この記事は2012年3月27日に投稿されました。
中国の政治権力は9人の最高指導部によって完全に握られている。彼らは中国共産党中央政治局常務委員という役職にあり、胡錦濤総書記や次の総書記就任が確実視されている習近平、温家宝首相などがその立場に立っている。
現在の9人の常務委員は、2007年の中国共産党第17回全国代表大会で紹介された。選挙などといった類の手続きは一切ない。彼らがもつ権力は絶対であり、お互いにその不正や汚職を追及することは禁じられている。
彼らがどのようにして常務委員に選ばれるのか、その詳細は誰にもわからない。激しい血みどろの権力闘争があることは間違いないが、その経緯を知ることは不可能である。万が一彼らの分裂が社会に漏れれば、その情報はたちまちのうちに中国全域に広まり、大きな暴動を引き起こすことになる。1989年に起きた天安門事件も、そのきっかけは指導層内部の分裂が広く知られ渡ったからだった。このことを手痛い教訓として学んだ中国指導層は、それ以来、内部の情報を一切漏らさないように徹底することにした。情報が外に漏れると、それに関わった人物には終身刑以上の刑罰が科された。
絶対的指導者なき中国
かつての中国は、毛沢東や鄧小平といった一人の絶対的な権限を持つリーダーが指導する国だった。しかし鄧小平の死後、中国にはそのような絶対的リーダーはいなくなり、常務委員9人の政治的なバランスによって成り立つ集団指導体制となったのである。
彼らの中には、前総書記の江沢民の影響を受ける江派と現胡錦濤総書記に近い胡派の二つの派閥がある。
江沢民は、彼とその一族全体が広範な汚職に関わっていた。だから、江沢民が総書記を引退後に政治的影響力を失えば、彼自身とその家族は糾弾され、処刑されることは間違いなかった。だから江沢民は自身の影響力が政治的に消えないように必死に政治闘争を続け、そして多くの常任委員を江派で占めることに成功したのである。
江派の多くは「太子党」と呼ばれ、かつての共産党幹部の子弟たちである。当然彼ら自身も、親の世代から続く不正や汚職行為によって莫大な資産と権力を手にしてきた。
それに対して、現総書記の胡錦濤は、共産主義青年団(共青団)と呼ばれる青年エリート組織で教育を受けた一人である。彼らは、現在の中国において不正や汚職行為によって多大な国家資産が消失してしまっているということをよく知っている。だから、中国社会を安定させ、さらに発展させるためには、法律が正当に機能することによって不正をなくす必要があると考えている。
中国の現首相の温家宝もこの共青団出身であり、この改革を推し進めるために尽力してきた。しかしこの改革は、江派の根強い抵抗によってほとんど実現されていない。それどころか、江派の最有力者の習近平が次期総書記になることが確実視されている。
この秋には、第18回の全国共産党大会が行われるが、その際には9人の常務委員のうち7人が定年を迎え交替することになる。そして次の指導部入りが確実視されていた一人が今回失脚した薄熙来(はくきらい)だった。
しかし薄氏は、その側近である王立軍の米領事館駆け込み事件の責任をとって失脚させられた。今もその動静はわからない。
この事件をどのように見るかは難しい。この事件によって胡派の優勢は決定的になったという見方があり、江派による巻き返しが図られるという見方もある。さらには、一連の動きは政治的な安定のためにとられた措置であって、あまり政治的な闘争とは関係ないという見方もある。
ただ確実なのは、どちらの派閥にも絶対的な権力は存在しないということである。
中国共産党の崩壊には日本の決断が必要
次期総書記の就任が確定している習近平に対する評価は、「傑出した指導者」ではなく、いわゆる「バランス型」である。だから、今後もこの中国指導層の体制が大きく変わることはない。
かつてソ連が崩壊したときは、当時のゴルバチョフ書記長一人の判断力と指導力が決定的な役割を果たした。しかし今の中国では、当時のソ連のように一人の指導者の意思によって国が動くということは起こりえない。
日本の中には、「中国は問題だらけの国だから、いずれ自然に滅んでいくはずだ」という楽観的な意見が多い。しかし、我々の予想以上に今の中国の体制は複雑であり、かつその基盤は強固である。2012年の国家予算において、軍事費は過去最高の7.4兆円が計上されたが、国内の治安の維持費はさらにそれを上回る7.7兆円が計上された。不安定な要素は、徹底して速い段階で摘み取られ、かつ激しく弾圧されている。
中国の脅威による不安から目をそらすために、「中国はそのうち内部から崩壊するだろう」と安易に考えることはやめなければならない。中国共産党を崩壊させるには、日本が隙を見せず、断固たる態度を示す以外にない。さらに日韓米の協力体制が強化され、中国に対する包囲網がより強力になれば、その体制を崩壊させることができるだろう。
「日本が犠牲にならなくともそのうちいつか」という安易な発想を日本は捨てなければならない。「平和と安全は自らの意志で勝ち取る」という強い気概が必要である。
2012年3月27日


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