国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

統一地方選 橋下氏の「大阪都構想」を検証する

この記事は2011年2月28日に投稿されました。

統一地方選挙の火蓋が3月に入ると切って落とされる。その第1弾となるのは3月24日に公示され4月10日に投票される東京都を初めとする13都道県知事選挙と44道府県議会議員選挙(茨城県、東京都、沖縄県を除く)、札幌市長選など5政令市長選挙、16政令市議会議員選挙である。第2陣が4月24日に投票が行われる88市長選挙・305市議会議員選挙、13区長選・21区議会議員選挙、132町村長選挙・404町村議会議員選挙である。市町村合併で選挙日がずれたところが増えてきたが、それでも全国の自治体の42%が選挙戦に突入する。これから2カ月、日本列島は地方選挙一色になるわけである。

「維新の会」は府議会で過半数を制せるか

東京都知事選挙はいまだ候補者が出揃っていない。争点もはっきりしない。かつての保革対決のような熱気はない。地方政治はどうあるべきなのか、全国的には盛り上がりに欠くといってよい。そんな中、「大阪維新の会」が2011年統一選の台風の目になっている。「大阪維新の会」は大阪府の橋下徹知事が立ち上げたもので、「大阪都構想」を実現させるとし、大阪府議会や大阪市議会、堺市議会で過半数を目指し大量擁立する。現在、「大阪維新の会」所属議員は、大阪府議会29議員(定数112=次期選挙で109に減員)、大阪市議会12議員(定員89)、堺市議会7議員(定数52)だ。橋下人気にあやかって「大阪維新の会」に鞍替えした自民党議員が多い。だが、それでも今回の選挙で過半数を占めるのは容易なことではない。もちろん過半数を制すれば、地方政治に地殻変動を起こす可能性がある。とは言っても大阪次元の話であって、全国的なものではない。
 橋下知事の「大阪都構想」は、一言でいえば大阪府を東京都のようにしようというものだ。政令指定都市である大阪市と堺市、さらに周辺9市を加えた11市を人口30万人規模の計20の特別区に再編し(大阪市24区は8~9区に)、各区に公選区長と議会を設置する。これまで大阪のトップには府知事と市長がいたが、都(府)知事1人にすることによって政策決定を迅速に行い、行政運営の効率化をはかる。「大阪の指揮官を1人にすることで、大阪の都市機能が強化でき、世界の都市と戦える」(橋下知事)というのがその理由である。この実現にはハードルは高い。府議会や大阪・堺など周辺市議会でそれぞれ過半数の賛成が要る。そのうえで国会に「大阪都」特別法の制定を求め、ここで過半数の賛成を得られれば、憲法の規定に従って府民による住民投票で賛否を問うことになり、賛成多数となれば、晴れて大阪都が実現する。特別法ではなく地方自治法での改正を目指すなら、政令市はすべて東京都のように特別区に改めるよう同法を改正する方法もある。いずれにしても国の議論を経なくてはならない。

「大阪都構想」では地方自治の全体像が見えない

確かに、都道府県と政令市の「権限」が重複していたり、わかりづらいのは事実だ。政令市は基本的には都道府県が行う事務のほとんどを独自に扱え、都道府県と同格とされている。だが、独立しているわけではなく、あくまでも都道府県に包括されており、その影響力を完全に排除できない。
 例えば、政令市は養護老人ホームや特別養護老人ホームの設置の許可・監督を行うが、介護老人保健施設の開設許可は都道府県の仕事だ。橋下知事は都市開発を問題視しているが、確かにこの分野の線引きはややこしい。都市計画区域の指定や市街化区域・市街化調整区域の都市計画決定は府が行うが、広域的な都市施設の都市計画決定や市街地開発事業の都市計画決定は政令市が行う。このように権限が複雑で、二重権力的な側面が否めない。それで改革を進めたい橋下知事にとっては、大阪市の反対で施策がしばしば立ち往生するので大阪市は抵抗勢力に映る。府議会も抵抗勢力だ。大阪市(266万人)には24区あり(ちなみ東京都区は884万人で23区)、府議会議員はその区単位の選挙区で選ばれるので、3000票余で楽々と当選する。それで議員は大阪府全体の大局に立たず、一部有権者の利益ばかりを追い求め、大阪市に肩入れしていると橋下知事は主張する。それが「大阪維新の会」を作った動機だ。
 こうした橋下知事の改革への意気込みは理解できる。だが、大阪都構想では地方自治の全体像が明確に出されていない。現在の地方自治は基礎自治体(市町村)と広域自治体(都道府県)の2層構造となっている。このうち住民サービスはより身近な基礎自治体に担わせ、広域行政や基礎自治体間の調整は広域自治体が担う。それが現在の基本構造である。そこから市町村は住民サービスに応じられる規模が必要とされ、強化策が採られてきた。それが「平成の大合併」で、3232市町村(99年3月)から1760市町村(10年3月)になり、自治体の平均人口は約2万5千人から約6万8千人へと拡大した。

「広域-大阪都-市町村」の3層なのか疑問も

一方、広域自治体は地方分権ともからみ、論議が錯綜している。従来の地方分権論議では道州制導入を前提に基礎自治体を強化する道州制-市町村の2層構造が描かれてきた。民主党政権でいえば、鳩山前首相は道州制が持論だ。だから2000年の衆院選では「10道-1000市」再編をマニフェストに盛り込んでいた。ところが、小沢一郎元代表は元来、「国-300市」を唱えきた。民主党の「地域主権」というスローガンは同じでも、その受け皿は違っていて、さっぱり分からない。では、橋下知事はどう描くのか。広域連合には積極的で、昨年12月には都道府県を越えた全国初の広域自治体「関西広域連合」を発足させた。これには奈良県を除く近畿5府県と鳥取、徳島両県の7府県が加わり、企画、立案などを行う「広域連合委員会」を組織し、各府県議会から人口比で2~5人(人口比)の計20人を「広域連合議会」に送りこみ、ここで広域行政の指針を決める。すでに関西広域連合は兵庫県豊岡市の病院でのドクターヘリの運航や広域防災計画などに取り組んでいる。11年度予算は各府県が分担し、5億円を計上する。将来、関西3空港の一体運営や高速道路の整備計画の統合などを目指すとしており、着実な歩みを始めた。
 だが、このように広域連合の事業が広がれば、地方自治は広域連合(道州)-都道府県-市町村の3層構造になっていく。さらに広域連合が充実していけば、限りなく道州制に近づき、都道府県が果たして必要なのか、疑問も沸いてくる。となれば、わざわざ大阪都を作る必要があるのか。関西広域連合との整合性を考えれば「大阪都構想」はいまひとつ説得力を持たない。仮に橋下氏が大阪市長になっていれば、大阪市への権限の集中を主張し大阪府解体論を掲げたのではないか。そんな疑問も沸く。こういうこともあって大阪の他の政令市を抱える道府県では「都構想」論議はほとんど聞かれない。これは他の道府県でも同様である。

民主党の隠れ蓑とされる各地の「維新の会」

橋下知事と連動しているように見られるのが、河村名古屋市長の動きだ(「今日の視点」1月19日付参照)。河村市長は「中京都構想」を掲げるが、中身は「大阪都構想」とかなり違う。河村構想は愛知県と指定都市の名古屋市の企画・政策部門を一体化して愛知・名古屋を合体させ、強力で唯一の司令塔を作るというものだ。それによって重複行政のムダを徹底的に排除し、市民税と県民税の10%削減を実現するという。これが大阪都構想と違うのは、知事と市長を1人にせず単に「司令塔」としている点である。これなら法改正なしに実現できるが、橋下知事から「2人いれば、強力な司令塔が作れない」と批判され、一時、河村氏は「ワントップで独立させる」と修正した。だが、今は曖昧で、地方政治よりも国政に関心があるようで、トリプル選圧勝の余勢を駆って東京などで「減税日本」の候補者を擁立しようとしている。
 これに対して民主党の支持率凋落に危機感を抱く同党議員(主に小沢グループ)に「維新の会」人気に連動させようという動きが広がってきた。原口一博前総務相は2月21日、「地域主権改革実現のためプラットホーム作り」と称して政治団体「佐賀維新の会」(佐賀市)と「日本維新の会」(東京都)を立ち上げた。これには東国原英夫前宮崎県知事が加わるとの話もある。さらに民主党の小沢グループが動き、東京で民主党の10議員が「東京維新の会」を作った。これでは「維新」の名をもってする民主党隠しだ。政策抜きの統一地方選挙が進行中とはいえ、有権者はその中身を十分に吟味する必要があるだろう。

2011年2月28日

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