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動き出すか日韓-朴大統領国連総会演説の背景

この記事は2014年10月4日に投稿されました。

安倍政権が最重要課題と掲げる拉致被害者問題が思うように進んでいない。北朝鮮は7月、日本に対して拉致被害者の本格調査を約束した。ところが第一回目の報告となる9月上旬には何ら音沙汰長なく、日本側が問い合わせると「現在はまだ初期段階にある。具体的な調査結果を報告できる段階にはない」「詳しくは平壌で特別調査委員会のメンバーに直接会って話を聞いてほしい」などとはぐらかされた。被害者の家族らからは「北朝鮮の思い通りだ」などの声もあがっている。
 ところが、安倍政権を悩ます日朝関係が思わぬ別の効果をもたらしている。韓国への影響である。

朴大統領発言の変化

朴槿恵大統領の支持率が過去最低を記録した。韓国の世論調査会社が発表した、9月の第3週の調査の結果である。支持率は前週より0.6ポイント下落し49.7%で3週連続の下落だった。不支持率は0.5ポイント上昇し、44.3%となった。主な要因は増税とセウォル号事件への対応問題という。
 これまでの韓国の大統領は、支持率が下がると反日的な発言で巻き返しを図るのが常だった。前任の李明博元大統領もそうだ。就任当時は日本との関係強化に努め、経済的にも大きなプラスを生んだ。ところが任期の末期に慰安婦問題に取り組まないことが違憲と判断されると、手のひらを返したように反日を訴え始めた。実兄の訴訟問題も絡んでいたという。
 同様に考えれば、過去最低の支持率を記録した朴大統領は、これまで以上に反日的になるはずだ。そして迎えたのが9月24日の国連総会での演説だった。いわゆる「告げ口外交」が展開すると多くの人が考えたのではないだろうか。
 しかし予想はいい意味で裏切られた。朴大統領は演説で、いわゆる従軍慰安婦問題には一切触れなかったのである。一般的な人権問題としての「戦時の女性・子供に対する暴力」については「時代や場所を問わず、人権と人道主義に反する行為だ」と非難したが、日本への直接批判はなかった。むしろ北朝鮮の人権状況に対して「強い懸念」を表明した。日本への配慮があったことは間違いない。この変化はいったいどうして生まれたのか。

韓国の変化は、国益で現状を判断した結果

その原因の一つを探るために、中央日報日本語版の8月25日の記事を紹介しよう。記事は、拉致問題について日朝交渉が進められている様子について、「朝日(=北朝鮮と日本)間の蜜月が続き、日本で根強かった反北感情が弱まり、その代わりに反韓感情が危険レベルに達している」と述べている。さらに、反日を掲げながらも交渉を進める北朝鮮に対して「外交だけは現実主義路線を歩む」と評価し、頑として会談に応じない韓国政府を非難した。また「(韓日の)両国間には過去の歴史のほかにも懸案が多い」とし、「両国外相が頻繁に会ってこそ、慰安婦問題の解決法を導き出し、朝日の密着にブレーキをかける動力も生じるのではないだろうか」と指摘、「対日感情外交の無益な延長は決して国益にならない」と断じた。
 つまり日韓関係が悪化する中、韓国に先んじて日本に接近する北朝鮮に対して、韓国世論に焦りが生まれているのだ。同様の現象は日中関係においてもみられる。 安倍首相は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のホストとして、習近平主席が日中首脳会談を断りにくいのを巧みに利用し、その実現へと動いている。日韓の外相が会談に応じたのは、韓国だけが取り残されることに焦ったからだという。集団的自衛権行使容認の閣議決定にしても、反対したのは韓国と中国だけで他の国はすべて歓迎か支持だ。その中国が日本に接近し、北朝鮮までもが歩み寄っているとすれば韓国だけが取り残されることになる。ここにきて韓国世論も「日本接近論」を容認するようになったのではないか。
 いずれにせよ世論を気にする朴大統領が日本に配慮したことは非常に興味深い。安倍政権は拉致問題を最重要課題として取り組んでいるが思わぬ副作用を生んだのではないか。来年は日韓の国交回復50周年だ。それまでには大きな転機が訪れることを期待したい。

2014年10月4日

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