思想新聞2001年4月1日号【主張】
森喜朗首相とブッシュ米大統領との初の日米首脳会談が3月19日、ワシントンで開催された。同会談で日米共同声明が採択されたが、そこで改めて「日米同盟関係の一層の強化」がうたわれた。自由と民主主義を共有する日米両国が同盟関係を強め、自らの平和と安全を守るのみならず、アジアと世界の安定に寄与する意義はきわめて大きい。日本は口先だけでなく真に実効性のある日米同盟強化策を探るべきである。
日米両国で世界に責任を持とう
日米両国は自由と民主主義という共通基盤を保持する。この意味合いを決して軽視すべきではない。なぜなら東アジアには自由も民主主義もない中国と北朝鮮、ベトナムなど共産主義国がいまだ存在し、東アジアの覇権の獲得を目指し、軍事力増強を図っているからである。
そうした中で日本は米国との間に日米安保条約を結び、安全保障は言うに及ばず経済面でも同盟関係を維持、発展させてきた。そのことにより戦後日本は未曾有の経済成長を遂げ、アジアの大国となったのである。むろん、経済至上主義に陥ったことに伴う負の遺産も背負っているが、それらは自由と民主主義を基盤とするかぎり、国民の努力によって是正が可能である。
折しも日米同時株安が進行中で世界経済の先行きに不安が漂っているが、日米経済危機イコール世界経済危機の構図は日米同盟が単なる二国関係にとどまらず世界の発展と安定に不可欠な関係になっていることを浮き彫りにした。たとえ森首相が「死に体」にあろうと、日米同盟が「死に体」になっては決してならないのであり、今回の森│ブッシュ会談は幸いなことにそのことを世界に示した。
ブッシュ政権は八年ぶりに大統領の座を民主党から取り戻し、しかもクリントン時代の中国偏重から日本重視へとアジア政策を大転換させようとしている。日本にとっては21世紀の新たな日米関係の構築に向けて同盟関係の強化をはかる絶好のチャンスを迎えたのだ。今回の日米首脳会談で両首脳は経済、安全保障の両面から総合的に「日米同盟の強化」を打ち出した意義を我々は十分に認識すべきである。
その意義の第一は、両首脳が日米同盟関係の一層の強化に取り組むために、新たな諸課題に対応する「戦略的対話」の重要性を確認したことである。日米が「戦略的対話」を進めることは、経済面では「両国で世界経済の四割を占める重要性」(ブッシュ大統領)を再認識して、世界に責任を持つことを意味している。このことを日本は自覚しておくべきだ。
ブッシュ大統領が師と仰ぐレーガン元大統領は東側陣営を終焉に向かわせるために西側陣営とりわけ東アジア経済の成長に腐心し、結果的にソ連崩壊のみならず東アジアの経済飛翔を実現した。これを見習ってブッシュ政権は日米両国で世界経済のリード役を担おうとしているのである。「戦略的対話」はそうした責任を果たす重要な意味合いを持つ。
意義の第二は、両首脳が大量破壊兵器と弾道ミサイル拡散への「脅威の認識」を共有し、ミサイル防衛網について「緊密な協議」を行うことが重要だと確認したことである。
ブッシュ政権にとってミサイル防衛網は戦術的なものではなく、安保政策の根本に関わる戦略的な位置付けがなされていることを日本国民ははっきりと自覚しておかねばならない。すなわち、ブッシュ政権は冷戦時代の「核の傘」による安全保障から「ミサイルの傘」による安全保障へと劇的転換を図ろうとしているのだ。
ポスト冷戦時代は覇権への野望を抱く中小国家が「地域覇権国家」として台頭すべく生物・化学兵器や長距離ミサイルの開発にいそしみ、同盟国はもとより米本土までも射程に入れようと企図しているとの認識とブッシュ政権は抱いている。こうした国をブッシュ政権は「ならず者国家」と呼び、その野望を挫くためにミサイル防衛網の構築が不可欠であると考えている。
日本の政策転換が同盟強化の意味だ
今回の日米首脳会談で森首相は米国の「ミサイルの傘」構想を支持したのであり、このことがまさに「戦略的対話」の第一歩となるのである。北朝鮮のミサイル脅威や中国の軍拡の脅威をもろに受ける日本にとっては当然の選択である。
日米同盟を強化するには米国側からの示唆(昨年十月のアーミテージ氏らによる対日要求)にあるように、日本が国連平和維持部隊(PKF)本体業務への参加凍結解除や国連平和維持活動への全面的参加、さらにはスパイ防止法制定、集団的自衛権行使などを明確に打ち出すなどの政策転換が不可欠となる。
日米同盟強化とは日本の転換を意味していることを、我々は十分に認識する必要がある。


コメント