思想新聞2001年8月1日 【主張】
北京五輪が独裁崩壊への序章
さる7月1日、中国共産党は創立80周年を迎えた。その共産党政権下で中国は、飛躍的な経済成長を遂げつつあり、21世紀の大国へと歩を進めている。さらに2008年の北京五輪の開催も決まった。はたして共産党政権は未来永劫に繁栄していくのだろうか。答えはノーである。共産中国の実態をしっかりと見据えておく必要があるだろう。
「民権」の理想を踏みつぶす共産党
中国人の理想は、清を打倒してアジアで初めての共和国を樹立した孫文の唱えた「独立」「統一」「富強」「民権」とされている。
たしかに中国共産党はこの目標のいくつかは実現したといえる。列強支配から脱する「独立」は蒋介石がやり遂げ、毛沢東がそれを継いだ。「統一」は香港、マカオを返還させ、残すは「台湾」だけとなった(と共産党は主張している)。そして「富強」はト小平が「改革・開放路線」で道筋をつけ、現在もこの路線をひた走っている。
1952年当時679億元だった国内総生産(GDP)は昨年は8兆940億元へと飛躍的発展をなし遂げ、世界第7位の経済力を誇るまでに至っている。共産党政権は2010年までにさらに倍増させると息巻いている。過去20年間の経済成長率が年平均9%台という高さを維持しており、この目標も実現できるかも知れない。
このように見ると92年の共産党第14回大会で打ち出した「社会主義市場経済体制」が着々と成功しているかように見受けられる。だが、それは致命的な矛盾を抱えての”成功”であることを見落としてはならない。
その最大の矛盾は経済面で改革・開放を行っても、政治面での改革をまったく行っていないことである。市場経済原理(民主化)を導入して経済成長を図っても、これを政治面に波及しない限り、経済と政治の矛盾はにっちもさっちもいかない状況へと中国を追い込んでいくこと必定である。
いまなお中国は、世界で希有な選挙で政権が選ばれることのない独裁国家である。それも共産党という一政党による独裁であり、中国人民解放軍は共産党の軍隊であって国家の軍隊ですらない。軍は現在、徹底した共産主義思想教育を展開しており、「国軍化という誤った思想」(張万年・中央軍事委副主席)を排除するために躍起となっている。
中国という国家は共産党の一党支配下に置かれており、三権分立もなかれば、法治もない。あるのは共産党員による人治だけである。古今東西、独裁政権が腐敗しなかった例は皆無である。中国共産党もそれにもれず、共産党員の腐敗は醜悪なまでに拡大している。共産党員の物質至上主義と拝金主義は国民全体を覆い尽くそうとしているのである。
つまり、孫文の掲げた「民権」の理想は大陸には実現していないどころか、共産党は将来にわたって「民権」を排除しようと企てているのである。こうして見れば中国共産党に中国を支配する「大義」が存在しないことは歴然としていよう。
7月1日の共産党創立80周年記念式典で江沢民主席は「三つの代表」論を徹底するよう訴えた。「三つの代表」論とは共産党が【1】先進的な生産力の発展【2】先進的な文化の方向【3】広範な人民の利益、を代表するとの理論で「広範な人民の利益」の代表ということで、私営企業家らも共産党員に取り組もうとしている。労働者階級の前衛党だけでは共産党は中国支配を続けていくことが不可能になってきたからである。
現在の共産党員は6450万人(全人口の5.2%)だが、ここに私営企業家も取り込もうというのだが、こうした人々の大半は政治の民主化によって人治から法治への転換を願っている。私営企業が成功しても共産党の人治によって、いつそれが略奪されるか知れたものではないからである。
このように矛盾が桎梏化していく中で中国は今年末にWTO(世界貿易機関)に加盟し、いよいよ全球化(グローバル化)にさらされることになる。そして2008年の北京五輪の開催が決まった。
言うまでもなく五輪憲章は民主主義をうたっているおり、この理念は共産党独裁の中国を牽制することは間違いない。カラードIOC(国際オリンピック委員会)事務総長は「北京五輪は中国の重要な問題である人権の改善を国際社会が期待していることを意味する」と明言している。共産党は北京五輪を国威発揚の場として最大限政治利用を図ろうとしているが、両刃の剣となって民主・人権を中国に迫ってくることになるのだ。 ダライ・ラマ十四世は「北京五輪までにチベットの人権状況が改善されることを期待する」と述べ、人権改善への国際社会の圧力が高まることを望んでいる。いまや五輪は情報公開、報道自由の代名詞でもある。
市場経済化のさらなる発展と北京五輪の開催は中国共産党独裁政権の終焉への着実な一歩となるだろう。


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