思想新聞1999年2月5日号 視点論点
大統領選の争点の一つはミサイル防衛的対応が必要

米リーダーシップ・インスティテュート 会長
モートン・ブラックウェル
昨年11月の米中間選挙では予想に反し、上院が現状維持、下院で共和党が5議席減らした。 私は共和党が上下両院で議席を増すとしても、僅かと見ていた。だが今回の中間選挙は共和党の惨敗ではなく、僅かな後退にすぎない。共和党、保守派は今回の選挙戦術で過ちを犯し、それに対するウェイクアップ・コールだった。
だが共和党は大統領のスキャンダル問題以外に、二つ重要な過ちを犯した。一つは、選挙に対し統一した政策テーマでアプローチしなかったこと。ギングリッチ下院議長は97年初め、法案を通しても大統領が拒否権を行使するので、共和党は議会で多くの法案は審議しない方針を出した。これは過ちだった。重要政策テーマに焦点を絞り、それを中心に共和党議員が結束すべきだった。逆に、クリントン陣営と民主党はいくつかの一貫したテーマを訴え続けたのだ。
もう一つは現在の米国政治プロセスに関わる問題。米国では選挙がプロのコンサルタントにより運営される傾向が強まっている。彼らは、資金集めとテレビ広告購入という単純な二つの活動を中心に選挙戦を戦うパターンを定着させた。昔は選挙戦には戸別訪問やリスト作成などにより有権者が投票日に実際に投票するよう確認するといった地道な組織活動が重要だった。
コンサルタントは、広告代理店の役割を果たし、マスコミから手数料を受け取るが、有権者登録や地区選挙活動をしても手数料を得られない。だから彼らは組織活動より広告を重視し、その如く候補者に助言する。それが大きな問題になっている。テレビ広告は空中戦、有権者への電話や訪問などの組織活動は地上戦のようなもの。今回の中間選挙では民主党が空中戦と地上戦を併用、共和党は空中戦に集中した。それは共和党の戦術の誤りで、反省の材料となっている。
中間選挙での共和党後退が原因で、94年に「米国との契約」で共和党を一つに結束させたギングリッチ下院議長が辞任した。だが「米国との契約」をまとめた立役者はギングリッチだけではない。同党保守派指導部を構成してきたアーミー院内総務、トム・ディレイ副院内総務ら他の役員は再選され、今後2年間に共和党が過去の教訓を生かして態勢を立て直す可能性が高い。
総じて見れば、共和党は極めて健在だ。候補者がレーガンを支えた保守基盤に効果的にアピールすれば、共和党は向こう10年から20年間にわたり米国政治の多数派の位置を保持し続けるだろう。米国では通常、特定政党が新たに多数派になり多数派を長期に維持する時代が100年のうち2、3回訪れる。20世紀では、32年のルーズベルト大統領当選により民主党が共和党に代わり多数派になり、80年まで民主党多数派時代を生んだ。81年から21世紀の初期まで基本的に共和党多数派時代が続くだろう。
2000年大統領選について、民主党ではゴア副大統領、共和党ではジョージ・ブッシュ・テキサス州知事の名が挙がっている。 副大統領が党の大統領候補指名を受けるのを阻止することは、大統領が反対しない限り難しい。その力をもつ単一の組織は労組だが、多分ゴアを受け入れるだろう。大統領はゴアを強く支援してもいるから、民主党側はゴアに絞られる。
共和党側には、党の動向を単独で左右する労組的組織は存在しない。共和党穏健派を代表するブッシュ知事は、圧勝により再選を果たしており、彼が最有力候補と見られている。また父のブッシュ前大統領を支持した人々がブッシュ知事を積極的に推してもいる。
80年大統領選では、レーガンを支持する共和党保守派とブッシュを支持する共和党穏健派が合わさって多数派を形成した。党保守派が懸念するのは、レーガン・リパブリカン(レーガンを支持した共和党保守派)の一部の支持を受ける候補者が多く、保守派の票が予備選段階で分裂すること。予備選プロセスで早い時期にある候補が優勢になれば、勝ち馬に乗ろうとその候補支持に雪崩的に動く可能性があることだ。
共和党予備選で1位がブッシュで40%台、2位が20%台という得票が続けば、共和党保守派もブッシュに動くだろう。共和党内のあらゆる勢力を一つにまとめるのは容易ではない。レーガンのような「偉大な意思疎通者」はまれにしか出現しないが、彼ほどといかなくても、なによりもこの保守革命路線を維持できるパワーと個性が必要とされるだろう。
次期選挙では、共和党候補はレーガンが打ち出した保守政策の多様な側面を争点にしようとするだろう。小さな政府、民間企業主導の自由経済、強い国防、伝統的価値などだ。社会保障システムの改革も大きな争点になる。また政府の医療保険制度の改革、医療貯蓄基金の設置、ミサイル防衛システムの必要性なども争点になりうる。
(月刊PAX2月号より 文責=編集部)


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