【思想新聞2004年6月1日号】 マスコミ論壇ウオッチング
5月1日号の当欄で、イラクの人質事件に関連し、「わが国のニュースショーやワイドショーでは、人質の人命や国の政策の行方、日米同盟の根幹まで左右しかねない深刻な問題が、番組の『ニュースコーナー』の一つのアイテムとして『消費』されているに過ぎない」ということを指摘した。
さらに、このような傾向について「深刻な事件や事故も、ニュースショーやワイドショーの中の一つの話題でしかなく、その前後には芸能人のスキャンダルを紹介するといったことが、ほとんど例外なく行われている。このような伝え方が改まらない限り、わが国が直面している危機の打開策について成熟した論議の深まりは期待できない」とも指摘した。
では日朝国交正常化交渉の重大な障害の一つである拉致問題の解決を目指した今回の小泉首相の訪朝問題について、メディアがどのように扱ったかを見てみると、NHKとテレビ朝日は小泉訪朝についての三~五時間の特別番組を組んで詳しい報道と分析を行ったが、他局、殊にTBSは午後七時からのアテネ五輪バレーボールの男子予選に加えて、午後十時からは、「異種格闘技世界一決戦」を放映した。
会談の行われているのが海の向こうであり、番組編成が臨機応変に行えないことは理解できるとしても、国民の多くが関心を寄せている交渉の推移よりも、バレーボールや異種格闘技の方を優先したTBSの判断には疑問を抱かないわけにはいかない。
多額の放映権料を支払い、前々からスケジュールを組んでいたために、日朝首脳会談関連の特集番組を組めなかったという事情があるにせよ、TBSは目下、国民の最大の関心事である問題よりも、「日米野獣対決」と銘打ったボブ・サップと藤田和之の対戦の方が重要だという判断を国民に示したことになり、その結果、TBSは坂本弁護士ビデオ事件で傷ついた、「報道のTBS」という輝かしいイメージの回復をさらに難しくすることになったのではないか。


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