思想新聞2002年6月1日【マスコミ論壇ウオッチング】27
『読売新聞』は、独自の「憲法改正案」を提示するなど、「提言報道」によって特自色を強めることで、その保守化は一層進んだようにみえる。この結果、東京で発行されている主要紙のスタンスについて、その主張を基準に俯瞰してみると、まず一貫して保守的主張を展開してきた『産経』と新参『読売』が、鮮やかな保守ブロックを形づくっていることは明らかだ。
また、「経済紙」としての性格から自由主義経済体制を擁護し、日本の『ウォールストリート・ジャーナル』を目指す『日本経済新聞』は、政治的には中道的な主張を展開している。
これに対して、戦前の戦意高揚報道から一転、戦後は「民主化」「反米」の旗頭となった『朝日』と、『毎日』が左翼ブロックを形成している。そして、共同通信社の配信原稿を一面に載せることの多い『東京新聞』は、時として『朝日』、『毎日』以上に政府に批判的なことが多い。
ところで、このような新聞各紙の立場にもかかわらず、記者が自社の立場と異なる意見を述べることがある。
「こっけいなのは、日ごろ日本政府の安保政策や教育政策に潜む『ナショナリズムの危険な兆候』をあげつらっているくせに、(瀋陽の)総領事館の失態を見るや『国家主権侵犯に対する認識が甘い』と息巻く手合いである。公共の電波で『(中国を)ガツンとやってほしいですねえ』などと気楽にあおられれば『オイオイ』と袖を引きたくもなる。…今の日本で国家意識の過剰が問題か、不足が問題かといえば、基本的には不足の方ではないか。瀋陽事件の教訓はそこにある。…日本の極右を招くものは、経済的な混乱であると同時に、国家主義の対立を正視せず、現実的な防衛政策や治安対策の確立を阻もうとする理想主義者の空理空論であると思う」
これは、五月十四日付『毎日』朝刊の「発信箱」というコラム欄の山田孝男記者の文章だ。どちらかといえば「理想主義者の空理空論」に近い主張の担い手である『毎日』紙上で、このような正論を展開する同紙政治部・山田記者の勇気に拍手を送りたい。


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