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小泉改革 2002年、日本再生へのラストチャンス

思想新聞2002年2月1日【1面】 

天佑を生かし有事態勢の確立を

小手先の改革論を避けよ

 小泉改革の正念場となる2002年。今年こそ日本再生のラストチャンスだ。通常国会の幕開けとともに本格的論戦が始まったが、骨太な国家ビジョンはあまり語られず、論議はもっぱら景気回復という経済問題に偏重している。

 むろん、「聖域なき構造改革」による日本経済の抜本再生策の実行は不可欠である。だが、日本の抜本改革といえば、憲法、安全保障、教育といったいわば国家の大黒柱の再生を抜きにしてあり得ないはずだ。

 昨年秋の米国同時多発テロ、そして暮れの不審船事件などを通じて国民の意識は確実に変化してきている。小泉首相は日本の国家改革の好機を逃すべきではない。

 昨年秋の米国同時多発テロ事件、そして暮れの不審船事件を受けて、国民の安全保障観が大きく変化した。 毎日新聞(1月21日付)の世論調査によると、「有事法制」について61%の人が「必要だ」と考えており「不必要だ」の20%を大きく上回った。さらに必要派のうち46%が「有事法制整備を急ぐべきだ」と答えており、「急ぐべきでない」の13%を圧倒した。不審船事件の対応でも「自衛隊が対応すべきだ」が44%で、「海上保安庁の対応で十分だ」の41%を上回っている。 明らかに国民は有事法制整備と安全保障態勢の確立にゴーサインを出しているのである。こうした国民の意識変化を受けて小泉首相は今国会で一挙に有事法制整備をはかるべきといえる。

 日本が国際社会で誇るべき位置を占め、世界の平和と安全を守る一翼を担っていくには、安全保障面でのグローバル化が不可欠といえる。

 第一には、国連平和維持(PKO)協力法のさらなる改正である。昨年秋の臨時国会でPKO協力法は・国連平和維持軍(PKF)本体業務を行う・参加五原則のうち自衛官の武器使用の基準を緩和する、の二点が改正された。だが、これでも不十分である。テロ撲滅は「国際社会の共通課題」で、国連を舞台にテロ対策が今後も進められる。日本がここで貢献するにはPKOの国際基準からかけ離れた五原則の全部を撤廃し、武器使用は国際法に基づく常識的レベルに変更し、さらなる緩和策を講じなければならない。

 第二には、国連憲章が明記している集団的自衛権を行使できるように政府の憲法解釈を早急に改めることだ。国連憲章51条は個別的、集団的自衛権を国家固有の権利としてその行使を認゚ている。憲法は自衛権を保有しているとしており、集団的自衛権行使は合憲である。政府は違憲とする憲法解釈を早急に改め、日米安保条約を実効性あるものにしなければならない。

 このした国際社会では当然の政策を確立したうえで、第三には安全保障態勢の確立へ防衛庁の国防省昇格、有事法制整備立を行うべきだ。安全保障を担当する官庁が総理府の外局というのは他国では例がない。防衛庁を国防省に昇格し、確固たる安全保障体制を構築し、それに伴って安全保障体制に抜け落ちている諸体制、すなわち有事法制、安全保障基本法、スパイ防止法などの法整備に取り組まねばならない。

 当然のことながら、こうした改革を断行するには、テロ特措法の国会論議で小泉首相自身が述べていたように「憲法との隙間」があることを否めない。小泉首相は総理就任会見で改憲を明確に打ち出したが、それ以降、沈黙を守っている。憲法を時代に合わせて刷新することから逃避すべきではない。それが真の「聖域なき構造改革」であることを小泉首相は今年こそ明確にすべきだろう。

 ブッシュ米大統領は大胆な安保戦略の変更を推進している。昨年12月にブッシュ大統領の弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から脱退することを正式に通告、「恐怖の均衡」とされた相互確証破壊(MAD)体制を崩壊させ、新たに本格的にミサイル防衛網態勢の構築をめざす。こうした米国の大転換に日本がどう応じていくのか、いまだ小泉政権は姿勢を明らかにしていない。 日本が米新戦略に応え日米同盟関係の強化を図るには、前記の改革を成し遂げねばならない。 だが、通常国会での安保論議は重箱の隅をつつくような次元に終始しそうだ。 有事法制について政府は、有事の基本理念や法整備の全体像を定めた「安全保障基本法」(仮称)と、防衛出動発令時に自衛隊が円滑に行動するための自衛隊法改正など関連法案の一部を一括して今国会に提出する方針を固めたと伝えられる。与党との調整を急ぎ、2002年度政府予算成立後、できるだけ早い段階での提出を目指すとしている。 だが、憲法問題では公明党が反対しており踏み込まない体たらくである。1月23日に自民、公明、保守の与党三党は国会内で「国家の緊急事態に関する法整備協議会」(座長・山崎自民党幹事長)の初会合を開き、具体的な検討に着手した。だが、自民党内には「有事の問題の対策は、よく注意しないと近隣諸国にいらざる心配を与えることがある」(野中広務・元幹事長)との慎重論も根強く、紆余曲折は避けられそうにない。 同協議会では不審船対策については、領域警備とテロ発生時の警察、海上保安庁の活動を含めた対応についても法整備の検討を行うとしている。ここでも問題は、国際法(国連海洋法条約など)に基づく対応態勢が確立できるかにかかっている。

 国際法では、「無国籍船」に対しては領海、公海を問わず、海軍(日本の場合は海上自衛隊)と沿岸警備隊(同、海上保安庁)に臨検を認めており、これを拒否して逃走した場合は停戦させるための船体射撃ができ、その船体射撃で相手船舶に死傷者が出ても責任は問われない。にもかかわらず、日本の国内法にはこの国際法に対応する法整備が不備だった。 だから、これを整備するために自衛隊に領土・領海・領空を警備する任務を与える「領域警備法」を制定し、常日頃から海上自衛隊と海上保安庁の連係プレーを可能する法整備をしておく必要がある。だが、ここでも「近隣諸国に配慮」して法整備に反対する声が与党内にある。 要は小泉首相が日本の安全と平和を守る決意を固め、果敢に「聖域なき改革」に当たっていくかである。

●犯罪、離婚が戦後最高社会崩壊現象をくい止めよ

 日本はいま、未曾有の社会的崩壊現象を呈している。 その一つが治安悪化と検挙率の低下である。1月21日に警察庁がまとめた2001年の1年間の刑法犯は273万5612件で前年より約29万2千件も増加し過去最高を更新。検挙率は過去最低だった前年をさらに3.8%下回る19.8%で戦後初めて二割を割り込んだ。治安は戦後最悪の状態になってきていることを物語っている。国内の「安全神話」は完全に崩壊しているのである。 第二には、家庭崩壊が著しく進んでいることだ。昨年末に公表された厚生労働省の動態統計の年間推計によると、昨年の離婚件数は前年より2万5千組増加し、28万9千組に達する。これは1分49秒に1組の割合で離婚していることになり、離婚発生間隔が初めて2分を切った。人口1千人あたりの離婚率も2.3と前年の2.1を上回り、組数とともに過去最高。実に年間の離婚件数は80年の2倍にもなる。 わが国の家庭崩壊がいよいよ来るところまできた感が強い。こうした家庭崩壊によって「家庭の教育力」が急落し、非行、幼児虐待、いじめ、不登校など少年をめぐるさまざまな問題が噴出している。とりわけ少年非行は深刻で凶悪犯罪が相次ぎ今や「第四次多発期」(警察庁)に突入している。 こうした社会崩壊現象に小泉政権はあまりにも鈍感であるといわざるを得ない。 たとえば一昨年、教育改革国民会議は教育再建策として「十七の提案」を打ち出し、その第一に「教育の原点は家庭であることを自覚する」を据えて、家庭の重要性を喚起し、森前政権はこれを踏まえて教育基本法改正を政策課題の柱の据えた。 だが、小泉政権は改革から教育改革を排除し、もっぱら経済財政問題にかかりきりになっている。教育改革は橋本政権時代からの自民党の懸案事項のはずで、森前政権の政策を踏襲する小泉政権も重要施策にするべきだ。昨年12月に文部科学相が教育基本法改正問題を中教審に諮問したが、あまりにも対応が遅い。 家庭崩壊をくい止め、教育改革を断行し、治安体制の再構築を図ることは国家の基礎を固める上でもっとも重要な基本施策である。かつて自民党は「家庭基盤の充実に関する対策要綱」を作成(79年)し、教育はもとより、福祉や住宅、税制などさまざまな分野で家庭基盤の充実をめざす施策作りを模索したことがある。こうした家庭重視策は80年代のバブル経済のカネ中心主義によって吹き飛んでしまったが、その結果、今日の家庭崩壊現象を招いたといえる。 小泉政権こそ「米百俵」の精神で家庭、教育、治安の再生に当たるべきである。

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