思想新聞 2000年2月5日号 主張
スパイ防止法なき日本の愚かさ
さる1月下旬、日本の中央官庁がインターネット上に開設しているホームページ(HP)で、ハッカーによる不正アクセスが続発した。急速に進展するネットワーク社会に向けての日本の無防備ぶりをあらためて浮き彫りにした。
ハッカーは国家を破壊するテロ行為
各省庁への不正アクセスは、さる1月24日に科技庁、25日には総務庁本庁・同統計局、26日に再び科技庁と経済企画庁シンクタンク、27日には総務庁統計局と運輸省のHPなど相次いで改ざんされた。また人事院や外務省、郵政省なども不正アクセスが多数試みられていた。
まさに、「やられっぱなし」といった状況である。改ざんされた多くは「日本軍国主義の復活」などと日本を批判する中国語や英語に書き換えられており、このうちの一部は中国・広州のプロバイダー(接続業者)のHPだったことから、国際的犯行の可能性が強い。
不正アクセスを許したのは、被害を受けた省庁が「ファイアウオール」と呼ばれる不正アクセス防止システムを設置していなかったからだという。人事院や外務省などは厳重なガードシステムを採用していたので、ハッカーはアクセスに失敗している。
だが今回、ハッカーを防いだ防止システムも不十分で、本格的侵入を試みられた場合、ひとたまりもなく不正アクセスを許すとの指摘もある。いずれにしても日本の中央官庁の無防備ぶりが浮き彫りにされた。
こうしたハッカー行為に対して、甘い対応ですませるべきではない。たとえば、HPの書き換えを「器物破損罪」、盗み出すのを「窃盗罪」といった軽犯罪ごとくに捉えては決してならない。なぜなら、2000年問題で世界が神経を尖らせたように、不正アクセスによってコンピュータが狂えば国家・社会システムそのものが破壊されかねないからだ。
航空機管制システムが破壊されれば旅客機墜落事故もあり得るし、鉄道官制システムが壊されると衝突事故も起こる。金融システムでは株の大暴落なども生じる。だから、2000年問題では誤作動によって何が起こるか、世界の人々は固唾を呑んで年明けを迎えたのである。
なによりも重大視されたのは軍事施設のコンピュータ誤作動だった。コンピュータで管理されている核兵器が誤作動によって発射されないかといった不安がその最たるものである。
米国では「サイバースペース防衛計画」
こうして見れば、ハッカーがテロ行為であることが理解できよう。だからこそ、米国ではハッカー対策は国防総省が中心となって防衛問題として対応している。米国の場合、ハッカーを「コンピュータ・システム破壊テロリスト」と断じ、国家への脅威と捉えている。クリントン政権は防衛問題の視点から現在、総額20億ドルを投じて「サイバースペース(電脳空間)防衛計画」を推進している。
ハッカー対策はまさに有事態勢だ。米国では95年1年間で国防総省のコンピュータに対するハッカーの攻撃は約25万回に及び、ニューヨーク州の空軍施設から重要データが盗まれている。21世紀の戦争は敵のコンピュータ破壊から始まるとされているだけに、サイバースペース防衛計画は米国にとっては当然のことだろう。
ところが日本はスパイ防止法すら制定していない「平和ボケ」に陥っている。ハッカーを単なる「侵入者」扱いですませていれば、国家破壊テロに対応することは不可能であろう。スパイ防止法をはじめとする「情報守護」体制を構築していかねばならない。


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