この記事は2011年1月20日に投稿されました。
オバマ米大統領と胡錦濤中国国家主席による米中首脳会談が1月19日、ワシントンのホワイトハウスで開かれた。注視すべきは米国が中国の“経済力”に屈服し、妥協外交に陥り、自由アジアや西太平洋を中国に売り渡さないか、という点である。事実、中国は胡主席の訪米にあわせ中国企業による450億ドル(約3兆7000億円)を超える米製品購入や投資の商談をまとめた。米ボーイング社の航空機200機のほか、全米12州の企業などと70の契約を結んでおり、幅広く米国を“買収”していこうとする意図がうかがえるからだ。
人権問題で妥協しない独裁国・中国
報道によると、会談後の共同記者会見で米中首脳は世界経済や安全保障分野で連携していくことで一致、両国は経済・貿易、エネルギー・環境、科学技術などの分野で交流や協力を強くすることで合意したという。だが、人民元についてオバマ大統領は「過小評価されている」と指摘したが、胡主席から具体的な言及はなかった。人権問題に関しては対話を進めることで米中双方が合意し、共同声明には「米国にとって人権保護と民主主義が外交政策の重要な一部分」と明記された。だが、オバマ大統領は中国政府とチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世側との対話を支援していく方針を改めて言及したが、胡主席は中国が人権の保護・促進を約束しているとしながらも「中国は巨大な人口を持つ発展途上国で多くの課題がある」と木で鼻をくくったような対応ぶりだった。また共同声明でも「中国はいかなる国の内政干渉もすべきでないと強調した」との一文が盛り込まれ、人権で妥協しない独裁国・中国の強権姿勢を改めて見せつけた。
軍事面については信頼醸成や誤解解消に向け、対話や協力を進めていくことで基本的に合意したとしているが、中身は不透明である。北朝鮮問題については朝鮮半島の非核化に向けて協力することで一致、また南北関係の改善の重要性でも一致したとしたが、共同声明では北朝鮮のウラン濃縮計画に懸念を表明するにとどまった。対北朝鮮での強硬路線に慎重な中国との温度差が浮き彫りになったといえよう。
共同声明は「核心的利益」に言及しなかったが…
産経新聞は米中共同声明に「核心的利益」の文言が盛り込まれるか否かに注目していた(1月19日付=ワシントン佐々木類記)。2009年11月にオバマ大統領が訪中した際、米中共同声明で中国が台湾やチベットに関して使う「相互の核心的利益の尊重」を明記したが、「この文言は南シナ海の内海化を正当化するよりどころとされ、米国側を驚かせた」(外交関係筋)とされるからだ。同共同声明は「核心的利益」が何かを明示していないものの、中国側は従来の台湾やチベットに加え、南シナ海を核心的利益の対象に加えることを決めたとされ、昨年5月の米中戦略・経済対話で「南シナ海は中国の核心的利益である」と正式に主張するに至った。これに対して中国との間で島嶼領土問題を抱える東南アジア諸国が反発し、米国や日本でも問題化、中国は発言を慎重にし始めている。それだけに今回の米中共同声明で核心的利益が明記されるか注目された。結論からいえば、明記されることはなかった。表に出ている声明や記者会見などを見る限り、米国が中国に譲歩したと思われる点は見られない。だが、実際の会談では何が話し合われたのか、今のところ知るすべもない。
ともあれ、今回の米中首脳会談は米国が中国から適当にあしらわれた印象が強い。経済力をつけた中国が焦らず、じわじわと米国を締め上げていく。そんな構図が今回の米中首脳会談から読み取れる。胡錦濤主席は訪米に先立って米紙による書面インタビューに応じ、その中でドルを基軸とする現在の国際通貨体制について「過去の産物だ」と断定したのはその象徴である。ここから米国に取って代わって21世紀の覇権を握ろうとする野望が垣間見られる。
中国GDP世界2位で攻勢期に入る
米国家情報評議会(NIC)は08年11月に「世界潮流(Global Trends)2025 変革される世界」と題する報告書をまとめ、今後15年を「新秩序への移行期に当たる」と位置付け、「不安定化」へ警鐘を鳴らしたが、その中心課題に据えたのは中国の台頭だった。それによると、2025年には「第2次大戦後に構築された国際体制はほとんど見る影もなくなる」とし、世界は多極時代となって安定性がなくなり、米国は軍事技術の進歩によって依然として「最も強力な国」であり続けるが、経済力や国際的影響力の低下は不可避とした。米国に代わってどの国が影響力を増大させるのかというと、中国とインド、ロシアなどの新興国とりわけ中国である。中国は25年までに「世界2番目の経済規模と主要な軍事力を獲得する」と予測し、途上国は西欧型モデル(市場経済・民主主義)よりも国家資本主義的な中国型モデル(政治独裁・非民主主義)に傾斜し、世界各地で民主化が後退するとも予測している。胡主席がドル機軸の国際通貨制度を「過去の産物」と断じ、新たな通貨制度を言い出すのは、こうした流れの中にあると見ておかねばならない。
米中首脳会談にあわせるかのように中国国家統計局は1月20日、2010年の名目国内総生産(GDP)が約39兆7983憶元(約514兆円)になったと発表した。これで日本を抜いて世界2位となったのは確実である。これを機に経済力を軍事力と政治力に転化する中国共産党政権が攻勢期に入るとみて間違いない。米国が毅然と対抗できるように同盟諸国の力を結集していけねばならない。そのためにも日本は変わらねばならない。
2011年1月20日


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