この記事は2014年3月27日に投稿されました。
安倍首相と朴槿恵大統領の初の会談が3月25日、オバマ大統領の仲立ちで初めて実現した。これとほぼ同時刻に北朝鮮は、日本を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射した。北朝鮮が両国の会談に合わせて威嚇したことは間違いない。逆に言えば、日韓の協力を誰よりも恐れているのが他ならない北朝鮮であることがより明確になったといえよう。
会談での安倍首相の、「朴大統領、お会いできてうれしいです」という韓国語の呼びかけに対し、朴大統領は終始厳しい表情を崩さなかった。会談がようやく実現したにもかかわらず、両国の関係改善は依然厳しいように見受けられる。しかし、そう単純に考えてはならない。朴大統領には、韓国国内の反日的世論に最大限配慮しなければならない政治的な事情があるからだ。同席した日本の政府関係者によれば、テレビに映らない場面で2人は、「握手し、笑顔で挨拶していた」(産経新聞3月27日)という。テレビに放映される場面では、歴史認識を問いたださずして笑顔を見せることはできなかったのだ。
民主主義国家の宿命
日本では、朴大統領のこうした態度に不快感を覚える人も多いだろう。「朴大統領は北朝鮮や中国の脅威を理解していないのではないか。日本側はそのことをよく理解しているがゆえに未来志向の関係を築こうとしているではないか」というわけだ。しかし同様の現象は、何も韓国に限ったことではない。むしろ日本でも日常茶飯事だ。
たとえば昨年暮れに特定秘密保護法が制定されるまで、あるマスコミでは「安倍首相は日本を戦前に戻すつもりだ」などという現実には到底ありえない批判が連日繰り広げられた。秘密が際限なく増え、原発の問題なども秘密に指定されて市民に不都合なことはすべて隠されてしまうのではないかという意見もあった。しかし実際は、同法が成立しても新しい秘密が生じるわけではない。すでにある国家秘密に対して、公務員などの守秘義務を強化するのがこの法律の趣旨だ。さらに言えば同法の秘密は外交や安全保障の範囲に限られ、原発問題などは基本的には含まれない。
一部マスコミや議員が感情論も含めた批判を並べ立てる中、安倍首相が毅然として立法措置を進められたのはアベノミクスの成功により高い支持率を維持できていたからだ。経済政策に失敗して支持率が低迷していたなら違っていただろう。今後は集団的自衛権の問題がとりあげられるだろうが、やはり同様に「安倍首相は軍国主義者だ」などという批判がまかり通るようになるだろう。まだ目に見えない未来のための準備よりも、過去を呼び起こして批判するほうが世論に訴えかけるには容易だからだ。
現在の韓国の経済状況はあまり思わしくない。そんな中、朴政権が世論の動向に神経をとがらせている状況は理解できる。北朝鮮が強硬な態度を続ける中、日韓の協力が今まで以上に重要になっているが、それは両国の首脳同士がよく理解しているだろう。しかし両国がともに民主主義の国家であるがゆえに、世論を無視することはできない。支持率が低迷していればなおさらだ。それは民主主義国家の宿命ともいえる。
アジア全体の平和と安定を見据えよ
今回の会談で重要なのは、今までできなかった両国の首脳会談が初めて実現できたという点にある。両国の国内事情が劇的に変化しない限り、両国の厳しい関係は変わらないが、第一歩を踏み出せたことは大いに評価すべきだ。
最も重要なのは、日韓関係がこじれれば、中国と北朝鮮の横暴を利することになることだ。特に両国が軍事情報をある程度共有できるようになれば、その効果は絶大だ。日本には諜報機関がないため、北朝鮮の内部情報の把握は韓国が格段に上だ。逆に哨戒機能は日本が世界有数のレベルにあり、過去に哨戒艦を撃沈された韓国よりもはるかに優れている。効果的に情報を共有できるようになれば、1+1の答えが3にも4にもなる。
両国の関係改善はアジア全体の平和と安定にも資する問題だ。民主主義国家として、世論を政治に反映させつつ、民主主義を守るための国を超えた取り組みを国民に教育することも重要だ。両国の関係改善には、より大局を見据えた視点が必要になる。
2014年3月27日


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