国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

北朝鮮住民亡命 中国は身柄を日本に引き渡せ

思想新聞2002年5月15日【主張】

 中国遼寧省瀋陽の日本総領事館に北朝鮮からの脱出住民五人が1月9日、亡命のために駆け込んだが、不法に館内に侵入した中国の武装警察によって拘束・連行される許されざる事件が起こった。これは日本の不可侵権が侵害、つまり主権が侵害されたばかりか亡命者の人権がいとも簡単に踏みにじられた看過できない事件である。日本政府は中国に対して不可侵権侵害を厳重抗議するとともに、5人の身柄引き渡しを断固として要求していかねばならない。
 今回の事件は韓国の通信社、聯合ニュースのカメラマンが総領事館の正門前の様子をつぶさに撮影しており、国民はテレビを通じてその衝撃のシーンを目の当たりにした。それによれば2人の男性と2人の女性、そして3歳の女児の5人は全員、間違いなく総領事館の敷地内に駆け込んでいる。
 このうち男性2人は館内の査証申請窓口の待合室にまで入った。残る3人は敷地内に入っているのに、中国の武装警察が不法にも敷地内に侵入して外に連行した。そればかりか武装警察官5、6人が正門から敷地内に入り込み、構内を通って館内の待合室にまで侵入し、2人を連行していった。
 明らかに中国の武装警察は公館の不可侵権を定めている「外交関係に関するウィーン条約」に違反し、日本側の不可侵権を侵害して勝手に総領事館内に入ってきたのである。これは明白な治外法権侵犯である。すなわち日本の主権が侵害されたのである。
 これに対して中国側は総領事館の安全保護のためで、条約違反ではないと武警の行動を正当化している。だが、これはまったく不当な主張である。領事関係に関するウィーン条約31条は第一項で領事館の不可侵権を規定、第2項では受け入れ国側の立ち入りには公館長の同意が必要としているが、火災発生など緊急時には同意なしでも立ち入れるとのただし書きがある。
 中国側は今回のケースはこれに当たると主張しているが、このただし書きは極めて例外的な事態に対処するためのもので拡大解釈は許されない。今回の亡命事件ではまったく該当しないことは言うまでもない。
 従って日本政府が5人の身柄引き渡しを要求することは当然の権利だ。中国は主権侵害を謝罪し、直ちに5人の身柄を日本側に引き渡すべきである。国際法では難民条約などで人道や人権上の立場から政治亡命者や難民の保護を謳っており、日本政府は領事館に駆け込んだ5人の現状回復を図るため引き渡しを求めるのは当然のことである。
 中国は北朝鮮からの越境者を国際法で保障されている「難民」と認めない非道な姿勢を取っているが、少なくとも5人は日本総領事館の敷地内に入った時点で日本の主権が及んでいる。不法に主権を侵害して連行したわけであり、中国は速やかに身柄を日本側に戻さねばならない。
 一方、今回の事件は日本の外交当局の弱腰、怠慢を見せつけたといえる。総領事館の館内には副領事以外に7人の日本人職員がいたが、産経新聞は「(中国の武装警察の)連行を防ぐため駆けつけるなど、積極的な動きをみせた形跡はない」と指摘、事件を撮影した聯合通信カメラマンは「日本人職員は(侵入、連行を)黙殺していいのか」と述べている(産経10日付)。
 何とも理解しがたい姿勢である。日本総領事館は事前に亡命情報を得ていなかったのか、亡命への対応策を練っていなかったのか、いずれにしても対応の甘さが際だっている。
 北京では3月、北朝鮮出身の25人がスペイン大使館に集団で韓国への亡命を求める事件が発生したが、このときもテレビと写真がつぶさに伝え、亡命支援者とメディア側との間で世界の世論に訴える周到な準備がなされていた。今回、日本総領事館は亡命情報をキャッチしていなかったとするなら、情報収集能力が著しく欠落しているというほかない。
 だが、事前に情報がなくても亡命は予想される事態だったはずである。3月のスペイン大使館に続いて4月にはドイツ大使館に1人、米国大使館に2人が駆け込む事件が起きている。5月5日には中国の公安当局が北京の各国大使館の警備を一斉に強化したばかりである。こうした事態は日本の大使館・領事館にも亡命があり得ることを示しており、これにどう対応するか事前にシュミレーションをしておかねばならない。にもかかわらず武装警察の侵入を簡単に許し、手をこまねいた。日本の恥を世界にさらしたのである。
 昨年来の一連の外務省不祥事では外務省職員の国家意識の希薄化が問題になったが、今回の事件も外務省腐敗と関係があると疑わざるを得ない。もし中国と北朝鮮に対して事を構えたくないという消極的姿勢で臨んでいたとするなら、国家と人権に対する看過できない背信行為である。このままでは日本は世界の孤児になってしまうだろう。看過できない事態だ。

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