思想新聞2003年5月15日【新憲法案発表】《要旨》
愛知和男自主憲法制定国民会議会長
責任ある国家として再生を
この新しい憲法案には大きな柱が四つあるが、それを挙げ概括してみたい。それは、①天皇制を堅持し、「元首」と明記 ②伝統的な日本人の生き方に基づく日本文化を現代社会に生かした新しい国家を建設し、さらにそれを世界に向け発信していく ③民主主義を成熟させる――官僚主導の国家運営から政治主導の国家運営への転換 ④世界平和を実現していくために、国際社会での責任を果たしていく――である。
まず、「前文」は表記上の問題など様々な意見があったため、私案を採用させていただいた。
[前略]われわれの祖先は、我が国独自の文化を築き上げてきた。とりわけ、人の尊厳を重んじるがゆえに人の和を尊び、自然を畏敬するがゆえに自然との調和を図る伝統の中で培われた「共生の精神」こそ、我が日本国の文化の精華である。/われわれは、日本国の基本的国家体制として、天皇制を堅持するとともに、日本国の文化の精華である「共生の精神」をもとに、自由と平等、権利と責務を、理性をもって均衡させた真正な民主主義社会及び、われわれに続く世代の幸福を念頭に置いた、自然との調和の中に生きる持続可能な社会の実現を期する。/併せて、世界の抱える数多くの難題を解決し、諸民族が共生する全地球的な恒久平和を実現してゆくために、積極的な役割を果たしてゆく。…〔後略〕
第一章は「天皇」。特に西欧をはじめとする諸外国とは異なり、君主と国民の対立がまずあり、そこから憲法が生まれたという歴史を日本はもっていない。それゆえ天皇と国民の「対立」を想起させる表現を採らなかった。
第二章は国旗・国歌に関し、独立した条文として憲法に盛り込んだ。
第三章は「安全保障」。現行憲法で議論の集中する「九条」を、新憲法案の「十条」として新しい観点で以下のように提示した。
【世界平和・地球安全保障の理念・国際社会・国際機構への積極的参加】③…日本国はできうる限り平和的手段を尽くして正義に基づく国際秩序の形成、維持、発展に主導的な役割を果たすよう努めるとともに、確立された国際機構の運営及び活動には、軍事力の行使を含む責任ある立場で積極的に参画する。
そして十一条で自衛権と集団的自衛権(同盟)に言及し、十二条で国防軍の保持を明記した(最高指揮監督権は総理大臣に帰属=十四条)。その上で、十六条で「軍事裁判所」の設置を定めた。
第四章「国民の権利及び責務」の基本的スタンスは、国家と国民を対立する存在と捉えて、国家を過度に敵視するような表現を避けた。成熟した民主主義国家においては、単に国家を、国民を抑圧する存在として捉え、国家からの自由を強調するだけではダメ。むしろ国民が国家の構成員として、国家の運営に責任を有する存在としての認識を重視する必要がある。
そのため従来の「権利と義務」という使い古された表現ではなく、敢えて「責務」とした。具体的には十八条「基本的人権の享有」で、現行で基本的人権は「与えられる」としているが、こうした表現からは権利行使に責任が伴うことを想起しにくい。そこで権利の無条件な濫用を防ぐ意味で、この権利は「信託される」とし、責任の伴う権利行使を期した。
その他、二十五条「表現」、二十七条「集会・結社」に関する「自由」について無制限ではない旨を表記。
なお、「権利規定」に関して、二十一条「人格権」、二十六条「知る権利」、三十二条「環境権」を現憲法に追加。
また「責務」について、三十九条で選挙権に関し投票率低下も問題となるため「責務」である旨を明記、四十四条「国家防衛」、四十五条「国家緊急事態下での協力」、四十六条「公共財保護」を責務とした。
そして国の責任規定として、三十一条「家庭の尊重保護」、三十二条「心身障害者・高齢者・妊産婦・母子家庭への配慮」、三十五条「児童・年少者の健全育成への配慮」を明記した。
第五章「統治権」では、私案ながら政党の重要性を記し議会制民主主義による政治主導を期した。
第六章「国会」。五十条では諸意見があり、私案だが一院制とした。二院制は、連邦制を採る米国や身分制を持つ英国などあるが、世界ではむしろ一院制国家の方が多数だ。また五十五条では「議員の就任宣誓」を定め、腐敗防止を期した。六十条では通常国会を現行の年一回から二回とした。
第七章「内閣」。七十三条「行政権」は内閣にあるとした。七十四条で「閣議決定の過半数」を明記し、現行の閣議は全会一致が原則で、官僚が予め図った調整を追認するという現状の打破を試みた。また八十八条で現在規定のない「国家緊急事態」について定めた。
第九章「憲法裁判所」は憲法調査会の報告で必要性が指摘された内容。
第十一章「地方自治」。地方は国と対立するものではないとの観点で、百十三条に「国と共同して」との文言を盛り込んだ。
第十二章「改正」について。百十九条①で改正案提出権を、内閣と三分の一以上の在籍国会議員とした。②では改正を在籍議員の三分の二以上の出席かつ、三分の二以上の賛成によって可決とした。③では②で三分の二以上の賛成が得られなくても、過半数の賛成があれば国民投票にかけることができ、過半数の賛成で改正できる、とした。
(文責=編集部)


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