思想新聞2003年2月15日【マスコミ論壇ウオッチング】
2月1日に起きたアメリカのスペースシャトル・コロンビアの惨事は、長年のイラクのフセイン大統領の国際秩序への傍若無人な挑戦に対し、同盟諸国を束ねて攻撃態勢を整えることに腐心していたブッシュ大統領と、アメリカ国民の心に大きな影を落すことになった。
9・11事件の印象があまりに強かったために生じたテロへの疑いは、事故発生から際めて早い時期で否定されたものの、冷戦後の世界における唯一の超大国としての地位を科学技術の面で象徴する国家プロジェクトの担い手であったスペースシャトルの空中分解という悲劇は、9・11と同様の衝撃をアメリカ人の心に与えたことは否定できない。
アメリカでは、大統領が今回のような国家的な悲劇に際して、犠牲者の死を悼み、傷ついた遺族や国民の心を癒し、新たな目標を与え鼓舞してきた。
1986年1月に起きた今回と同様な、スペースシャトル・チャレンジャーの事故の際、レーガン大統領は傷ついた国民の心を慰める慈父としての役割を見事に果たしていた。
ところで、わが国の新聞やテレビでは、アメリカの大統領の行う就任演説や一般教書演説について報じる際に、要旨や抄訳という形で伝えることが多い。
今回の事故発生直後にも、ブッシュ大統領が犠牲者を悼み、国民の動揺に配慮して短いけれども、しかし重要な演説を行った。
これを報じた「朝日新聞」は、2月3日付けの朝刊で珍しくそのほとんど全て掲載したが、やはり掲載しなかった箇所があった。以下に削除した部分を紹介したい。
「(天の万象を創造したのと)同じ星々に名前を与えた創造主は、今日私たちが追悼している7人全て名前をご存知です。スペースシャトル・コロンビアの乗組員たちは、地上に安全なかたちで帰還することはできませんでした。しかし、私たちは彼らが安らかであるようにと祈ることはできるのです」
英文からほぼ全てを訳出しながら、何故この部分だけを削除したのか、「朝日新聞」の体質を十分に承知しておられる本欄の読者に説明は不要であろう。


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