国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

WTO加盟後の中国 矛盾を抱え市場原理に晒される

【思想新聞2002年3月1日】ニューススコープ

党独裁の問題 浮き彫りに

 中国は昨年、二つの大きな出来事を体験した。一つは念願の世界貿易機関(WTO)に加盟して国際経済への仲間入りを果たしたこと。もう一つは米国同時多発テロ事件を通じて中国内にもテロを招く要因が数多く潜んでいると気付いたことだ。中国経済はWTO加盟以後、ますます台頭していくことは間違いないないが、失業者増や貧富の格差、地域格差などのさまざまな矛盾を抱えたまま世界的な市場原理にさらされることになる。それゆえに経済改革が一段と迫られることになり、それが政治改革へと波及するだろう。共産党は今秋に第十六回党大会を開催し江沢民主席・・朱鎔基総理が引退、「第四世代」の指導部にバトンを引き継ぐが、はたして矛盾を克服できるだろうか。

 中国経済は質量ともに驚異的な伸びを示している。かつて中国製品は値段の安い粗悪品の代名詞だったが、現在ではこうした見方は当たらない。東南アジアに比べて賃金が四分の一という強みを背景に、高品質・低価格製品を生みだし、国際社会の中で一段と競争力をつけた。

 WTO加盟によって対外開放が迫られ国際市場の荒波にさらされるが、それが逆に国際競争力を強める改革を余儀なくされ、結果的に中国経済は強くなるというのが中国の読みである。

 具体的にはWTO加盟で中国は鉱工業製品の関税引き下げや外資規制の緩和、外資企業を初め中国在住企業が自由に貿易できる権利を拡大するほか、輸入割当など非関税障壁など広範囲の分野で改革を迫られることになる。それによって市場経済化に拍車がかかり、産業構造を高度化して中国経済は一段と強まるというわけである。

 WTO加盟で中国の国内総生産(GDP)は毎年、約3%伸び、新たに毎年1176万人の新規雇用が生まれると当局は計算している。その結果、「2015年には中国経済は日本経済を凌駕する」(ロバート・サッター米ジョージタウン大学教授)といった見方が有力である。

 こうした上げ潮の中で2008年に北京オリンピックを開催し「21世紀の大国中国」を演出し、さらなる飛翔を目指す――中国共産党が描くバラ色の未来である。さる2月21日、訪中したブッシュ米大統領と会談した江沢民主席は「国民の生活水準を上げるのが最も重要な任務であり、平和な国際環境が必要だ」と記者会見で語ったのも、そうしたシナリオが念頭にあるからだ。

 だが、はたしてシナリオ通りに中国は21世紀の大国になりうるだろうか。

 まずバラ色の未来に立ちはだかるのが、国有企業問題である。1989年に総理の座についた朱鎔基氏は「3年で国有企業改革を実現する」と豪語したが、改革はとん挫している。国有企業の赤字は膨らみ続けており、WTOの波に襲われて結局、倒産し失業者が増大するという悲観論が根強い。WTO加盟によって都市と農村、沿海と内陸の地域格差を一層拡大していくのも間違いない。

 経済改革は経済部門の改革で済ませるわけにはいかず、行政改革そして早晩、政治改革を余儀なくされるようになるだろう。経済だけが競争原理で政治は独裁原理という矛盾が露わになり、共産党一党独裁体制にほころびが生じることは避けられそうにない。

 ブッシュ大統領は二月の訪中で、中国の抱える問題点を穏和な表現だが、的確に指摘した。「中国国民を含む世界中の人々は生活、信仰、労働について選択の自由を持つべきだ。米国は一層の繁栄と自由に向かって歴史的な変容を遂げる中国の安定的なパートナーとなるだろう」と。

 米国議会が九九年から発足させた「国際宗教自由委員会」のマイケル・ヤング委員長(ジョージワシントン大学院学長)は2月13日、米下院国際委員会国際活動・人権小委員会で報告し「中国政府の宗教と信仰の自由への配慮はここ数カ月、さらに減少した。中国当局は最近もキリスト教福音教会、カトリック教、チベット仏教、ウイグルのイスラム教、法輪功などの宗教界、信仰界のメンバー多数に対し国際合意に反する形の弾圧、抑圧を加えた」と証言している(産経2月14日)。

 経済成長は沿岸部と他の地域の貧富の格差を一段と広げているが、それら貧しい地域には多数の少数民族が生きている。漢人は人口の90%以上を占めているものの、中国には55の少数民族が存在し、新彊ウイグル自治区(イスラム教)やチベット自治区(チベット仏教)など実に国土の65%が少数民族が占めているのである。ここにテロ事件の脅威が迫っているのだ。

 米国同時多発テロ事件で中国がいち早く米国支持を打ち出したのも、こうした地域でしばしば発生するテロ事件を封じ込め、これを米国が人権擁護などと批判させない狙いからだ。しかしWTO加盟によって開かれた中国社会を目指せば、少数民族も独立問題や宗教の自由要求が出てくることは想像に難くない。

 共産党一党独裁の矛盾はすでに腐敗問題を通じて一段と拡大している。WTO加盟後この矛盾はさらに広がるだろう。共産党は昨年9月に開いた六中全会(中央委員会総会)で「党作風(活動態度)の強化と改善に関する決定」を採択。こうした採択が必要なほど共産党の腐敗・汚職が猛烈な勢いで浸透しているのだ。

 腐敗の原因は「人治」がまかり通っているからにほかならない。WTO加盟によって「法治」への転換が迫られるが、絶大な権限を独り占めする共産党員に市場経済に不可欠な公平、公正なルールづくり(法治)を求めるのは泥棒に縄を作らせるようなものだろう。

 WTO加盟後の私営企業の広がりに対応するため、第十六回党大会では江沢民総書記が提唱した新指導思想「三つの代表」論を採択する予定だ。「三つの代表」論とは、共産党が【1】先進的な生産力の発展【2】先進的な文化の方向【3】広範な人民の利益の3つを代表するとの理論で、「広範な人民の利益」の代表ということで私営企業家らも共産党員になれる道を開く。もはや共産党は資本家(私営企業家)を党に取り組まない限り安定独裁政権が維持できない状況になっているといえる。

 共産党大会では私営企業家を取り込んだ上で、70歳代の江沢民主席や李鵬全人代委員長、朱鎔基総理らが引退、胡錦涛副主席や温家宝副首相ら50~60歳代前半の「第四世代」に21世紀の共産党独裁政権を託すことになる。だが、米同時テロ事件以降、独裁体制維持の不安から江主席が軍事委主席の座を手放さず、国家主席も李鵬委員長が就任するといった情報も飛び交っている。

 また3月に開催される全人代(国会)ではブッシュ米政権の軍事費増強に対抗し一層の軍事費増を決めることになるだろう。軍事費は89年の天安門事件以降、昨年まで13年連続で前年比2ケタ増という大増強を続けてきたが、「ハイテク化による戦闘力の増強」(江沢民主席)に加えて国内テロ対策費を新たに盛り込むものと見られる。

 訪中したブッシュ大統領は「台湾」で強硬姿勢を貫き「台湾関係法堅持」を表明、中国の武力侵攻にクギをさした。当然、これは中国軍部を刺激し、「米国の干渉」を口実に軍部は軍事増強をさらに求めているとされる。

 いずれにせよ、中国経済の発展に比例して軍事増強が図られるところに一党独裁国家の問題点が浮き彫りにされている。WTO加盟によるグローバル・スタンダードの導入によっても、この姿勢は何ら変わらないだろう。そして経済成長は独裁の矛盾をも成長させていくことになるだろう。

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