国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

日中防衛交流再開 対中包囲網の打破が狙い

思想新聞2003年10月1日号【ニューススコープ】

軍事拡大路線は不変アジアでの外交主導権確保へ

 日中防衛首脳会談がさる九月初め、五年ぶりに北京で開催された。同会談は昨年4月に予定されていたが、中国側が小泉首相の靖国参拝に反発して中断していた。だが、今年3月ニ胡錦涛氏が国家主席の就任、中国側が日中交流重視策に転換し石破茂長官が訪中し、久々の日中防衛首脳会談となったものだ。胡主席は未来志向の「新思考外交」に転じ、積極的な対外戦略に乗りだし、日中防衛首脳会談の実現もその現れとされる。だが、中国は軍事面では相変わらず軍拡路線を採っており、外洋海軍力の強化とともに対台湾をにらんだミサイル増強も不変である。胡錦涛政権は米国の一国支配をにらんで周辺諸国との関係を改善し対中包囲網を打破する戦略をとっており、軍事拡大路線で大国化をめざしていることに変化はない。

 もともと日中防衛協力を中断させたのは中国側だった。昨年4月に小泉首相が靖国神社を参拝したことに反発し、同月に中国を訪問することになっていた中谷元・防衛長官(当時)の訪中を断り、同年5月の中国軍艦の来日計画も中止。それ以来、交流は途絶えていた。だが胡錦涛政権はその方針を転換し、石破長官の訪中が実現した。
 それだけに中国側の積極的姿勢が目立つ。訪中した石破長官を上海の中国東海艦隊基地の最新鋭フリゲート艦、北京の陸軍装甲師団に招待し、オープンな姿勢を見せた。9月3日の防衛首脳会談で曹剛川国防相は「国防費は各国の比べ低い水準であり、脅威は与えない」と中国脅威論を否定し、「開かれた中国」を演出した。

胡錦涛主席の積極的な外交
 こうした中国の態度変化から胡錦涛政権の対外戦略が読みとれる。それは周辺諸国との関係を改善し中国包囲網を取り除き、米国の一国支配に対抗してアジアで外交的主導権を握ろうとするものだ。
 胡錦涛主席は5月末、主席就任後、初めて外遊、モスクワでプーチン露大統領と会談し、懸案の北朝鮮問題で米国の影響力を抑制して外交的手段による解決で一致、東シベリア・パイプライン建設などで中露経済協力の発展を促した。またサンクトペテルブルクでは小泉首相と日中首脳会談に臨み、歴史問題を柔軟に対応する「新思考外交」を披瀝。その足でフランスで開かれたエビアン・サミットに初めて参加し、ブッシュ米大統領らと精力的に首脳会談を行った。
 さらに6月23日にはバジパイ・インド首相をインドの首相として10年ぶりに中国に招いて中印首相会談を開催、両国のパートナーシップを目指す「中印包括協力宣言」をとりまとめた。同宣言でインドはチベットを中国領土と確認し、両国は経済、軍事面での交流拡大をうたった。中印関係は長年、険悪な状態にあっただっただけに関係改善は胡政権としては大きな成果といえる。また宣言は世界の多極化を強めると強調し、米国の一国支配を牽制しているのも特徴だ。中印関係改善を対米にも利用しようという中国の思惑が見え隠れしている。
 さらに東南アジアに対しては2010年までに自由貿易協定(FTA)実現を目指し、北朝鮮問題では六カ国協議でホスト国として調整役をこなすなど、アジア地域での中国の対外積極攻勢は際だっている。

中国国内に対日接近論

 こうした胡政権の対外戦略の一環として日中防衛交流の再開があったことは言うまでもない。対米関係をはじめとする世界戦略的な立場から柔軟な対日姿勢を打ち出していると見て間違いない。
 中国では胡錦涛主席の就任以降、対日接近論が高まっている。対日接近が中国の国際的地位改善のテコとなるほか、相互嫌悪は安全保障上も脅威になるとするもので、時殷弘・中国人民大学教授らが唱えている(『戦略と管理』03年2号など)。
 それによると、①歴史問題は従来の日本側の「反省と謝罪表明」で満足し対日外交議事や宣伝から除外②日本の対中輸出や投資を優遇し、最高指導者が対中経済援助に感謝を表明③日本の防衛力強化を「軍国主義の道」と表明するやり方をやめ、軍事面の信頼を醸成④北朝鮮問題など地域の安保や経済協力などで協調⑤日本の国連安全保障常任理事国入りを積極支持――などとしている(産経新聞6月13日付け)。
 しかし、こうした対日接近論は一部の学者の見解にすぎないし、同時に中国の大国化を否定するものではない。しかも胡主席は軍部を掌握し切っていない。中国人民解放軍はあくまでも中国共産党の軍隊であり、軍事部門のトップには、政府に何ら席を置かず、かつ中国共産党でもいわばヒラ党員の江沢民氏が中央軍事委員会主席として君臨している。こうした世界に類例を見ない異常な組織形態なのが中国の軍事機構である。

ハイテク化で軍精鋭めざす

 江沢民主席は9月1日、国防科学技術大学で演説し、兵員20万人削減と兵器のハイテク・IT(情報技術)・精鋭化を表明している。20万人削減といっても軍縮にはほど遠いのが実態だ。中国軍は目下、「積極的防御」戦略方針のもとで、全軍の近代化を推進し電子戦作戦による局地戦を念頭において「量」から「質」への転換を図っている。現在の総兵力約282万人で、20万人削減は何ら影響を及ぼさない。
 そのうえ、89年の天安門事件以降の国防費の伸び率は図にあるように一貫して高く、軍拡路線は微動だにしていない。7月に発表された米国防総省の「中国の軍事力」報告書は、中国が台湾対岸にミサイルを約450基配備し、台湾の武力統一を視野に台湾や沖縄の在日米軍も射程に収めていると強調。また衛星攻撃兵器の開発にも力を入れているとして警戒感を露わにしている。

実質的軍事費は発表の二倍以上
 さらに同報告書は中国の国防予算について、中国が昨年、発表した200億ドル(約2兆4千億円)を大幅に上回る年間450億ドル~650億ドルと積算し、2020年までにはさらに3~4倍に膨らむと分析している。加えて中国はわが国の排他的経済水域である南西諸島や小笠原諸島の広い海域に海洋調査船をくり出し潜水艦航行のための海洋調査を行ったり、沖縄近海で中国海軍の情報収集船を活動させたりもしている。
 こうした中国の軍拡路線からも明らかなように胡主席の「新思考外交」は対中包囲網を打破し、対米発言権を増す意図が秘められていることは明らかだ。その真意を見落としてはならない。

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