思想新聞2003年2月1日号【主張】
第156通常国会が1月20日に召集された。会期は6月18日までの150日間である。デフレ克服が焦点で通常国会ではまず2002年度補正予算案が審議されている。だが、今国会の焦点は経済問題だけではない。戦後、半世紀以上にわたって棚上げされてきた有事法整備こそ、今国会の最大の課題であることを各党とも忘れてはならない。有事関連法案、国民保護法案、スパイ防止法案の制定を我々は求める。
有事態勢整備は今しかない
第1には、有事法は国家の基本の法であり、国民の生命・財産や国土を守るために何よりも真っ先に整備しておくべき性格のものだということである。これは政府の第1義的な責務といえる。
国際法すなわち国連憲章51条は、自衛権を国家の「固有の権利」と認めている。こうした国際法さらに日本国憲法で認められた自衛権の具体的行使についての「デュープロセス」(適正手続き)が有事法制にほかならない。それがいまだ整備されていないことこそ、大問題なのである。
第2には、北東アジア情勢が一段と緊迫の度が強めており、有事法整備が急がれているということである。
イラク情勢はいつ戦争が始まっても不思議ではない状況下にある。昨秋、イラクに大量破壊兵器破棄を求める国連安保常任理事会決議が全会一致でなされ目下、査察が進行中である。イラクが査察に非協力的な態度を重ねれば、いつ武力行動が始まるかも知れず、それに呼応して国際テロ組織の活動も懸念されるところだ。
さらに北朝鮮情勢も緊迫の度を強めている。昨年12月以降、北朝鮮は核不拡散条約から脱退を表明し核開発を再開した。これにも国際社会は厳しく臨んでおり、情勢いかんで北朝鮮が工作船活動を再開させることもあり得るほか、最悪の場合には有事が起こり得る。
こういう状況下で有事法整備に反対したり先送りする理由はまったく存在しない。
第3には、昨年の通常国会で批判された問題点を政府案は克服しており、重箱の隅をつつくような批判は当たらないということである。
すなわち今国会で審議される有事法修正案には緊急事態として新たに「大規模なテロリズムの発生」や「武装した不審船の出現」を設けている。これによってテロや工作船にも対応することが可能となり、有事法整備はより広範になった。さらに国民保護が抜け落ちているとの指摘を受け、政府は新たに国民保護法制の基本指針を提示し、法整備に当たる。これも有事態勢が具体化するものとして評価されよう。
したがって今通常国会で有事関連法案と国民保護法案の成立を阻害する要因は何一つないことを与野党とも知っておくべきである。
さらに留意すべきは、これらの法整備だけでも有事態勢が盤石ではないという事実である。それは有事は突然に起こるのではなく、必ず前兆があり、あるいは有事の前に情報戦が行われるからである。つまり武力攻撃(直接侵略)の以前には間接侵略と呼ばれるスパイ工作が予想され、それに対応する法整備も怠ってはならないのである。
そのためにスパイ防止法が必要である。わが国はかねてから「スパイ天国」と呼ばれてきた。わが国の防衛、外交、政治など重要な国の命運のかかわる国家機密を外国のスパイが勝手に盗み出しても取り締まる法律が存在しない。外国のスパイの手先になって外国に通報する目的をもってこれら国家機密を不法に探知、収集しても、あるいはその情報を外国に売り渡しても、これを取り締まる法律がない。国際テロ集団がテロ目的で国家機密にかかわる情報を盗み出しても取り締まれないのだ。
こういう状況で有事に備えることはきわめて困難である。わが国は情報戦への備えがまったくできていないのである。
今年3月と夏に情報収集衛星(偵察衛星)が打ち上げられる。同衛星は北朝鮮のテポドン発射を受けて保有が決まったもので、光学センサー(望遠鏡)衛星と合成開口レーダー衛星を各2個打ち上げ、4機で一つのシステムとして運用する。これまで独自に入手できなかった軍事施設の整備状況などの情報収集が可能となる。
つまりわが国は本格的な情報戦の態勢づくりをスタートさせるのである。情報は収集のみならずその的確な分析、そして保管をもって完結するとされており、情報管理すなわち国家機密保護(スパイ防止)が重要な課題となってくる。
さらには今後の情報戦の中核となるとされているのが、サイバー・テロ対策であり、ここでも情報保護が不可欠となっている。有事法整備にはスパイ防止法を含めなければ十分に機能しない所以である。
国会はこうした安全保障策の確立を図るために全力を傾注すべきである。


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