統領に本気で同兵器廃棄を実施する意思があるかどうかであり、査察継続が同大統領を翻意させる可能性はゼロであった。新決議がなくても、国連安保理は決議441などで武力行使を認めており、米英のイラク作戦は国連決議に違反しない。
 わが国では、“国連信仰”が強いが、専属の軍隊をもたない国連は、議論の場ではあっても、「張り子の虎」にすぎない。軍事力として頼れるのは米国だけであり、米国抜きでは国連は平和維持機構として機能しないし、フセインを罰する方法はない。新決議は得られなかったが、もともと利害を異にする大国の集まりである安保理そのものの集団行動など幻想にすぎない。
 イラク戦はイラクの石油を狙ったものといった報道も、反米平和運動を高めた。米国の政治は、他の国の資源を手に入れるために戦争に訴えることができるような機構にはなっていない。三権分立が確立しており、ウォーターゲート事件のような不正行為があれば、マスコミの弾劾などで大統領を辞任に追い込むことのできる国柄だ。現にイラク作戦では米英軍はフセイン軍による同国の油井放火阻止に全力を尽くし、イラクの戦後復興に同国の石油収入を全面的に使用することを発表している。石油のための戦争は悪質なデマだ。
 イラク戦争は超軍事大国によるイラクの独立主権侵害である、と一部マスコミは報じて、反米ムードを煽っている。米英軍の目的は国連決議に違反したイラクの大量破壊兵器の保持とその拡散阻止であり、そのためのフセイン政権打倒だ。イラクは核兵器は開発中だが、ミサイルと化学細菌兵器はすでに保持しており、対イラン戦や国内のクルド族の弾圧に化学兵器を使用した「実績」がある。米英が危惧するのは、テロリストのアルカイダが大量破壊兵器の保有に関心を抱いていることだ。9・11テロで衝撃を受けた米政府は、同兵器がテロリストに渡れば、米国や西側世界に大きな災禍が及ぶことを憂慮している。米英軍は国際テロリズムの撲滅と大量破壊兵器の拡散阻止というまったく正しい理由から開戦に踏み切ったのだ。
 オウム真理教によるサリン使用を体験した日本が米英の決断を理解できないのは、想像力の欠如が、テロリストと大量破壊兵器の結びつきの危険性についての鈍感さによるものと言えよう。
 米英軍がフセイン政権打倒を狙うのは、同政権が続く限り、前記の危険は続き、民衆は救われないからだ。米英軍の作戦で注目されるのは、同政権とイラク国民とを峻別し、一般の民衆の被害を避けるために最大の努力をしていることだ。バグダッド爆撃でも目標をフセイン政権の中枢部や命令系統、軍事施設に限定し、民間の住宅や電気・水道などのインフラ破壊を避けた。残忍なフセイン政権からのイラク国民の解放を狙ったのだ。猛爆にもかかわらず、バグダッドの市内は街灯がこうこうと点き、国営テレビがフセイン側の宣伝を放映しているという奇妙な光景となったのも、米英軍が第二次世界大戦のような無差別のじゅうたん爆撃を避けたためだ。
 対照的に目に付いたのは、フセイン政権の「汚い戦術」だった。米英軍は精密誘導爆弾などのハイテク兵器を使って目標を政治・軍事関係の施設に限定し、民間人の被害を避けるという「心やさしい戦争」を試みたが、フセイン軍はその逆手を取って、ゲリラ的なローテク戦争を展開した。爆撃を避けるために、病院などに戦車や弾薬などを隠した。さらに、戦火を逃れて米英軍に保護を求める民間人に偽装兵士を紛れ込ませて突然発砲した。見せかけの降伏や民間の婦人や米英軍に偽装したゲリラ兵による奇襲攻撃も行った。“人間の盾”に女性や子供までも使った。
 スターリンの崇拝者であるフセインは、彼にならってイラク戦を祖国防衛戦と宣言し、軍人・民間人を問わず戦線離脱者を祖国への裏切り者として、督戦隊による即時処刑という恐怖戦術を展開した。また、戦争は米英とイスラエル勢力による“イスラムへの挑戦”と宣伝し、兵士や民間人による自爆攻撃を展開した。政権維持のためには国民の犠牲をいとわないのがフセイン政権だ。
 米英の武力行使を「正しい選択」として支持した小泉首相の決断は高く評価される。首相が指摘するように、世論は必ずしも正しいとは限らない。それにイラク戦の行方は北朝鮮問題とも連動している。フセイン政権が武装解除しない限り、北朝鮮も核開発を断念しないだろう。首相が強調するように、日米関係が強固である限り、北への抑止力となることを忘れてはならない。「イラク善玉、米国悪玉論」に立った反戦平和論や、「すべての戦争は反対」という観念論に立った反戦平和論は、国際的な無法者を助け、日本の生存を危うくすることを自覚すべきである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました