【思想新聞2002年3月1日】TOP
国会演説 自由太平洋地域ビジョンを提唱

「悪の枢軸」発言(1月29日一般教書演説)にみられる強い「対テロ戦争勝利」の決意を背景に、ブッシュ大統領は去る2月17日から22日まで、日本、韓国、中国を訪問した。今回の歴訪は当初、昨年の秋に予定されていたものであったが、同時多発テロの発生のため延期となってしまい、このたびの日程となったものである。
主要目的はテロ組織の根絶、大量破壊・殺傷兵器と弾道ミサイルの拡散阻止である。とりわけ北朝鮮に対する対応が中心的テーマとなり、2月20日には、韓半島非武装地帯(DMZ)を視察。北朝鮮側を双眼鏡で観察した。付き添った米軍将校から過去に米兵が北朝鮮軍との衝突で死亡した事件(ポプラの木伐採をめぐる衝突=ポプラ事件)に関する事件の説明を受け、「彼ら(北朝鮮)が『悪』であることに疑いがない」と述べている。
米国大統領の訪日は、3年3カ月ぶり6人目である。小泉・ブッシュ会談は4回目。18日に行われた首脳会談では、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」と呼んだイラク、イラン、北朝鮮に対する姿勢を説明し、日本に対して「対テロ戦争勝利に向けての一層の協力」「小泉・構造改革路線貫徹」「MD(ミサイル防衛)計画の実務協議開始」などが要請されている。小泉首相はアメリカの姿勢に賛同し、改革支持に謝意を表明している。
訪日直前、同大統領はNHKとのインタビューで「これら(悪の枢軸としてのイラク、イラン、北朝鮮)の国々の行動を改めさせる為ならば、いかなる選択肢も排除しない」と述べながらも「しかし、関係諸国との絆を損なわない為にも関係諸国との協議は確実に行う」と語っていた。日本、韓国、中国訪問には明確な目的(北朝鮮の行動変更を求めるという目的)があることを示唆したものであった。
翌19日午前、ブッシュ大統領は参議院会議場で演説。韓半島問題に関連し「もはや、非武装地帯とミサイルの砲台が共通の遺産と未来を有する人々を離れ離れにさせない地域を追及する」「我々は韓国に対する侵略を阻止していく」と語った。
それはアジア太平洋地域の未来青写真を提示した中で語られたもので、「この地域での成功が、全世界での礎になる。21世紀は太平洋の時代になると確信する」と、【1】パワーをもって他国を脅かさない地域【2】大量破壊兵器が人類を脅かさない地域【3】自由貿易が保障されるオープンな経済・政治システムが整った地域【4】非武装地帯とミサイルの砲台が同民族を離れ離れにさせない地域――であると述べている。
ブッシュ大統領が、仁川空港(韓国)に降り立ったのは19日午後。翌20日午前、青瓦台大統領府で金大中大統領と首脳会談を行った。主要なテーマはやはり北朝鮮問題だ。昨年、米国防総省は「核兵器、生物化学兵器と関連した北朝鮮の形態と意図に対する評価」という報告書を議会に提出。「北朝鮮は最近の数年間、米国と同盟国の安全に複合的な挑戦を続けてきた。可能性が最も大きな局地戦発生のシナリオに韓半島が含まれている」と明記されている。
北朝鮮に対する米国の要求は一貫している。【1】通常兵力の削減【2】休戦ライン付近の兵力配置を後退させる【3】核査察実現(核開発プログラムの一部推進憂慮がある)【4】ミサイル輸出の停止である。しかし、ワシントンタイムズは2月17日、匿名希望のホワイトハウス高官の話として「米国の北朝鮮に対する要求事項の中には、政権交代は含まれていない」と報道している。
首脳会談を通じブッシュ大統領は「太陽(包容)政策の支持」、「北朝鮮の大量破壊兵器、ミサイル問題は『対話によって解決』」と語っている。しかし、「太陽政策を北朝鮮が受け入れていないことへの失望」を表明し、会談後の共同会見においても「金正日体制が国民の飢餓を容認していることに困惑している。閉鎖的な体制であることを憂慮している」と不信感をあらわにしたのである。
ブッシュ大統領が歴訪最後の国、中国の北京空港に到着したのは21日午前。人民大会堂での歓迎式典に続いて、江沢民・国家主席との首脳会談に入った。反テロ包囲網に強化に向けた協力や台湾問題、米国のミサイル防衛、朝鮮半島情勢などが話し合われた。
中国との不協和音
会談は概ね、狙い通りであったと言える。良好な米中関係はアジア太平洋の安定に不可欠であり、「対話と協力」の強化を確認した。しかし、対立も目立った。米国の「悪の枢軸」論には同調せず、反テロ軍事行動の拡大には批判的な立場をとった。江沢民主席は台湾問題で「一つの中国」政策の順守を要求したが、大統領は台湾への約束(米国には台湾防衛の義務をうたう「台湾関係法」がある)は守ると述べるにとどまっている。
さらにこの度の訪中にはもう一つの狙いがあった。信教の自由と民主主義制度の受け入れである。現在中国では「法輪功」だけでなく、いくつかの宗教団体が「邪教」指定され逮捕されるなどしている。22日午前に行われた清華大学でのブッシュ大統領講演内容で、信教の自由に関する部分、「迫害が終わり、自由に礼拝が行われることを祈る」は一切報道されなかった。そして、国政レベルでの民主的な選挙を「待ち望んでいる」といった言葉も伝えられなかった。
北の行動の変化はあるのか
北朝鮮は激しく反応している。22日の朝鮮中央通信によると、外務省スポークスマンは、ブッシュ大統領の「飢餓を容認している指導者への困惑」「閉鎖的体制」批判発言に対して、「我々の自主権を侵害し、内政に露骨に干渉」するものであり、「最高首脳部(金総書記)をみだりに中傷し、我々の制度を中傷することは絶対に許せない。米国が我々の制度を認めようとせず、侵攻の口実だけを探す為に提唱している対話は必要ない」と拒否した。さらに「米国が(対北朝鮮)敵視政策を追求し、半世紀以上我々を軍事的に脅かし、経済的に封鎖してきた結果として生じた」と述べ、飢餓や現体制の責任は米国にあるとしている。さらに翌23日には、「現地で戦争挑発準備を最終検証する為の戦争行脚」であると激しく非難。
しかし、一方では「南北最高級会談から各政党社会団体にいたる多方面での対話と交渉がすすんでこそ南北関係は不信と対決から和解と協力へ転換できる」(金日成放送大学、2月21日)と放送し、新たな行動の兆しも見えつつある。「乾燥した土地を太陽では耕せない」と米国政府高官は語ったが、米国の行動変更(土地の耕し)はできるのだろうか。一途も目を離せない韓半島である。


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