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林東源大統領特使が北朝鮮訪問 再び動き始める韓半島

思想新聞2002年4月15日【1面】

原則重視の日朝外交貫徹を
米の核戦略体制見直し奏功か

4月4日、北朝鮮の百花園招待所で林大統領特使と会見する金正日総書記を写真で報ずる韓国「中央日報」の日本語サイト

 韓国の金大中大統領特使として、林東源・大統領外交安保統一特別補佐役(2度の統一相経験者、昨年9月に退任、以下大統領特使)が、去る4月3日より6日まで訪朝した。韓国政府の呼びかけに金正日総書記が応じるかたちで実現したものである。
 対テロ戦争勝利を掲げて突き進む米国が、「悪の枢軸」三国の一つとして北朝鮮を名指ししたのが、1月29日。さらにブッシュ大統領による日本、韓国、中国歴訪(2月17日~22日)にいたっては、外堀、内堀を埋められるかのような圧力を感じたことだろう。林東源・大統領特使訪朝を機に南北間交流が再び動き出そうとしている。今後のアジアと世界を展望してみる。

 南北当局者対話の開催は昨年11月、北朝鮮の金剛山で開かれた第6回南北閣僚級会談が決裂して以来、約5カ月ぶりのことである。決裂の理由は、北朝鮮側が、米国同時多発テロ直後の韓国内「警戒態勢」が北朝鮮を敵視するものであり、その解除なくしていかなる合意もあり得ないとの姿勢をとったためである。
 今年に入り北朝鮮を取り巻く環境は困難なものとなる。最大の原因は米国である。対テロ戦争勝利を目指す米国の「覚悟」が半端なものではないことが明白になってきた。第2のテロ、それも本土をねらうテロを阻止するため、「戦時下」の意識で取り組んでいる。
 米国が想定する第2のテロは「大量破壊兵器」を用いるものである。核、生物、化学兵器の使用は、瞬時にして数万から数10万人の犠牲者を生む可能性を秘めている。「悪の枢軸」と名指しされた国々はいずれもテロリストに対して大量破壊兵器を渡す可能性があると米国は認識している。特にイラクは喫緊の措置を要する国と位置づけられているが、その理由は二つ。それは、「9・11」を英雄的行動と賛美した唯一の国であることと98年より国連による査察を一切拒否していることである。「戦時下」の国・アメリカとしては看過できない。米国にとって北朝鮮の位置づけは「次」というところだろうが、「世界最大のミサイル輸出国」(ライス特別補佐官)である現状を、これも看過できない。
 北朝鮮の米国への反発は日増しに激しさを増していった。2月22日付「民主朝鮮」の論説で「真の悪の枢軸は米国、イスラエル、日本」と述べ、「朝鮮中央通信」には「我々の制度を認めず、侵攻の口実を探すためのブッシュ政権が提唱する対話は必要なし」と断言したのである。
 しかし、3月半ばに入り北朝鮮の態度に変化がみられるようになった。13日にはニューヨークにおいて米国務省のプリチャード・朝鮮半島和平交渉担当特使と朴吉淵(パク・キルヨン)国連駐在北朝鮮大使とが会談し、今後大使級会談を継続することを確認。さらに昨年12月に起きた奄美大島沖「不審船事件」以後、一方的に中止を宣言していた日本人「行方不明者」調査(「拉致」事件調査)再開や日朝赤十字会談開催を24日に提案している。翌25日午前、韓国大統領府は、林東源・元統一相が4月第1週に金大中大統領の特使として北朝鮮の平壌を訪問すると発表。29日には従来の立場を一転して「米国との約束を守って行く」とし、今月3日には、先月中断された韓半島エネルギー開発機構(KEDO)との対話再開を宣言したのである。
 変化の原因の一つは3月9日(米国時間)にあるように思えてならない。その日、米紙ロサンゼルスタイムズは、ブッシュ米政権が軍に対し、ロシア、中国、北朝鮮、イラク、イラン、リビア、シリアの少なくとも7カ国を対象とした核攻撃のシナリオ策定と、限定的な核攻撃を想定した小型の戦術用核兵器の開発を指示したことを報じたのである。1月に国防総省が連邦議会へ送付した八年ぶりの「核戦略体制見直し報告」(NPR)の機密部分に基づいた内容であった。
 同紙によると、新たな計画では、【1】通常兵器で破壊しきれない標的への攻撃 【2】核・生物・化学兵器攻撃に対する報復 【3】突発的な軍事情勢――での核使用の可能性を列挙。特に、地表を深く貫通する能力を持ち命中精度の高い小型核爆弾の開発と、より柔軟な攻撃計画策定の必要性を唱えている点が注目される。世界70カ国以上に計1400カ所以上の大量破壊兵器関連の地下軍事施設があるとしており、新型核爆弾の開発は、いわゆる「ならず者国家」などからの大量破壊兵器による攻撃を防ぐために、こうした施設の破壊を想定したものであることを報じたのである。米国政府は「記事内容」を否定していない。「悪の枢軸」に対する効果を前提としたリークであったかもしれない。
 林東源・大統領特使はこの期間(4月3日~6日)において、金容淳書記(対南担当)らと実務レベル協議を行い、核開発疑惑やミサイルなど大量破壊兵器問題を「対話」を通じ解決すべきことや中断状態にある、【1】南北経済協力推進委員会【2】軍事当局者間会談【3】離散家族再会のための赤十字会談――の開催など、南北ですでに合意済みの事項の履行問題などを詰めた。さらに4日夜、平壌市内の百花園招待所(迎賓館)で金正日総書記と会談し、大統領親書を手渡すとともに意見交換を行った。
 板門店を経由して帰国した林特使は、その成果を「共同報道文」として発表したが、そこには、【1】今月末に平壌(ピョンヤン)で開幕するアリラン祝典に数千人規模の韓国側離散家族を参加させ、北朝鮮にいる家族と対面する案を進めること【2】南北間鉄道・道路の早期連結などが盛り込まれている。
 林大統領特使の北朝鮮訪問は、南北対話と米朝、日朝対話が動き出す契機になるものと見られる。林特使が北朝鮮に米国や日本との対話を促したのに対し、北朝鮮側が否定的な反応を見せなかったためである。
 林東源・大統領特使は帰国後の記者会見で、北朝鮮の金正日総書記が4日の会談で、米国務省のジャック・プリチャード朝鮮半島和平担当特使の訪朝を受け入れる意思を表明するなど、米朝対話再開に前向きの姿勢を示したことを明らかにした。また、対日関係では、日朝赤十字会談再開の意思を明らかにして、日本との対話再開に関心を示し、日本人拉致(らち)疑惑については、「拉致したことはない」と強調する一方、「行方不明者問題ならば、論議の対象になる」と述べたと語った。
 これら韓半島を巡る関係各国の動きから、我が国外交のあり方にとっての重大な示唆をくみ取らねばならない。それは、日韓米の結束と原則重視(人権=拉致問題、ミサイル・核問題の解決)の日朝外交の貫徹こそ日本外交の要であるということである。

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