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「自己抑制」でエイズ感染は激減する―下

思想新聞2003年7月15日号【視点論点】

問題の国連エイズ政策

駐日ウガンダ大使 ジェームズ・ババ氏

 ウガンダでは相互扶助の大家族的な伝統もうまく機能した。誰かが病気になれば家族が力を合わせてその人を助ける。その過程でエイズに関する情報や感染を回避するための教訓が広まった。政治的指導力と大家族的伝統の二つが成功の要因だ。
 またエイズ防止には、夫婦間の貞節と道徳を教えるキリスト教的価値観が大きく寄与した。ウガンダでは人口の6割がキリスト教徒で、彼らは教会に通い深い信仰を持ち、教会指導者の発言によく耳を傾ける。教会の重要な役割の一つは、人々に道徳的生活を教えることだ。道徳に外れた生活は神に対する罪であり、婚外の性交渉を持つことは、神に反逆する罪である、と。
 コンドームを使ってエイズ感染を防ぐ方式は極めて早い時期に始まったが当初、教会との間で問題が生じた。コンドーム使用は人々に放縦な性生活を勧めると、特にカトリックが反発。コンドームで感染が減るとされ教会も反対しなくなったが、公然と支持しない。教会では婚外セックスは姦淫であり、罪であると教えている。神に罰せられることを人々は恐れるので、宗教はエイズ予防に大きな役割を果たしている。
 アフリカでは一般的に家庭での女性の地位が低く、夫の欲求を妻が拒めないのでエイズが拡大したとの見方もあり、それは一部当たっている。アフリカには、結婚のときにダワリ(持参金)を払う習慣がある。別の社会では花嫁の両親へ敬意を表するという意味だが、ウガンダ社会では両親に金を払って女性を買い取り、財産として所有するという意味があった。もちろん、われわれは現在この習慣をなくすよう闘っている。今では教育を受けた女性はこの習慣に従わず、ダワリを行わない家庭も増えている。一夫多妻制は今も存在するが、エイズによって、次第に昔の慣習になりつつある。
 キリスト教の教会法は一夫一婦制を推進し、一夫多妻を禁止している。だから二人目の妻との結婚を教会で祝福してもらおうとしても受け入れられない。しかし、地方では一夫多妻を実践している人はまだ存在する。国家の法においては、一夫多妻は慣習法として容認されている。
 ウガンダの古い伝統では、処女を失った女性は結婚できなかった。女性の婚前交渉は禁止されていた。このような伝統は都市部では失われているが、地方では今でも生きている。セックスは結婚して初めて許されるもので、セックスの目的は子孫の繁殖だけに限定されていた。ウガンダでは人口の八割が地方に住み、都市部に住む人々も、クリスマスや復活節には田舎に帰るなど、自分の出身地と強いつながりを持っている。
 ウガンダ国連大使として国連では、エイズについてよく議論した。国連エイズ計画(UNAIDS)が始まった時、その組織を立ち上げるための交渉に携わった。その頃、国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(ユニセフ)、国連人口基金(UNFPA)など複数の国連機関がエイズの問題を扱っており、人的資源が分散していた。これをまとめ一つの機構にしようとしたが、非常に困難だった。どの機関も自分のスタッフを守ろうとしたからだ。しかし、国連加盟国がエイズの問題を専門的に扱う一機構を作ることを強く要請し、UNAIDSが誕生することになった。
 国連は開発途上国を含む多くの国の代表者から成り、エイズ問題を扱うにはどの組織よりも適任だ。国際的な支援を動員でき、優れたスタッフを有している。しかし、問題は資源の不足だ。彼ら自身には予算がなく、プログラムの実行を加盟国に依存している。
 国連のエイズ予防は、コンドームを強調し過ぎる傾向はあるが、大事なのは国連とは我々ウガンダであり日本であるということ。私たちが同意したことが国連によって行われる。国連の各機関は加盟国の代表によって構成される運営会議を持つ。国連事務局は加盟国によって決定されたことを実行するだけだ。自己抑制はエイズ予防における優先事項の一つであるはずだ。なぜなら、それは道徳的にも理に叶っており、もし受け入れられるなら、最も経費のかからない戦略だからだ。コンドームを推奨すれば、その配布に経費がかかる。
 安価に生産されたエイズ薬のコピーの配布は、まだ実験的に行われているに過ぎず、明確な結果は出ていない。ウガンダやタイはその実験を行っている国の一つ。結果が出るまで粘り強く試してみる必要がある。製薬会社が薬を安価で提供する協力も必要。特に三種組み合わせの薬は非常に高価で、入手できない人が多い。薬のコスト問題は非常に大きなネックだ。ウガンダの場合、製薬会社がよい薬を開発するための調査費用を得るために一定の利益をあげなければならないので、無料で薬を配布することはしていない。(取材・協力=世界思想、文責・編集部)

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