「世界思想」2010年12月号より掲載─詳細は「世界思想」を参照ください
金正恩後継を「体制保証」し支配下に置く
金正恩後継体制で注目すべきは中国が「体制保証」とも言える異様な歓迎姿勢を見せていることだ。なぜだろうか。ポスト金正日時代に北朝鮮を中国圏に完全に取り組んでしまうという戦略的判断を下したからにほかならない。
金正日総書記は今年5月と8月に2度にわたって訪中した。中国はそれを認め、とりわけ8月の訪中では胡錦濤主席が吉林省長春市まで出向いた。見逃してはならないのは、この2度の訪中は北朝鮮が中国東北部(旧満州)と一体となって経済再建を図る、つまり中国経済圏に加わるという意思表示だったことだ。
5月の訪中では平壌-丹東-大連-大津-北京とめぐって「開放」モデル地域を視察。8月の訪中では平壌-集安-吉林-長春-ハルビン・-牡丹江-図們をめぐり、吉林省では農業技術の展示施設や化学繊維製造工場、黒龍江省では食品会社や発電設備メーカーなどを視察した。
「長吉図計画」に組み込まれていく
北朝鮮は2012年に飢餓前すなわち金日成主席の全盛期だった1980年代後半の経済水準まで回復させ、「強盛大国の大門」を開きたいのだ。そのために軽工業と農業部門の生産増を図り生活水準を高めていく。それを中国東北部と連動させて実現しようという思惑なのだ。
金正日総書記は8月の訪中で「地形的に隣り合い工業の構造も似ている。協力を強化し中国の手法、経験を真剣に研究しなければならない」(新華社通信)と、東北部との連動に意欲を見せた。
中国政府にとっても異存はない。東北3省は新疆ウイグル、チベットとともに鬼門となっているからだ。漢族の明は東北部で勢力を強めた満州族によって滅ぼされたように歴史的にも中国全体を揺るがす。それが東北部の地勢的位相である。吉林省には200万人もの朝鮮族がおり、北朝鮮崩壊の場合、動乱が東北部に波及する恐れが高いという危慎もある。それに東北3省は現在、内陸部と同様の深刻な格差問題を抱え経済発展に大きな課題を残している。
それを中国は「長吉図計画」で打開しようと考えている。長吉図計画は昨年8月、中国が国家プロジェクトにした地域経済開発計画で、長春市、古林市、図們市を結ぶ経済ベルト地帯を作ろうというものだ。その輸出ルートを日本海に設定すれば、大連に比べて輸送時問が半減できる。だが、中国側には良港がない。それを図們市から80キロの近さにある北朝鮮の羅先港に担わそうとしている。
すでに中国は80年に羅先港の一部の使用権を獲得した。北朝鮮側も羅先市を特別市に昇格させ、中国側の意向に応じようとしている。9月2日に長春市で開催された「北東アジア投資貿易博覧会」で北朝鮮の具本泰貿易次官は羅先港について「国際的な加工貿易、中継貿易地として発展させるため、必要な法的条件の整備を行っている」と述べている(世界日報9月6日付)。
中国はすでに北朝鮮の鉱物資源を支配下に置きつつある。吉林省の通化鉄鋼グループなどの中国企業(事実上の国営)が北朝鮮の茂山鉱山に投資し、05年以降、開発権を握ってきた。茂山鉱山は中国国境に接する咸鏡北道にあり、鉄鉱石の埋蔵量が北東アジア最大規模の30億トンとされる。
さらに中国企業は龍謄鉱山(平安北道)、徳顕鉱山(同)、龍謄鉱山(同)、熊津鉱山(咸鏡南道)などの採掘権を獲得している。北朝鮮は中国に「国際相場より相当安い『友好価格』で資源を渡している」(韓国月刊誌「新東亜」10年9月号)との優遇策をとる。
軍事・経済交流例がない活発化
中国は金正恩後継の「体制保証」を決めて以降、畳み掛けるように北朝鮮との関係を強化している。金正恩氏の〝お披露目″となった10月10日の朝鮮労働党創建65周年記念日の軍事パレードには中国共産党の治安担当、政法委員会書記の周永康政治局常務委員を送り込み、ひな壇で金親子と並んで閲兵。新たな経済技術協力協定にも調印した。今夏以降、北朝鮮の国家安全保衛部と中国の武装警察は中国国境のみならず中国各地で「脱北者狩り」を共同で行っているとされ、その中国側の責任者が周永康氏なのだ。
また10月12日には北朝鮮の金桂官第一外務次官が訪中、13日には吉林省図們市に北朝鮮特産品の販売市場を開設し、北朝鮮労働者約100人を図們市が受け入れた。14日には北朝鮮の辺仁善人民武力次官が訪中、16日には朝鮮労働党の文景徳書記(平壌市党責任書記)を団長とする親善代表団が訪中した。直轄市と道の最高責任者が参加する異例の代表団だ。
10月下旬には中朝でそろって朝鮮戦争への中国義勇軍参戦60周年記念式典を開催。中国から元参戦兵代表団や郭伯雄中央軍事委員会副主席を団長とする軍事代表団が相次いで訪朝した。
北京で10月25日に開催された記念行事に中国の習近平副主席が軍事委副主席として初デビューし、中国の朝鮮戦争参戦に対して「偉大な抗米援朝戦争」「侵略に対抗した正しい戦争」「中朝の人民は両国の人民と軍隊が流した血で結ばれた偉大な友情を忘れたことがない」と、北朝鮮の南侵を容認するかのような「中朝血盟」発言を行った。
こうした発言を中国指導部は近年、慎んできただけに韓国は歴史的事実を歪めているとして批判したが、こうした発言が飛び出すほど中朝関係が親密になっているのだ。
さらに10月26日、北朝鮮は異例の駐中国大使の交代を行った。前任の山崔秉官氏は4月に着任したばかりだが、新たに池在竜朝鮮労働党国際部副部長を任命した。池氏は金正日総書記の義弟・張成沢国防副委員長に近い人物で、中国共産党との交流に精通しているとされ、中朝関係の深化を目指す。
このように金正恩氏の登場後、中朝関係は緊密さを増している。北朝鮮は中国に飲み込まれようとしているのだ。


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