国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

有事7法案の上程 スパイ防止法を忘れるな

思想新聞2004年3月15日号【主張】

 政府は国民保護法案をはじめとする有事関連7法案と3条約の締結承認案を3月8日、閣議決定し、国会に上程した。昨年には武力攻撃事態対処法など3法が成立しており、今回でようやく有事態勢への法整備が出そろったことになる。国会は同法案を速やかに審議し、今国会での一括成立を期すべきであるが、これで終わりであってはならない。肝心のスパイ防止法が欠落しているからだ。50年にわたる政府の不作為 言うまでもなく有事法は国民の生命と財産を守る国家にとっては、なくてはならない基本法である。日本が占領体制を脱して独立し、自衛隊を創設した時点で同時に成立させておかねばならない性格のものだった。これまで50年以上にわたって政府は不作為を続けた。それだけに与野党を超えて今国会で成立させるのが筋である。国会論議は重箱の隅をつつくような否定的論議ではなく、より有効な有事態勢の確立をめざす積極的論議としなければなるまい。
 昨年、制定した有事3法は外国からの武力攻撃に備える「武力攻撃事態法」など、自衛隊の基礎的な有事態勢を整えただけのものだった。今回の7法案はそれを補い、国家全体の有事態
勢を網羅しようとするものだ。
 すなわち国民保護法案は有事の際、国民の生命と財産を守るために国民の協力方法を確立する法制だ。また民間の船舶や航空機に航行制限区域を制定するなどの自衛隊支援に関する法制、米軍と自衛隊が弾薬、燃料、水、食糧を相互に提供できるようにする米軍支援に関する法制、捕虜の取り扱い法制、そして軍事作戦と関係なく文民を傷つけたりしない非人道的行為処罰法制など、残されていた課題に応えての法整備が今回の七法案である。
 その意味で有事法整備の集大成と言ってよい。国民保護法案には大規模テロにも武力攻撃事態に準じて対処することを盛り込んでおり、想定される有事にほぼ対応できると評価できる。
 しかし、欠点もある。それは国民の「国防義務」を明確にしていないことだ。国の守りは国民全体の課題であり、したがっていずこの国も「国防義務」を課し、国を挙げて有事態勢をつくるのが常識である。それが今回の法整備では盛り込まれていないのだ。
 国民保護法案は、私権制限を盛り込んだのは当然のことだが、住民の避難や救援などについて国民に協力を要請するだけで、それに応じるかどうかを任意とした点はいただけない。これでは一刻を争う有事の際、国民一丸となって対応できるのか不安を残す。憲法九条への遠慮からこのような中途半端な法整備となったと思われるが、政府の危機意識の希薄さの現れとも言える。
 本来、「民間防衛」が確立されていなければならない。国家レベルから自治体、地域レベルに至るまできめ細かく民間防衛システムを整備し、それを自然災害に対応する防災システムとしても稼動させるのが常識的な対応である。こうした視点が今回の国民保護法案に入っていないのは間違いだ。
 今後、都道府県や市町村レベルで国民保護計画を策定していく際、各自治体は積極的に「国防意識」の向上や「民間防衛」に配慮した組織づくりを推進していくべきだ。万全の態勢づくりに国への遠慮は必要ない。ゲリラは情報戦から始まる さらに問題なのは情報に対する法整備がまったく考えられていないことだ。今回、国民保護法案には大規模テロへの対応が盛り込まれ、昨年発表された防衛白書にはテロやゲリラなどの「新たな脅威」に対処する自衛力の在り方に言及されているが、これらは従来「間接侵略」と呼ばれてきたものであり、必ずその前哨戦として情報戦がある。すなわちスパイ工作が先行し、その上でテロやゲリラ戦が仕掛けられるのだ。だから、これを防ぐ法整備が不可欠となり、それがスパイ防止法であることは言うまでもない。
 これは有事態勢というよりは平時態勢と言ってよい。昨年、政府は北朝鮮のミサイルを監視する「偵察衛星」を打ち上げたが、情報収集してもそれを分析・保全する能力と態勢がなければ、情報は「インテリジェンス」として生かされない。しかし、これまでわが国は情報分析能力の構築を怠ってきたばかりか、保全もスパイ防止法を整備せず情報戦を軽視してきたのが実態である。また、パキスタンのカーン博士を中心にした「核の闇ネットワーク」が発覚しているが、こうした策動や国際テロ組織の動きを防ぐにも情報収集と分析・保全が不可欠となる。
 有事七法案はどれもが日本に必要不可欠なもので、今国会での一括成立は当然だ。同時にこれだけに甘んじていないで、近い将来のスパイ防止法制定も念頭に入れておくべきだ。 

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