国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

違反だらけの日本国憲法

思想新聞2002年5月15日【小室直樹・講演】

政治学者 小室直樹氏
 講演「日本国憲法の問題点」《抜粋》

 タイトルの日本国憲法問題点というと、短時間で話すにはあまりに重い大問題のテーマです。
 そこで今日はぐっと焦点を絞りこんで、現行の日本国憲法で、どのような憲法違反が行われているのかを明らかにすると、現行憲法の問題点の急所が浮かび上がるのではないかと思います。
 憲法違反といえば、まず誰しも第九条違反を思い浮かべるかもしれません。確かにそのことはたいへんな問題点です。
 憲法学者は多数いらっしゃるようですが、小林教授が言われるように、日本の憲法学者は、事情変更の原則を憲法の条項に用いることを極端に避け持ち込まないのが主流になっています。
 ところが、あえて事情変更の原則から言えば、現行憲法の九条はいまや全く意味を失っている、と言えるのです。そこで、九条の「戦争」という語の持つ意味を事情変更をみると過去3回変わっているのです。最初は「対米報復戦」のことを意味し、その後、冷戦時代には「対ソ連戦」へ、そしてソ連崩壊後、遠く離れた国際的な民族地域紛争・内戦へ、さらに昨年の9・11以降は国でもない武装集団によるテロ行為へと意味が変わりました。このように、立法者の意志とは全く意味が異なってしまったのです。
 さらに、日本国憲法の侵犯が最も深刻な形で行われているのが、第13条です。日本国憲法が米国の押しつけ憲法だという見方と、押しつけでもいいものは守れ、という見解がありますが、ここでは是非を問いません。
 米憲法の、もっと言えば独立宣言の前文の主要部分です。これは今なおデモクラシーの原理として用いられている米憲法のエッセンス。ところが13条にはそのまま述べられています。つまり、「生命・自由・及び幸福を追求する権利」を認めている。実はさらにそっくりな手本がジョン・ロックの主著です。ただし、ロックでは「幸福」が「財産」になっていますが、米独立にあたりジェファソンが曖昧な表現に変えたのです。
 つまり、日本国憲法でも「幸福=財産」と見なして差し支えないでしょう。確かに29条でも「財産権の不可侵」がうたわれています。
 しかるに最近、憲法のエッセンスともいうべき国民の財産が脅かされる事態となっているが、政府はこれを放置する重大な憲法違反を行っています。第1にはゼロ金利政策で何百兆円という財産が消えた。平成2年に総量規制と称し、公的資金を2百兆円投入して銀行救済に狂奔しました。
 さらに、この13条に抵触するのが、いわゆる「拉致問題」です。77年に拉致された横田めぐみさんの両親は、日本政府が何ら対策を講じないので、渡米し連邦政府に陳情しました。この3月には有本恵子さんが83年に拉致された問題については、よど号ハイジャック犯の元妻がはっきりと「当事者である」と証言したのです。ところがこの証言にも政府は何ら動かず、まさに国民の生命を侵害した驚くべき憲法違反です。これが米国なら、拉致した国の財産を凍結するなどの制裁をしたはずです。
 そして、第98条第2項、「条約及び国際法規の遵守」です。1949年のジュネーブ4条約は(53年に日本も批准)有時の際の「国民の自衛権」を定めたものです。ところがこの条約には「広く国民に報知し教育すべし」との後置条項があるにも拘らず、国民には全く知らされてない。
 日本国憲法はこのように多くの欠陥があり、また条文だけを改正しても機能しなければ意味がないのです。

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