思想新聞2000年8月1日号 【主張】
TMDや有事立法に取り組め
沖縄サミットを終えて、政府は普天間飛行場の沖縄本島北部地域への移転計画を軌道に乗せるために、沖縄県と地域関係者との調整を再開し移転地や工法の確定を行って早期移転のめどを立てねばならない。沖縄問題だけでなく、全般的な安全保障策について韓半島情勢の新たな展開を踏まえ、明確な指針を確立していく必要性がある。森政権は安保政策の新ビジョンを国民に提示することが求められている。
公明党への配慮は無用、果敢に実行を
森政権の安全保障政策はきわめて曖昧である。先の総選挙の自民党の公約では、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の実効性確保や普天間基地移転の着実な実施、国連活動への積極的参加など抽象論に終始し、安保政策で消極姿勢を採る公明党への配慮が目立った。
だが、安保政策に多くの課題が残っており、これを放置することは許されない。
第一には、ガイドライン関連法案が成立したものの、後方支援活動の重要な問題である臨検(船舶検査)が手つかずのまま残されていることだ。
これと関連して第二には、海上自衛隊に領海警備の任務が与えられておらず、不審船への適切な処置が取れないことだ。
このいずれの課題を克服するにも、武器使用のあり方について抜本的な改正が必要となる。現行制度では自衛隊が武器使用できるのは警察官職務執行法第七条の規定に準拠し、正当防衛と緊急避難を除いて「人に危害を与えてはならない」とされている。しかし国連の交戦・武器使用規定(ROE)では威嚇射撃はもとより相手の攻撃前でも先制使用が認められている。
ガイドラインの実効性確保のためには臨検を行えるようにガイドライン関連法の改正か臨検のための新法制定、さらに領海警備任務を自衛隊法に加えなくてはならない。
第三には、周辺事態法ができても肝心の日本有事の際の法整備が皆無であることだ。
いわゆる有事立法の必要性がかねてから指摘されているのに、政府の取り組みは遅々として進んでいない。99年版防衛白書は「(有事)法制が整備されることが望ましい」と述べるだけで具体的日程について皆目検討していない。森政権も有事立法に対して沈黙を保っている。
これまで再三指摘されてきたように、日本本土に侵略してきた敵と戦うために陸上自衛隊の部隊が急行しようとしても道路交通法に基づいて動かなくてはならず、陣地を構築しようにも私有地を使用する法的根拠がない。拒まれれば、なすすべがなく立ち往生するというのが現在の自衛隊の現状である。
周辺事態法では米軍への協力が40項目を越えた。周辺有事でもこれだけの数の協力が必要だが、日本有事の場合はさらなる詰めが必要で法整備は焦眉の急となる。
第四には、現在の日本の安全保障政策の柱となっている「新防衛大綱」があまりにも戦略性に欠落していることだ。
当初の「防衛大綱」は76年のデタントブーム時代に作られたが、「平和時において保有すべき防衛力の水準」という平和時を設定した脱脅威論に立つもので、ここで採用された「限定的小規模侵略」に備える簿上戦略はきわめて曖昧なものだった。これを継承し九五年に自社さ連立政権が作ったのが「新防衛大綱」で、「限定的小規模」侵略への「独力排除」を削除し陸上自衛隊の2万人削減など大幅な縮小統合を進める「はじめに削減ありき」の大綱だった。
21世紀の新たな北東アジア情勢を踏まえて、わが国がもつべきしかるべき防衛力を明確にすべきで、それには新「新防衛大綱」を作成することが不可欠である。
第五には、「専守防衛」といいながら、それを確実にするTMD(戦域ミサイル防衛)構想への取り組みがあまりに消極的であることだ。
わが国には中国などの核戦力を抑止するため独自の核を持つという選択肢は存在しない。核抑止力においては冷戦時代と同様に米国の核の傘のもとにいる。それは必要なことだが、日本独自で核抑止力や中距離ミサイル弾道弾に対応する迎撃能力を高めることも望ましく、それにはTMDが有効である。
米国依存ばかりでなく日本の技術力を駆使して独力でもTMD構想を実現させる意気込みが必要である。
第六には、国連平和維持維持活動(PKO)において国連平和維持軍(PKF)本体業務を凍結したままで、あまりにも国際貢献に及び腰である。早急にこれを解除し、日本がPKFでも国際貢献できる道を開かねばならない。
安全保障政策は国策の柱である。森政権は自自公連立維持を優先させ、安保政策で安易な妥協を行うべきではない。確固たる安保政策を確立し、それを実行に移していかねばならない。


コメント