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共産党 ここが間違い 日本農業の破壊を企てる新・農業基本法反対論の正体

思想新聞 1999年7月15日号 共産党 ここが間違い1999

 21世紀の農業政策の指針となる新たな農業基本法(食料・農業・農村基本法)案が6月に衆議院を通過、今国会で成立する見通しです。ところが共産党はこれを「農家破壊政策」と批判して全国で反・新農業基本法運動を展開しています。共産党はその代案として「減反をやめ、60kg2万円以上の米価保障。自給率70%の実現」といった耳障りのよい農業政策を宣伝しています。はたして政府の新農基法は「農業破壊政策」(志位書記局長)なのでしょうか。

 共産党は「食料自給率42%。1億2千万人の国民のうち、7千万人分の食糧を外国にたよる――こんな異常な国は世界にありません」(98年7月『赤旗』号外)と主張しています。この共産党の主張によると、政府・自民党の貿易自由化政策によって自給率の急低下を招いたとしていますが、本当にそうですか。

自給率低下の原因を輸入の自由化とする共産党の詭弁

 98年の日本の食料自給率は主要国中で最低の41%です。1960年度に79%もあったことを考えれば、たしかに「異常な低さ」でしょう。では、なぜこのように自給率が低下してきたのでしょうか。その原因をきちんと解明しておかねば、21世紀に向けての真の農業政策を打ち出せないはずですね。実は共産党はこの原因をねじ曲げてしまっているのです。
 共産党は「食料自給率が年々低下している最大の理由は、輸入制限の撤廃や関税率の引き下げなど輸入拡大政策にあります」(『赤旗』6月13日付)と断定しています。
 これは本当でしょうか。農水省や専門家は、自給率低下の第一の原因を「食生活の多様化、特に肉食増加の影響が大きい」と述べています(読売新聞97年12月22日付)。つまり「国民所得の増加に伴い、自給品目のコメの消費が減少する一方、輸入穀物に頼らざるを得ない肉や牛乳・乳製品など畜産物の消費が増加した」(同)のです。
 このことは日本国民の一人一日当たりの摂取カロリーの内訳を見れば一目瞭然でしょう(左図・参照)。60年頃は摂取カロリーのほぼ半分がコメによってでした。それ以前はコメ依存度がもっと高く、宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』にあるように、昭和の初めは「一日に玄米4合と味噌と少々の野菜」というほどコメが主食だったのです。
 ところが食生活が多様化するようになると、コメは摂取カロリーの25%程度、つまり4分の1に低下したのです。そこで日本農業もそれに対応しようと、肉類や野菜の生産増に当たることになり、それに伴って大量の飼料や麦、大豆の輸入を余儀なくされ、その結果として穀物自給率が急速に低下したのです。もちろん、日本だけではまかなえないので輸入が急増したことは言うまでもありません。
 つまり、共産党の主張は食料自給率が低下した本当の理由を言わずに、その結果だけを並べ立てて、あたかも政府・自民党が意図的に輸入自由化を拡大して農家を潰したかのように、ウソの宣伝をしているのです。
 考えても見て下さい、もし輸入自由化をやめれば、私たちの食生活はどうなるか、を。97年現在の食料輸入の内訳で一番多いのが魚介類で32.3%、次いで肉類の16.5%。輸入のほぼ半分は魚肉類です。輸入をやめれば、私たち国民の食卓から魚や肉が消えるだけのことです。共産党の農業政策には国民大多数の消費者の視点がまったく欠落しているのです。

零細な日本農業の実態をねじ曲げる法人化反対論

 では、自給率が低いままで仕方ないのでしょうか。共産党は「自民党は失敗があきらかな『大規模農家の育成』に固執し、一般農家を切り捨てる道をひた走っている」として、家族経営を守れば自給率が高まると言っていますが…。

 もちろん、自給率が低いのは考えものです。世界で異変が起こったときに食料が確保できるのか国民も不安です。
 現在、過疎化、高齢化などで農業後継者が減少の一途をたどり、耕作放棄地の面積も増える一方なのです。これを解決しなければ「自給力の強化」を図ることは不可能でしょう。にもかかわらず、共産党はこうした日本農業の実際の姿に目もくれずに、観念的な「自給率70%」論をぶっているのです。
 95年の資料では、日本農業を担っているのは344万戸の農家、327万人の農業従事者です。この数で約11兆8千億円の農産物を出荷していますが、日本経済に占める農業の比重は国内総生産(GDP)の1.4%にまで低下しています。1人当たりの労働生産性で見れば、製造業の3割程度でしかありません。
 なぜこのように農業経営が悪いかといえば「零細規模にとどまっていることが大きな理由」(成蹊大学教授・本間正義氏)なのです。農業経営の単位となる農家1戸当たりの耕地面積は1.47ヘクタールときわめて小さく、米国の126分の1、ドイツやフランスなど欧州各国の約20分の1にすぎません。
 つまり、零細だから農業だけではやっていけない、だから後を継げない、そこでいわゆる三チャン農業になり、高齢で農業ができなくなれば耕作放棄地になる――の悪循環に陥っているのです。事実、農家戸数は60年に比べ4割以上も減り、専業農家(43万戸)の半分近くが65歳以上の高齢者。放棄地面積はほぼ四国全体の耕地面積に相当する16万2千ヘクタールに及んでいます。
 そもそも農家344万戸といいますが、農家とは「経営耕地面積が10アール以上で農業を営んでいる世帯」、しかも経営面積がそれ以下でも「年間15万円以上の農作物販売額」があれば農家とされるのです。これでは片手間の農家も「農家」なのです。
 販売規模別農家数の表でもおわかりのように、販売金額が100万円にも達していない農家は全体の半分も占めています。だからといって零細農家は貧乏というわけでは決してありません。兼業農家が日本の農家の大半を占め、他産業に従事する世帯員が1人もいない専業農家は全農家の13%にすぎません。そのため農家所得は全国平均でみて勤労者世帯の所得より3割も多く、世帯員1人当たりでみても1割ほど多いのです。
 そこで前述の本間教授は「これらの事実は農業政策の対象を絞り込むことの妥当性を示唆する。今後の農政は専業農家を中心に、担い手となりうる一定規模以上の農家のみを対象にすべきなのである」(日本経済新聞99年2月9日付)と述べています。
 この政策こそ、新・農業基本法案にほかなりません。同法案は価格支持による農業保護からの脱皮や農業経営の法人化の推進を柱にしています。しかし、条件の不利な地域の農家もありますので、そうした中山間部の農家には直接支払いによる所得補償を行うなど、戦後農政を大きく転換させる改革が盛り込まれているのです。こうして「自給力の強化」が図られるわけです。
 ですから、共産党を除く与野党がそろって賛成したのです。共産党の主張する「減反をやめる」ためにも新・農基法が不可欠で、なにもしないで「2万円価格保障」などは長続きするわけがありませんし、税金を支払っている消費者が納得するものではありません。それよりは後継者がつくれる農業、そして市場経済に耐えられる農業、つまりおいしくて安全、安いコメづくりをめざすべきでしょう。

国民の英知を結集し「強い農業」づくりをめざすべき

 共産党は「企業参入で農業は大企業に乗っ取られる」と主張していますが、そうならないのでしょうか。また家族経営は切り捨てられはしないのでしょうか。

 読売新聞は「農水省―農協―家族型経営の農業者といった閉鎖的な体系の中で補助金と農業土木主体に展開する農政は行き詰まった」(99年6月4日付・社説)と指摘しています。
 全国農業協同組合中央会の山田俊男常務理事は「日本の農業は、担い手が減り、農地が縮小し、食糧自給率が落ち込んで、がけっぷちだ。今、手を打たなければ、日本の農業はだめになってしまう」として、新・農基法案を「100点満点の出来」と述べています(読売新聞99年5月21日付)。
 そこで新・農基法は「開かれた農業」をめざし、これまで有限会社や協同組合に限っていた農業生産法人の形態に株式会社も認めます。商社や外食企業など農業に直接関係ない企業に資本参加の道が開かれることになります。ただし出資率は25%の上限がありますので、共産党が言うような「大企業の乗っ取り」などあり得ません。また、株式会社は農地を保有できないように歯止めがかけられています。企業の力や知恵を出してもらい国民みんなの力を結集して「強い農業」づくりを行おうというのが、法案の趣旨です。
 共産党の志位書記局長は「農地をつぶして大企業の新しい投資先をつくり、4兆円市場といわれるコメ市場を支配下に置いて甘い汁を吸い、農民が先祖代々、大事に作り上げてきた土地をむりやり取り上げ、自分のもうけの対象にしようとしている」(「日本の米と農業はどうなる」日本共産党中央委員会発行)などと述べていますが、これは為にせんがための主張で、話はまったくあべこべです。
 手を打たなければ日本農業はダメになってしまう、つまり農家それ自体が生き残れないのです。家族経営は切り捨てられるのではなく、法人化などで次元を変えて生かしていこうというのが新・農基法なのです。 共産党のデタラメな主張にだまされてはなりません。

販売規模別農家数(95年)

販売金額実数構成比
50万円未満744千戸30%
50~100万円52221
100~200万円42117
200~500万円43418
500~1000万円1978
1000~2000万円1054
2000万円以上  602
合計2483100

(出所)農林水産省「1995年農業センサス」

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