思想新聞1998年8月15日号 主張
自民党は七月の参院選の敗北を受けて橋本総裁が退陣、新たな小淵新体制を発足させ、同体制のもとで参院選敗北などの反省が部分的になされている。だが、今年一月の第六十三会党大会で決めた基本路線には何ら修正を加えていない。はたしてそれでいいのだろうか。自民党は再生党大会を開催し、党の新路線を明確にすべきである。
現在の党路線は連立政権の残滓
先の参院選での有権者の投票行動を一言でいうなら、「自民党にお灸を据える」ということであろう。普段の自民党支持者の三割が他党に投票したのは、橋本政権が理念なき「連立政権」に安住し、戦後最大規模の経済危機に速やかに対応しなかったからにほかならない。自民党はいわば解党的出直しを迫られているのである。
そのことを自覚したからこそ、橋本首相は退陣したのである。ならば、小渕新総裁が誕生したのを機に総反省し、党の基本方針も新たにするのが筋ではないか。 現在の自民党の基本路線は九五年三月に決めた「新宣言」にもとづいているが、同宣言は自社さの連立政権を正当化するための妥協的な内容に終始していた。たとえば、自民党の党是であった「自主憲法制定」の旗をついに降ろし、社会党(現・社民党)にかぎりなくにじり寄った。
九六年一月には橋本総裁を首班とする自民党主導内閣が成立、さらに九六年秋の総選挙後は社さが閣外協力へと一歩後退し、事実上の自民単独政権が樹立されたにもかかわらず、今年一月の党大会で決めた「一九九八年度運動方針」では、なんら「自民党らしさ」を打ち出せなかった。
同方針では、連立与党三党体制について「今や新たな創造的発展の時期に入った」としたものの、いったいいかなる創造的発展なのか、具体策を示せず支持者のひんしゅくを買った。
このように、理念なき自民党に対して、国民によって厳しい審判を下されたのが、七月の参院選であったと言えよう。ようするに自民党は、護憲の社さとの連立の維持に汲々とするばかりに、ミイラ取りがミイラになったと国民は受け取り、そうした「政権欲」にかぶれた自民党に愛想を尽かしたのである。
こうした理念不在の態度こそ、国民の政党政治への不信を増大させてきた元凶である。その理念の中心が憲法観にあることは論を待たない。現在の日本は、金融や経済はもとより、あらゆる面で「戦後体制」からの転換が迫られているが、その「戦後体制」は現行憲法が形成してきたことを自民党新執行部は想起すべきであろう。
つまり、抜本的改革とは憲法改正抜きにはあり得ないということだ。
憲法問題を党の基本策に据えよ
言うまでもなく、国家にとって憲法とは、その国がいかなる国なのか、いかなる国を目指しているのか、といった国家の基本を体現するものである。
英語で言う憲法、すなわち「コンスティテューション」が体質との意味を持っているように、憲法は単なる法律としての基本法という次元を超えて、国体を規定する基本法であり、政(まつりごと)の中核となるものである。そこに憲法の意義がある。
その認識があるからこそ、自民党は一九五五年に結党した際、「自主憲法制定」を党是として掲げたはずである。ところが、自社さの連立政権下で自民党はこの「政(まつりごと)の中核」を亡失してしまった。新執行部はこの政治の原点に立ち返るべきである。
それなくして自民党の再生はあり得ない。早期に党大会を開催すべきである。


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