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奇怪な「二院制」に 参院の機能発揮できず

【思想新聞2004年6月1日号】憲法改正そのポイント10

 参議院選挙が近づくたびに、参議院は本当に必要なの? 衆議院の一院だけではダメなの? と言った疑問の声が聞かれます。どうも参議院の存在理由がはっきりしません。それは二院制を定めた現行憲法への疑問でもあります。

貴族制や連邦制でない特殊型に

 わが国の国会は衆議院と参議院からなる二院制度を採っています。憲法42条は「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」とし、さらに43条では「①両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。②両議院の議員の定数は、法律でこれを定める」として両議院とも国民から選挙された議員で構成されることを明記しています。この制度で本来の二院制の意義が発揮されるでしょうか。
 もともと二院制は議会制の母国とされるイギリスで登場しました。13世紀に始まった同国の身分制議会が14世紀には貴族と僧侶の部会と、州の騎士や市民代表の部会の二部会制として発展し、以来、議会は二院制が主流となりました。
 現在のイギリス議会は世襲貴族や僧侶からなる上院(貴族院)と国民から直接選挙で選ばれた下院(庶民院)の二院制からなり、1911年に議会法が制定されて以来、下院優位の原則が確立。下院は財政支出に関する法案の先議権をもっているなど権限が強く、上院はかなり名目的存在になっています。つまり英国の二院制は同国が立憲君主制であり、イギリス国教会を国教にしているのを根拠に貴族院が存在しているのです。
 これに対して米国の場合は合衆国、つまり連邦制であることを根拠にする二院制です。米国はそれぞれの州(ステート=国)から成り、上院は人口に関わりなく各州から二名ずつ選出、下院は人口に比例して選出されます。上院は大統領の条約締結権などに同意を与える行政参与権で下院に優越、下院は予算先議権などの専権を持つという具合に上下両院で権力分立しているのが特色です。
 では、日本の二院制の根拠は何でしょうか。明治時代に近代国家を形成する際、憲法制定においては新興ドイツ帝国を見習い(ただし同国は連邦国家)、議会は英国流を採用。明治憲法下では皇族や華族、国家功労者から成る貴族院と国民から選挙で選ばれる衆議院の二院制を採りました。
 しかし、戦後は立憲君主制の国でありながら貴族制度が廃止されました。それでも明治以来の二院制を継続し、その結果、衆参いずれも国民の選挙で選ばれ、しかも両院で権限が明確に分立されていない「特殊な二院制」となったのです。実は日本のような二院制は他国には存在しません。二院制の由来で明らかなように英国型(立憲君主制)か米国型(連邦型)のどちらかなのです。
 憲法では衆議院に優先権を与えています。たとえば衆議院で可決し参議院で否決した法律案は、再び衆議院にもどされて出席議員の3分の2以上の多数の可決で成立。予算は先に衆議院に提出しなければなりません。その予算は参議院で30日以内に議決しなければ衆議院の議決が国会の議決となります。条約承認も同じ。総理大臣の指名も衆議院が優先。内閣不信任は衆議院だけで議決されます(59~69条)。
 このように衆議院優先権を列挙すると、なるほど日本は衆議院優先という原則が読みとれます。しかし法律案の再議決が衆議院での出席議員の3分の2以上の賛成が必要との高いハードルを設けているから、事実上の衆参同列、いえ「3分の2以上というのは現実の政治ではほとんど不可能。これは衆院優先ではなく、参院優先だ」との声すら出ています。
 法律案の審議は法治国家の立法機関である国会の最大の責務です。その議決に衆参両院で違った議決をした場合、衆議院に高いハードルを設けておけば実質的な衆議院軽視となるでしょう。与野党伯仲の場合は事実上、衆議院は優越権を発揮できないのです。

衆院のコピーか政治混乱招くか

 二院制そのものにメリットがあるとの見方もあります。審議に慎重を期待できるというものです。一院で決定したことも他院で違う角度から光を当て、再考の機会が与えられるからです。たしかに二院制で2回も審議するなら「慎重審議」が望めるでしょう。
 しかし、現行の参議院は「ミニ衆院」「衆院のカーボンコピー」と長く揶揄されてきたように、政党化してしまった参議院で慎重な審議や違う角度からの審議を期待する方が無理でしょう。
 また衆参で多数党が異なると「慎重審議」の美名のもとで法案が参議院で通過せず、国政が停滞してしまいます。衆議院には解散があるのに参議院にはありませんので固定化してしまい、民意を問うこともできません。
 ここでも問題が噴出しているのです。

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