思想新聞2003年8月15日号【マスコミ論壇ウオッチング】
8月に入って、やっと夏らしくなってきたが、7月末までの異常な涼しさは、近年にない椿事といえよう。
ところで椿事といえば、本欄の愛読者にとっては「意外」とも思える内容の「フセイン像倒したのは?」という記事が、「朝日新聞」7月29日付け朝刊に掲載されている。
イラク戦争の大義の一つといわれる大量破壊兵器がいまだに発見されず、加えて英米両国において戦争開始に向けて政府の情報操作疑惑が深まり、ブレア首相などは関係者の自殺によって政権そのものの存立が危ぶまれる事態に立ち至っている。
そのような折も折り、今回の「朝日」の記事は、「アメリカ軍のメディア操作」の典型として批判されてきた今年4月9日夕方のバグダッド陥落時の「フセイン像引き倒し事件」が、紛れもなく反フセイン感情を抱いてきたイラクの民衆によって引き起こされたことを、フセイン像引き倒しに直接関わった一人一人を丹念に取材することで、はからずも見事に立証しているのである。
同記事によれば、ハイダル・アブドルザハラという電気工は、戦争前から友人たちと、「戦争で体制が倒れたら、あのフセイン像を倒そう」と話し合っていたという。
また、フセイン像の土台にハンマーを打ち付けていたのは、カジム・シャリフというイラクの元重量上げチャンピオンだった。
ところが記事によれば、外国人ジャーナリストがやってきて「像を倒したのは米軍から金をもらったからだろう」と質問してきたというのだが、このような質問を受ける度に、フセイン像引き倒しに関わった一人は、「息苦しい体制のもとで、この像が倒れる日を私たちはひそかに語り合い、夢見てきた。なぜ、私たちが夢を実現させるために自ら働いたことを信じないのか」と嘆いたというのだ。
反米自虐志向の強い「朝日」論調の中で、当初の取材意図とはズレが生じたとも推し量れるこの記事だが、是非とも世界中に配信してほしいものだ。


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