思想新聞2004年2月15日号【マスコミ論壇ウオッチング】
今から20年余り前の1982年夏、「文部省の検定によって歴史教科書の日中戦争の記述が、「『侵略』が『進出』に書き換えられた」という事実無根の内容を報じた新聞各紙の誤報が大きな問題になった。この問題が明るみに出た際、公式に事実経過を明らかにして、読者に謝罪したのは、「産経(当時:サンケイ)新聞」だけであった。
ところで、当時この問題をスクープしたのは「世界日報」だが、同紙は今回、より深刻な野党党首の代表質問における虚偽を指摘して、「社会の木鐸」としての役割を見事に果たしている。
問題の発言は、民主党の菅代表が1月21日の国会での代表質問や、25日のフジテレビ「報道2001」で行ったものだ。その内容というのは、「ドイツは憲法を改正した後に、自国の国防軍をNATOの域外に派遣した」というもの。菅代表は、小泉首相の進めている自衛隊のイラク派遣の不当性をドイツの例を挙げて指摘しようとしたのである。
しかし、ドイツ特派員経験をもつ「世界日報」の山本彰記者が、同紙1月28日付の「メディアウオッチ」欄で、ドイツは憲法を改正せず域外派遣に踏み切った事実を指摘して菅発言に疑問を提起したのである。
その後菅代表は、2月3日、記者会見でこの問題について「私の理解に間違いがあった」と訂正したという。
しかし、問題の国会質問を行う菅代表の姿は、2月8日朝の『テレビ朝日』の看板番組、「サンデープロジェクト」に菅代表が出演した際、導入時に部分的利用されている。
事実と異なる内容を根拠とした今回の菅代表の発言は、問題が問題であるだけに、公党の党首の発言として不適当であることは論を待たない。
今回の報道は、20年余り前、当時の大手マスコミの先入観にもとづく誤報の事実を丹念に積み重ねて明らかにした「世界日報」紙のDNAが、今なお脈々と受け継がれていることを明らかにしたといえよう。


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