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検証・『第2次人権報告書』〔後編〕

思想新聞2002年8月1日【視点論点】


高麗大学名誉教授
申 一澈

「非常時政治」と人権の制限

 北朝鮮の第2次人権報告書は、第四条「国家非常時の人権の制限」を乱用し人権保留・制限の建前として打ち出している。これは、北朝鮮憲法第103条によると、国防委員会が「国の戦時状態と動員令を宣布する権限を持つ」と明示しており、北朝鮮の国防委員会支配の軍事独裁体制であることを想起させている。
 50余年間、北朝鮮体制は「全人民の武装化、全国土の要塞化」など4大軍事路線を掲げ、兵営国家型の鎖国政策で1人独裁を合理化してきた。
 しかし報告書で、北朝鮮で戦時状態は1950年5月の戦時状態と53年の戦時動員撤回の韓国戦争時期以外には、戦時状態を宣布したことがないと記述するが、これは事実と符合しない。
 例えば1993年、北朝鮮のNPT脱退宣言の際、「全国、全人民、全軍に準戦時体制を宣布」との最高司令官令を発表した。
 北朝鮮の人権に関する報告書には実体とは相反する記述が多い。例えば、「強制労働はなく社会のための愛国的労働がある」だ。北朝鮮では広大な土木建設工事が主に軍隊の労働力を動員する労賃搾取型であることは、広く知られている事実。国連人権理事会の「公共作業場での強制または義務労働」の問いに、北朝鮮は「公共作業場は主に人民軍隊が多く行っている」とし強制徴兵や良心的兵役拒否はないとした。だが脱北者同志会は、北朝鮮軍の服務期間が13年に延長されたことが最も深刻な人権蹂躙だと指摘。
 北の体制によるさらに深刻な人権蹂躙は、出身身分、忠誠度、いわゆる「党性」などを評価基準とする「人類の分類」の罪人間的統治方式から始まる。同報告書の「法の下の平等」条目では48年9月、北朝鮮政権樹立を前後し北朝鮮公民を「労働者・農民・小市民」などの出身成分に分類する北朝鮮版カースト制度を施行した事実を隠蔽している。特に韓国戦争後、58年から北朝鮮公民の住民登録事業で3階層64部類に公民を分類して人間平等の不平等を各種行政施策に反映した。つまり、核心階層(統治層)、動揺階層(基本群集)、複雑階層(敵対階層)と、3大階層64部類にまで細分したものだ。アジア監視委員会とミネソタ弁護士国際人権委員会の北朝鮮の人権に関する報告書(88年)もこの忠誠度による「3階層分類の階級制度」を告発している。
 また同報告書には、北朝鮮では憲法(72年)により「階級的対立と人間による人間の全ての搾取と逼迫が永遠になくなった」と記述される。だが、北朝鮮では今日なお階級闘争を鼓吹している。
 北朝鮮労働党規約前文に「プロレタリア独裁を実施」とあるのも、ほかならぬ北朝鮮人民への独裁的統治の正当化だ。この教条により政治犯収容所、強制労働など北朝鮮版「収容所群島」が、まだ地上に残っている。
 この北朝鮮の報告書とUN人権理事会の質疑応答で北朝鮮側回答の真実性を疑わせる記述がたくさんある。中でも、「8・15民族解放」が「我が朝鮮人民軍を核心とした全人民的抗戦によって勝利した」と北朝鮮内の思想教育資料で虚偽の史実をそのまま採用する。韓半島の8・15解放が38度線以北地域ではソ連軍進駐によるのが事実だが、北朝鮮はUNへの公式回答でも、虚偽捏造された歴史記述をためらわずに書いている。45年8月15日に「朝鮮人民軍」は存在しておらず、旧満州にも28年のコミンテルンの「一軍一党原則」により、中国共産党以外の他の国の党組織・軍はありえなかった。「8・15」時、北朝鮮地域で人民的抗戦もなかったことは明らかな事実だ。この史実の捏造のため、北朝鮮の人権報告や応答の信憑性が地に落ちた。
 北朝鮮指導部が国際人権規約に加入し、その規約により、第2次定期報告書の提出に対しては、その報告内容の審議や信憑性に多くの疑問があるものの、北朝鮮の人権改革に貢献できる時期が近づいたと評価される。
 しかし、この報告書はその信憑性を保証するために必要な北朝鮮の人権の実状に対する透明性のある検証とモニタリングを防ごうとする盾だという印象を持たせる。
「6・15南北共同宣言」以後、北朝鮮の金正日総書記は、全面的な新聞・放送の開放ではなくても、南北韓で新聞・雑誌を板門店で交換するということに同意した。しかし、さる2000年10月に南北韓が板門店で各70部ずつの新聞・雑誌を交換して5日で北朝鮮側が一方的に、その交換を中断すると通告した。このような小さな象徴的な事件でも大きな衝撃を受けた。北朝鮮の人権改善のための道は、このように閉ざされた北朝鮮社会を覗き込むことができ、人権不毛を推察できる情報の窓口をどのように開くのかという問題が、北朝鮮の初歩的な人権改善のためのカギだ。(第3回北朝鮮人権と難民問題国際会議から、文責・編集部)

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