国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

議定書「不一致」も温暖化防止で協力

思想新聞2001年8月1日

ジェノバ・サミット G8首脳宣言を採択感染症対策で世界保健基金を設立

 ジェノバ・サミット(主要国首脳会議)が、7月20日から22日までの3日間、イタリア・ジェノバ市を舞台に行われた。経済問題では世界同時不況の回避する政策を討議し、地球温暖化防止の京都議定書批准については「意見の不一致」と明記。発展途上国などで深刻な感染症対策に世界保健基金の設立を発表し、貧困削減への支援などを強調した。

 サミットではまずロシアを除く先進7カ国(G7)首脳による経済討議が行われ、経済宣言(G7共同声明)を採択。
 同宣言では、世界同時不況の回避に向けた政策協調を確認し、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟支持を明記した。小泉純一郎首相は「日本は構造改革で世界経済に対する責任を果たす」と表明、各国もこれを支持した上で、さらなる金融緩和継続と不良債権処理を日本に求めた。
 また、ロシアを含むG8(主要8カ国)首脳とコフィ・アナン国連事務総長が、HIV(エイズ)など発展途上国の感染症対策のための「世界保健基金」の設立を発表した。この基金の対象は、HIVのほか結核、マラリアの三大感染症で、総額で18億ドル、G8から13億ドル拠出することで合意した。このほか、「貧困削減のための戦略的アプローチ」として、途上国に世界貿易体制への参加と自助努力を求めつつ効果的な開発援助の継続を盛り込んだ。
 最大の焦点となっていた地球温暖化防止をめぐる京都議定書問題では、早くから離脱を表明した最大のCO2(二酸化炭素)排出国である米国が、同議定書の早期発効を目指す独仏両国から詰め寄られ、日本の小泉首相は「米含むすべての国が一つのルールの下で行動することが重要。G8は前向きなメッセージを」と調停役にまわった。結局、G8宣言でも「批准には現時点で意見の不一致がある」とし「共通の目標達成のため協力する」と米国を含む発効に含みを持たせるも、問題を先送りする形となった。
 また、CTBT(包括的核実験禁止条約)をはじめ安全保障に関しては、米国から具体的提案はなかった。ミサイル防衛の迎撃実験の成功で自信を深めた米国が、サミット直前のG8外相会合で採択された総括文書からABM(弾道弾迎撃ミサイル)制限やCTBT批准の文言が省かれた事実から、サミットで「多国間条約」の労を費やすより、ミサイル防衛システムを完成させて核兵器削減を図る構えだ。 
 なお、今回のサミットで際立ったのは、サミット開催阻止を叫ぶ「反グローバル化運動」を標榜する組織によるデモである。同運動は米国主導の市場経済支配に反対する立場。機動隊との衝突で死者を出し、サミットでは異例の声明を発表した。サミット閉幕直後の首相記者会見でこれを詰問するジャーナリストもいたが、実際、デモ隊には警官隊への投石や暴力、商店などで略奪行為を働く過激派がいたこともまた事実だ。反対派NGO(非政府組織)の中にはこれら過激派に与するのを避けてデモ参加を控えた団体もあった。ドストエフスキーが『悪霊』で告発した、「革命」のためにはテロや誘拐など、平気で遂行するという恐怖戦術は、共産主義の残滓として未だに姿をとどめている。そして、ブレア英首相が嘆いたように、イタリアの地元メディアは連日、デモ報道ばかり繰り返し、「権力=悪、反権力=善」という安易な図式を提示するのに躍起になっている点は、日本と大差あるまい。
 というのも、一部を除き京都議定書離脱をはじめサミットでの米国の消極姿勢を非難する論調ばかりが目立つからだ。確かに米国は国益を重視し「わが道を行」(産経新聞)こうとしている。だが、米国抜きで京都議定書発効を強硬に主張する独仏両国も、米国との対決姿勢を貫くことで、独自色を打ち出そうとしていることもまた事実で、両国が大統領選や総選挙を控え「点数稼ぎ」に腐心して「環境問題が政治に利用され」(産経)たとの見方もできる。
 日本の小泉外交に関しては、「拭えぬ米追随」(毎日)など手厳しいが、むしろ「欧州追随」とならなかったことを評価すべきかもしれない。機を同じくしてドイツのボンで開かれた気候変動枠組み条約第6回約締国会議(COP6)では、日本側の主張にEUが譲歩した形となったのである。
 歴史的に米国では、19世紀モンロー大統領の時代から「孤立主義」が伝統的なスタンスとしてある。その最悪の事態が国際連盟への不参加だった。このため国際機構としてまともに機能せず、第二次大戦が起こるべくして起こった。この悪夢をこそ、歴史の教訓にすべきだろう。米国を国益優先と非難するのは容易だが、温暖化防止問題をもっとグローバルな視点で捉えるなら、やはり中国・インドなど大国が土俵に上がらなければ意味がない。だからこそ、より粘り強い対話が必要となる。いずれにせよ、サミットは新しい局面を迎えたと言えよう。
◎写真=3日間に及ぶ会議を終えて記念撮影するG8首脳たち。左端から小泉首相、ブレア英首相、ブッシュ米大統領、シラク・フランス大統領、ベルルスコーニ・イタリア首相、プーチン・ロシア大統領、クレティエン・カナダ首相、シュレーダー・ドイツ首相、EU議長国ベルギーのフェルホフスタット首相、プローディ欧州委員長(7月22日イタリア・ジェノバ市、ドゥカーレ宮殿=ロイター)

【G7経済宣言】20日(骨子)

○世界経済は減速しているが、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は健全。構造改革、自由貿易の推進、国際協調の強化によって世界経済に貢献することを確認

○米国経済は急減速しているが、長期トレンドは良好

◎日本経済は一段と弱含み、物価下落が続いている。金融緩和の継続と不良債権への対処が必要。小泉内閣が示した構造改革の基本方針は中期的な経済成長に貢献

○11月のWTO閣僚会議での次期多角的貿易交渉(新ラウンド)開始をめざす

○中国のWTO加盟を歓迎し、ロシアの加盟に向けた進展に期待

【G8共同声明】22日(骨子)

○途上国、特にアフリカの状況は断固たる行動が必要。効果的な貧困削減の戦略は、強力で開放的な世界経済維持

○エイズ、マラリア、結核対策の新たな世界基金を設立。13億ドルの拠出に合意

○京都議定書の批准には意見の不一致があるが、共通の目標達成のため協力。COP6や関連会議にも同様の建設的姿勢で臨む

○食品の安全性を十分に認識し、透明で科学的アプローチを支持

○途上国が市場アクセスを得られるよう努力し、貿易による成長を支援

○ODAは依然として必要不可欠

○途上国の教育に関する8カ国の専門家作業部会を設置

○世界にとって重要な問題に関する我々の議論に対し、少数の暴力的な人々による妨害は受け容れられない。

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