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「拉致疑惑」を忘れるな 対北朝鮮、妥協は禁物だ

思想新聞 2000年3月15日号 主張

 政府は北朝鮮との日朝国交交渉を4月前半に平壌で行うことを決め、それに先だって十万トンの食糧支援を行うことを発表した。日朝交渉を進めるに際して「拉致疑惑」の解明やミサイル再発射の防止などを明確に主張していくべきであって、無用な妥協は断じて行ってはならないと我々は考える。

 北朝鮮解放への長期目標すえよ

 3月7日に発表された政府の「当面の対北朝鮮政策」によると、1.日朝交渉を四月前半に平壌で開催し、次回は東京、以降は北京または第三国で開く 2.人道的観点と北朝鮮側からの懸案についての前向きの対応を得ることを期待して国連の世界食糧計画(WFP)を通じて十万トンの食糧支援を行う 3.以上の対応は日米韓三カ国が共同で練り上げた政策に沿ったもので米韓両国の支持が得られる──というものである。
 これだけを対北朝鮮政策に据えることは甘すぎる。
 対北朝鮮政策で最も重要なことは、北朝鮮に軍事冒険主義に走ることを諦めさせ、その上で開放政策を採らせて国際社会に引き出し、南北の平和統一、ソフト・ランディングを成功させることである。こうした戦略的視点が重要である。
 日朝交渉に際して、我々は昨年秋にまとめられた米国の対北朝鮮政策「ペリー報告書(ウィリアム・ペリー政策調整官=前国防長官)」を今一度、吟味しておく必要があるだろう。
 同報告は次のような目標を設定している。
 短期的目標=米朝関係正常化に向け北朝鮮はミサイル発射を自制。米国は一部制裁解除、韓国と日本も適切で肯定的措置を取る。
 中長期目標=北朝鮮から核とミサイル開発計画を中止する確かな保証を得なければならない。
 長期目標=韓国と日本はもちろん北朝鮮の協力の下、韓半島での冷戦を終息させる。 
 こうした目標を設定した上でペリー報告は韓国と日本の懸案問題について次のような見解を示している。
「韓国が求める南北基本合意書の履行と離散家族の再会が実現しなければならず、日本が要求する拉致された日本人の問題が解決されるべきだ。北朝鮮の麻薬密売問題も扱う必要がある。これら問題は米朝関係正常化の過程で取り上げなければならない。また、多国間の問題として、生物・化学兵器問題も扱うべきだ」
 ペリー報告の結論は、対話を推進するとともに「北朝鮮の挑発による緊急事態の可能性に対する準備が必要だ」として、日米韓三国の緊密協力と緊急事態への準備を強調している。これは当然のことである。

 日本に不足する緊急事態の備え

 このペリー報告は総括的で異論もあるが、大筋では認められよう。つまり、対北朝鮮政策の長期目標は冷戦の終息(すなわち北朝鮮解放)に置き、当面はその目標に向けての対話を進めつつ緊急事態に備えることだ。
 日本に欠落しているのは、緊急事態への備えであることは論を待たない。周辺事態法の制定だけでは不十分で、有事が本土に及ぶことを想定し、有事態勢を早急に確立しておかねばならない。守り大前提のもとで対北朝鮮交渉が進められるべきであり、交渉テーマの柱に拉致疑惑の解決や麻薬密売問題が据えることは当たり前のことだ。
 食糧支援が軍人の腹だけを肥やしてはいないか、その「行き先」を確認し、かつ日本からの支援であることを人民に知らしめる方策をはっきりしておかねばならない。
 対北朝鮮政策には妥協は禁物である。

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