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世界に貢献する日本のODA・1

【思想新聞2004年5月1日号】 視点論点

援助には初等教育が効果的

元中央大学教授 長谷山崇彦氏

 日本の国際貢献において大きな割合を占めるのが経済協力だ。就中ODA(政府開発援助)は額と、また発展途上国への効果において群を抜いている。
 昨年度ODAは事業予算が前年度比マイナス9・4%の1兆1570億円で、国民1人当たりほぼ1万円。ODA予算は1997年の財政構造改革法により大幅に削減された。
 日本のODAは51年のサンフランシスコ講話条約の調印を受けて行われた、東南アジア諸国への賠償とそれに準ずる無償援助に始まる。当時、復興途上の日本の経常収支は赤字で、世界銀行から多額の借款を受けた。58年にはインドへの円借款が始まりODAに輸出促進の目的が加わった。66年にアジア開発銀行が設立、67年にASEAN(東南アジア諸国連合)が結成されると、ODAの比重は東アジアに置かれるようになった。賠償が終わったのは76年。78年にはODA中期目標設定で、国際社会で応分の貢献を果たすことが明記された。80年代に入ると日本経済がバブル景気に入り、ODA予算も膨張し、89年には世界最大の規模となった。
 92年には「ODA大綱」が閣議決定、99年に具体的な「中期政策」を策定。ODAの基本的考え方、重点、方針・手法が体系化された。さらに2000年に政府は、より効率的な援助のため「国別援助計画」の策定に着手している。
 日本は90年を除き2000年まで世界最大の援助国であった。欧米先進国が「援助疲れ」で額を減らしたのが背景だ。しかしバブル崩壊により日本のODA予算も削減された。
 一方、米国は9・11同時多発テロを境に、テロ撲滅には貧困脱却の必要があるとの認識により、02年度のODA予算を前年度比46・3%増額、ODA政策を転換した。EU諸国もその動きに同調している。
 先進二十二カ国からなるDAC(開発援助委員会)ではODA/GNP比を0・7%にするのが目標だ。日本は0・23%で18位、供与額1位の米国も0・11%の最下位で、目標自体が非現実的だ。一人当たりの負担額は01年で日本は第7位で、低くはない。厳しい財政でODAを続ける以上、より効率的に、量から質への転換が必要だ。
 効率的な援助を考える上で戦後のアジア経済の発展が参考になる。中でも韓国・台湾が戦後いち早く経済発展を実現できたのは、日本が戦前に両国で行った初等教育に負うところが大きい。国民全体が基礎教育を受けたことが経済発展の土台になった。両国は香港、シンガポールと共に新興工業経済群(NIES)と呼ばれ、それに続いたのがASEAN諸国。いわゆる雁行型の経済発展モデルを形成した。ASEANは日本の直接投資と経済援助が大きな役割を占め、中国も同じ軌跡の上にある。こうして東・東南アジアは世界で最も成長が期待される地域となった。韓国・台湾の発展の基盤を作ったのは戦前の日本の政策であった。
 戦前、朝鮮・台湾は日本の植民地であったといわれるが、実際には日本の国土であり、朝鮮の人も台湾の人も日本国民で、同じように初等教育を受けた。それには忠君愛国を教え込む一面はあったが、政策として初等教育を重視し、必要な投資を惜しまなかった。現地の人と日本人との間に学校の差別はあるにせよ、使う教科書は同じであった。
 一方、ヨーロッパ諸国は植民地での初等教育を軽視し、一部富裕層のエリートだけ高等教育を受けさせ、統治要員として使った。後に独立運動を起こすインドのガンディーも、英国の大学に留学したエリート。オランダもインドネシアを約300年にわたり統治したが、インドネシア人の教育には無関心で、いわゆる愚民政策を取った。そうした初等教育の遅れが、独立後の経済発展を困難にしている。アフリカ諸国が独立後の発展が遅れた最大の原因も、一部のエリートは育っても一般大衆が無学のまま放置されたことで、道徳心も教育されなかった。
 貧困脱却には基礎教育が重要で、教育を受ければ赤貧洗う中からも這い上がる者が出る。例えばハワイには多くの豊かな日系人がいるが、大半は日本で貧しいため移民した。だが貧しくても子供には高等教育を受けさせ、そこから弁護士や議員が生まれ、やがて日系人州知事まで誕生した。ハワイで成功した彼らは、かつて見送った日本の親族より豊かになった。そう考えると、日本の援助も途上国に小学校を作り、基礎教育を受けられるようにすることに重点を置くべきだ。
 90年代半ばからアフリカや南アジア諸国への旧宗主国に援助疲れが見られた。植民地が一斉に独立した40年代には途上国はほぼ同レベルだったが、東・東南アジア諸国が抜きん出て発展し、途上国を卒業した。それを見てアフリカにも日本の援助を求める声が強まった。(取材・協力=世界思想、文責・編集部)

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